収益還元法が主流ではない銀行とのコミュニケーション

新年明けましておめでとうございます。松村です。
約2ヶ月ぶりの当コラムですが、2007年度からは心機一転、毎月更新していきますので、何卒よろしくお願い致します。

お待たせしておりました第3回目は、「第2回 不動産業者とのネットワーク作り」に続く実践編、「銀行との付き合い方」です。

まず、前提としてお話したいのは、個人の不動産投資に対する融資体制が整っている現在に比べ、私が不動産投資を始めた2000年当時はまったく状況が異なっていたということです。

現在では、金融機関の融資担当者の考え方が劇的に変わってきました。
もちろん、日本の不良債権処理が進み、金融機関サイドの個人投資家への融資がしやすくなってきたという金融行政の側面もあります。

2000年当時、サラリーマンが自己資金もなしに、1億円の不動産物件を買おうなどというのは、”非常識”な話でした。
「松村さん、それは不可能なお話です」と、銀行窓口の段階で門前払いされる日々です。

欧米では”常識”となっていた不動産鑑定評価の手法である収益還元法(収益を基に価格を評価する方法)が、当時の日本の銀行では理解されなかったことが苦戦した理由です。

物件がお金を生み出すことに対して、日本の金融機関は正論としてくれず、あくまで不動産は土地の担保価値であるという考え方だったのです。

当時は、日本の不動産鑑定評価の主流は積算法と呼ばれるもので、土地の路線価から担保評価を行う考え方です。その物件がいくら生み出すかではないのです。
要するに銀行窓口担当者レベルでは収益還元法という意味がわからなかったのです。

それが当時の私の入り口でした。

その後、2002年に不動産鑑定評価基準が改正され、収益還元法の積極的活用が明示されました。
実際には、2004年頃から銀行側も収益物件にお金を出すようになったという実感があります。
日本版REITがだいぶ盛んになってきた頃からでしょうか。

REITが一般的になるにつれて、収益物件に対して銀行が融資するようになり、REITが成り立ってくる頃から不動産融資残高は増えていき、それから状況は変わってきたように思います。

銀行を口説く松村式プレゼン

日本のバブル崩壊というのは、不動産に価値があるからお金を貸すという経済活動で、とりわけ日本の銀行は大失敗をしたわけです。

私はイギリスで不動産投資に興味を持ち、学びました。

イギリスでは不動産の担保価値なんてどうでもいいわけです。
その物件をいくらで貸せて、将来、いくらの収入を得られるかがイギリスの常識でした。
しかし、イギリスで学んだ私の考え方は、当時の銀行窓口では門前払いされたわけです。

私は考えました。
銀行の決裁権限のある本部に直接行けばなんとかなるのではと。
どうやったら本部に近づけるかを考えました。

そして権限の強い支店に行けばいいと思い、大手銀行の銀座支店や丸の内支店を回りました。
しかし、サラリーマンが不動産投資物件を買うための融資は前例が少ないということで、全く相手にされませんでした。

次に私は、どうプレゼンするかを考えました。
銀行各支店の有力な担当を探し出し、銀行の審査部に何を提出するかを聞き出しました。
そしてわかったことは、当然ですが、稟議を提出します。
そして、その稟議に資料をつけるということでした。

私は、稟議の書面を自分で用意し、資料を準備しました。
稟議に必要な資料以上のものも用意しました。
稟議に必要な資料以上のものとは、購入希望物件の周辺を歩き、周辺家賃を調べ、学校やスーパーや不動産屋の情報までを網羅したマーケット調査です。

さらに建物についての考察も添付し、建物のライフサイクル指標もつけました。
これは専門の知識がないとわからないのですが、その不動産が今後いくらかかるかという指標で、
例えば、その建物を100年間維持するとした場合、どのような改修工事をするのかを検証し、コスト計算したものです。
そのコストから家賃の原価割れを防ぐ理論の資料を作りました。

そして、あらゆる場合を想定したシミュレーションです。
金利上昇時、空室率上昇時、家賃下落時など、いろいろなパターンでシミュレーションを作成し、物件単体のキャッシュフローや税引き後のキャッシュフロー予測及び、10年間の事業計画も作成しました。

こうして銀行を説得していったのです。
これが私の考えた収益還元法のベースとなりました。当時の邦銀では、このような銀行員の教育が必要だったのです(笑)。

それでも都銀では融資を受けられず、地銀を回りました。
地銀には、支店を統括している母店があり、その母店の支店長は審査部に対する力も強いことが試行錯誤の中でわかってきました。そしてやっと融資に漕ぎ着けたのです。

現在、楽待が取引させて頂いている銀行様は、以上のような私と銀行との関りの中で成り立っています。
私が不動産投資を始めた2000年当時に比べ、現在は収益物件への融資が格段に理解されています。

とはいえ、銀行の支店担当者によって、お金を出すか出さないかは大きく変わってくるということを、みなさんは理解しておいてください。

また、銀行全体の考え方も刻々と変化します。こちらも常にウォッチしておかないといけません。