銀行が不動産に融資しない!

スペシャルコラム最終回は、リハーサルスタジオ(以下、リハスタ)の近況をご報告する予定でした。
しかし、相次ぐ新興不動産会社の倒産、サブプライムショックに端を発した米リーマン・ブラザーズの倒産、米下院の公的資金注入法案の否決などがあり、急遽、激動の不動産市場について、触れることにしました。

まず、銀行融資の環境が8月になってガラっと変りました。
7月までは今までとかわりなく、年収1000万円ぐらいのサラリーマンの人でも、銀行融資を受けて投資用不動産を買うことができました。
しかし、8月に入り、年収3000万円台の方でも、銀行融資を受けて物件を購入することが難しくなったのです。
なぜかと言うと、銀行の審査部がガラっと様変わりし、自己資金を2割、3割を入れないとダメだというのです。言ってみれば私が不動産投資を始めた頃の融資環境に戻ってしまったのです……。

7月までは、自己資金を入れずオーバーローン、フルローンで松村式の攻め不動産投資が可能でした。しかし、現在のような審査基準になってしまうと、3億円の物件だったら自己資金2割で6000万円も入れなければなりません。それにくわえて諸経費が必要。なんだかんだで物件に対して3割の自己資金を用意しなければならないのです。

あるクライアントは、利回り12%の物件が買えませんでした。
少し前の状況であれば確実にオーバーローンでいけた物件ですが、今回は、複数の銀行に相談しても、すべてダメ。本当に極端な世界なのです。

理由は、はっきりとはわかりませんが、金融庁や銀行の上層部から不動産には融資をするなという御達しが出ている可能性が高いでしょう。今まで確実に融資していた案件に融資がおりないのですから。

逆に言えば、いい物件の情報はたくさん出回っています。
9月の新築で、ついに4掛けの物件が出てきました。
10億円の物件だったら4億円でいいんですよ。考えられますか?
 
しかも、バルクで10数棟とか。それでもエンドの個人投資家には手が出ないのです。

仮に8億円の物件が4掛けで2億8000万円となっても、年収3000万円の方が、自己資金を1億円程度用意しないと融資がおりない世界になってしまったのです。
これらの新築物件は不動産ファンド用に作られたものですが、市場の急変で買い手が付かなくなったことが割引の理由です。このような新築物件は、入居者も募らなければならず、さらに銀行融資を難しくしています。

だから、現金を持っている人は千載一遇のチャンス。
バルクで現金払いだったら、3掛けでも買えるでしょう。
すると、新築でネット利回り15%以上になってしまいます。

あまりにもお得なので、私が購入しようかと思ってしまいます(笑)。

世界と日本の不動産市場の差異

アメリカもまた、局面が劇的に変ってきています。
アメリカの銀行では、外国人向けの融資がほぼ皆無の状態となりました。
現在、外国人向け融資に理解のある某銀行と交渉してますが、私は自己資金を半分以上入れると言っているのにも関わらず、上手くいきません。

さらにアメリカ人であっても、サブプライム層より上位のクレジットヒストリーを持っているプライム層まで、融資を受けられなくなっています。
いつまでこの状況が続くかわかりませんが、「不動産には貸すな!」ということだけはっきりしているようです。

そこで私が立てた戦略は、某銀行の円建てローンでした。
金利2.5%、窓口は香港。条件としては円での収入があること。
アメリカの不動産を購入するために香港の銀行で円建てローンを組む。

一見不思議に感じるかもしれませんが、今は突破口をここに求めています。ただ、この仕組みも9月の中旬から条件が変わり、厳しくなりました。

この円建てローンの興味深いところは、日本の不動産には融資しない点です。
日本は建物の償却年数が決まっていて、減価償却が終わった建物は、評価額がゼロになってしまいます。日本の場合、資産価値はあくまでも土地なのです。

でも、欧米や香港では土地なんて関係ない。以前、当コラムでも書きましたが、アメリカの例だと、建物の償却期間は買った時点で27.5年にリセットされるのです。どんなに古い建物であったとしても、再度減価償却ができるのです。
売買を繰り返せば、半永久的に建物の価値はゼロにならない。

ある観点から見ると、このような日本の税制はどうしようもないと言えるでしょう。
スクラップ&ビルドを繰り替えす日本の不動産ビジネスの根本は、この税制にあります。
日本って悲しいですよね。建築士としての立場で言えば、日本の建築技術は世界と比べて、もの凄い高いのです。アメリカやヨーロッパなんか比べ物にならない程の高い技術と施工精度をもっている。
なのに、日本の建物は評価されないのです

現在の日本の不動産市場は、改正建築基準法があり、資源高があり、金融機関はお金を貸さない。
全部止まってしまいました。もう、がっかりですね。
極論として、私は日本の不動産を買ってはいけなかったんじゃないかとも思います。
最初からアメリカやヨーロッパの不動産を買っていればよかったんじゃないかと。

日本は、これから相続税も変わります。残念ながら増税の方向らしいです。
これらを総合すると、私は戦略の一つとして、日本の不動産を全部売却し、キャッシュにして、海外に全部出す。私も海外に出る。今、シンガポールにお金持ちが集まっているでしょ。極論としてはどんどんそうなっていってしまいます。
ある経済誌に「教育の二極化」の問題も深刻になっていると書いてありました。
これからの日本の富裕層は、どんどん海外に脱出する人が増えるでしょう。

私は世界の状況を知れば知るほど、戦略の変更を迫られています。
その一環として、今、事業化を考えています。

私は人を雇うポリシーがなく、リハスタも店長に業務委託をしています。
取締役を務めるファーストロジック社は社員を雇用していますが、私個人が代表者となる法人では人を雇用しないというポリシーがありました。
しかし最近では、世界戦略を含め、日本の不動産管理を誰かに任せるという戦略も考え始めています。リハスタの立ち上げがひと段落した今、日本の不動産ビジネスの事業化を検討しているところです。この件は、また機会が有りましたら、お話しようかと思います。

では、気を取り直して、リハスタの話に戻ります。