「土地から新築」を考えている投資家に、絶対に必要なことは何だろうか。

土地情報をいち早くつかむためのリサーチ力、正しい価値を見抜く相場観、予算に合ったハウスメーカー選び…。どれも必要だが、結局土地を「買い逃し」てしまえば何の意味もない。

良い土地の買付は、とにかく「スピード」が重要だ。しかし、まずはどんな建物が建てられそうか把握しないことには、即購入を判断するのは難しい。

そんな悩みを抱える投資家にとって、頼れる存在となる建築士がいる。90分という驚異のスピードで設計プランを作成する、「設計事務所バリカン」の代表・中川純一さんだ。

さまざまな制限の中で最大限の部屋数をとって収益性を高める「ボリューム出し」や、高精度の見積もりを得意とする中川さんに、設計の極意を聞いた。

500件の設計をこなして見えてきたこと

―これまで、どれくらいの案件を手がけてきたのでしょうか

法人のデベロッパーから個人投資家など、幅広い方の依頼に対応しています。これまで作成した設計プランは500件ほどですね。そのうち、実際に竣工に進んだ物件は50棟ほどになります。

大体は「なるべく多く部屋数をとってほしい」という依頼ですが、数をこなすうちにボリューム出しの作業もだんだん慣れていきました。土地の形状を見たら、パッと「これくらいの部屋が入りそうだな」というのが分かるようになってきたんです。

設計事務所バリカンで2020年に竣工した物件(HPより)

―そもそも、「ボリューム出し」とは何でしょうか

簡単に言うと、「その土地に何階建て・何部屋の建物が建てられるか」を計算することです。土地に物件を新築するときは、容積率や建ぺい率のほか、斜線制限や地域ごとの条例など、さまざまな条件・制限を考慮する必要があります。

収益性を高めるためには、これらを踏まえつつなるべく部屋数を多くとる必要がありますよね。決められた容積を効率よく限界まで使って設計をすることが、私の得意分野です。

土地の購入を考えている人からボリューム出しの依頼がきたら、どれくらいの大きさと数の部屋がとれるかという「ボリュームプラン」と概算見積もりを作って提出します。それをもとに依頼主が家賃を設定して利回りを計算し、土地購入の判断をするという流れです。

実際に中川さんが作成したボリュームプラン。土地にどれだけの平米数・戸数の建物を建てられそうか、平面図などが書かれている(提供:中川さん)

―個人住宅や収益物件など、どんな物件の設計も対応しているのでしょうか

いまは収益物件が中心ですね。初めは個人住宅も手がけていましたが、こちらは収益物件に比べるとすごく手間がかかってしまいます。

個人住宅は収益物件と違って、依頼主自身が住むために設計するので、効率の追求というよりは細部にこだわるような場合が多いです。収益物件はある程度規格化できますが、個人住宅は規格化が難しいんです。

手間は個人住宅の方が4倍くらいかかりますが、設計料を4倍もらえるわけではないので、次第に収益物件に軸を移していった感じです。

私自身、規格化や効率化が好きなんですよ。収益物件のボリューム出しは、いかに効率よく部屋を並べて人より多く面積をとれるか、というパズルみたいで楽しいです。

設計事務所バリカンで2015年に竣工した物件(HPより)

事前準備と計算式で効率アップ

―ボリュームプランはどのように作っていくのでしょうか

まずは依頼主からもらった測量図をもとに、土地がどういう形状なのか確認するところから始めます。

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