鹿児島市中心部で、新たな再開発計画が進んでいる。
市内随一の繁華街である天文館と鹿児島中央駅の間にある「加治屋町1番街区」と呼ばれるエリアで、地上26階建て、100メートル超の複合ビルの建設が計画されている。
かつて西郷隆盛や大久保利通らを輩出したとされる加治屋町は、どのように変わっていくのか。この記事では、鹿児島市内中心部の現状と、今後進められる「加治屋町1番街区市街地再開発計画」について解説する。
南九州の中核都市である鹿児島市
鹿児島県の中央部にある鹿児島市。鹿児島県と宮崎県を含む南九州の中心的存在であり、2024年4月現在で58万4085人の人口を擁する中核市である。
市内の高台に立つと、鹿児島湾越しに桜島の勇姿を眺めることができる。時おり噴煙を上げる桜島は鹿児島のシンボルとも言える存在であり、灰を降らせることがあっても多くの市民に愛されている。
鹿児島市は薩摩藩および島津家の拠点として、また鹿児島城の城下町として栄えてきた歴史を持つ。
街と島津家の関わりは古く、島津家6代目当主・島津氏久が東福寺城を居城としたのは1340年ごろとされている。江戸時代末期には島津斉彬により集成館事業が行われ、近代工業化が進められるなど先進的な街でもあった。
廃藩置県後には鹿児島県の県庁所在地となり、1889年の市制施行により鹿児島市となった。
鹿児島市の玄関口となるのはJR「鹿児島中央駅」で、九州新幹線の始発・終着駅でもある。九州新幹線は2004年の部分開業を経て2011年に全線で開業し、現在は福岡市の博多駅から鹿児島中央駅までが最短1時間16分で結ばれている。
新幹線の開通とともに駅周辺が整備され、駅ビルはJR九州の商業施設「アミュプラザ鹿児島」として地元住民や観光客でにぎわっている。
一方、鹿児島市随一の繁華街・歓楽街である天文館エリアは、鹿児島中央駅から少し離れている。
鹿児島中央駅から鹿児島駅前行きの路面電車で4駅進んだ「天文館通」電停、次の「いづろ通」電停周辺には古くからの繁華街・歓楽街が広がっており、複数のアーケード街のほか老舗デパート「山形屋」などがある。
段階的に開発されてきた市中心部
鹿児島市中心部では近年「歩いて楽しめるまちづくり関連事業」として、中心市街地のにぎわい創出や回遊性の向上を図る事業を行なっている。
27の事業のうち、近年大きな話題となったのが「千日町1・4番街区」で、天文館通電停に隣接する天文館G3アーケードの入口にあたるエリアの再開発だ。
大型商業施設のタカプラ(高島屋プラザ)跡地などを含む、対象地域の面積は9535平米。大規模な再開発により天文館が大きく変わるとして、広く注目を集めた。
2022年4月には地上15階・地下1階建ての再開発ビル「センテラス天文館」が開業した。商業施設のほか、観光案内所やクリニック、鹿児島市立図書館、ホール、ホテルなども入居する複合ビルであり、地元民から観光客まで多くの人が訪れる。
「加治屋町1番街区」ってどんなところ?
鹿児島市内で新たな再開発事業として注目を浴びているのが、鹿児島中央駅と天文館地区を結ぶ中間地点にあたる「加治屋町1番街区」である。
鹿児島市は、都市再生整備計画において「加治屋町1番街区市街地再開発事業」を基幹事業に位置付けている。
魅力ある新たなにぎわい拠点の整備を推進するという整備方針のもと、「鹿児島中央駅といづろ・天文館地区の中間で新たな拠点整備を推進することにより、歩行回遊性の向上を図る」計画だという。
加治屋町の歴史は古く、江戸時代には鹿児島城の城下町の一角をなし、下級武士が住む地区であったとされる。西郷隆盛や大久保利通、東郷平八郎や大山巌など、この地域の出身である薩摩藩の著名人は多い。
現在の加治屋町内には明治維新関連の展示が見られる「鹿児島市維新ふるさと館」があり、歴史好きの観光客にも人気だ。また桜の名所として知られる甲突川にほど近く、桜の季節には河川敷が多くの人でにぎわう。
現在は大規模な商業施設はなく、マンションや中小規模のビルのほか2021年10月に閉店した家電量販店「エディオン鹿児島店」跡地などがある。
2024年春にはJR九州をはじめとする地権者により加治屋町1番街区市街地再開発準備組合が設立され、再開発計画が進められてきた。
100メートル超の高層ビル建設へ
この再開発では、地上26階建ての複合ビルの建設が計画されている。1・2階は商業施設やオフィス、3階以上は総戸数420戸程度の分譲マンションとなる見込みだ。
ビルの高さは100メートルを超え、鹿児島県内最大級の建物になる。今後は都市計画審議会などを経た後、2027年度の着工、2030年度の竣工を目指すという。総事業費は200億~300億円の見込みだ。
加治屋町1番街区の再開発が行われれば、鹿児島中央駅から甲突川、加治屋町までの人の流れが大きく変わると予想される。
川沿いの立地を生かして観光客や市民の憩いの場となるほか、大型タワーマンションの分譲により、住みたい街として鹿児島市内外からも注目を集めそうだ。加治屋町1番街区の再開発事業に、今後も注目していきたい。
(羽田さえ/楽待新聞編集部)
羽田 さえ
札幌在住のフリーライター。不動産デベロッパーでの勤務経験があり、保有資格は宅建士・FP技能士2級。新築物件も古民家もヴィンテージマンションも大好きです。
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