「ほぼ東京」とも言われる埼玉県川口市で、地上28階建ての高層マンションが建設中だ。
新しいマンションが建つのは、川口駅の東口から徒歩8分ほどの区画。住所としては本町4丁目にあたり、都心や新宿副都心へのアクセス性に優れている。
川口駅周辺にはタワーマンションが建ち並び、有名なものには1998年竣工のエルザタワー55がある。東京都との県境にあることから、川口市では2000年以降も高層マンションの建設が進められてきた。
本記事では今回の再開発に加えて、周辺一帯の様子をレポートする。
都心へのアクセスが良く商業施設も多数
川口市は埼玉県の南端、荒川を挟んで東京都北区との県境に位置する。県内ではさいたま市に次いで多い約60万の人口を擁し、令和に入るまでは数十年にわたって人口増加を続けてきた。
2018年4月には、地方自治法で定められる中核市に指定。東京都心から近いこともあり、古くから首都圏のベッドタウンとして機能している。
市内には上野東京ラインと並走するJR京浜東北線が走り、JR武蔵野線(東川口駅)や埼玉高速鉄道線(川口元郷駅)の停車駅もある。中でも京浜東北線が停車する川口駅は、地元住民の生活を支える中心駅だ。
2023年度における川口駅の乗降客数は、1日あたりの平均で約7万4000人。この乗降客数は東京都の八王子駅に匹敵し、新小岩駅や水道橋駅よりも多い。
川口駅から東京駅までの所要時間は、京浜東北線で25分ほど。赤羽駅で乗り換えると、池袋や新宿にも約20~25分でアクセスできる。鉄道駅からよほど離れていない限りは、1時間もあれば東京都心にたどり着ける。
市内でも特に栄えているのは、川口駅の東口側だ。同エリアには図書館や行政センターが入居するビル「川口キュポ・ラ」のほか、「かわぐちキャスティ」や「イート川口店」といった商業施設がある。
これらのビルはペデストリアンデッキで接続されているため、東口周辺は回遊性が高い。地上部分はバス停が並ぶ駅前ロータリーになっており、市内の多方面にアクセスできるバスが発着している。
2021年には、駅前のシンボルだった地上11階建ての「そごう川口店」が閉店したものの、建物自体は現在でも残されている。
一方で、西口側には文化施設の「リリア」が建ち、その北側には約3.1ヘクタールの「川口西公園」が広がる。少し歩くと中層や高層のマンションが建ち並んでおり、東口側よりも閑静な住宅街が形成されている。
高さ90メートル超のマンション建設予定
今回の再開発エリアは、川口駅東口から南へ約400メートル、徒歩8分ほどの場所にある。区画面積は7165平米にも及び、「川口本町4丁目9番地区第一種市街地再開発事業」のプロジェクト名がつけられた。
対象区画の西隣には、地上32階建てのタワーマンション「リビオタワー川口ミドリノ」がある。かつては低層マンションや戸建住宅が並ぶエリアだったが、すでに解体工事が完了した。
本プロジェクトでは、高さ約94メートルのタワーマンションが建設される予定だ。地下1階・地上28階建てであり、1~2階の9区画には店舗が、3階の1区画には事務所が入る。
周辺は閑静な住宅街であるため、店舗フロアにはクリニックや美容院などの入居が考えられる。上記以外のフロアは大部分が住戸エリアとなり、総戸数は225戸が予定されている。
また、建物内には127台分のタワーパーキングと、445台分(バイク用を含む)の駐輪場も整備される。具体的な間取りは公表されていないが、夫婦やファミリー向けのマンションになることが予想される。
建物の敷地面積は2217平米であり、北側には住民用の広場、南側には東西に行き来する通路が設けられる。西側の市道(駅方面への一方通行)も拡張予定であるため、周辺の雰囲気が大きく変わるかもしれない。
今回の再開発事業は三井不動産レジデンシャルが主導し、2026年7月の竣工を目指している。
「億ション」の可能性は低い
川口駅周辺は都心へのアクセス性に優れる一方で、戸建住宅などの古い建物が目立っていた。その影響で、2000年以降は再開発の動きが顕著になり、20階以上の高層マンションが次々と建設されている。
2006年には、再開発地西隣のリビオタワー川口ミドリノに加えて、その北側に建つ「オーベルタワー川口コラージュ」が竣工。2023年3月にも、地上28階建て・481戸の「プラウドタワー川口クロス」が竣工している。
プラウドタワー川口クロスの新築販売価格は、坪単価で概ね300万~350万円台、3LDKは6500万~7500万円台だった。川口駅からの距離が同程度であることから、今回の新マンションも同等の価格帯になると思われる。
東京都内に比べると、川口駅周辺のタワーマンションは資産性が低い。新しいマンションも「億ション」になる可能性は低いが、住宅需要を考えるとコストパフォーマンスの良い地域と言えるだろう。
中心駅の川口駅では、上野東京ラインのホーム新設が計画されている。今回の再開発との間で相乗効果が生まれれば、新たなマンションの建設や需要を呼び込むかもしれない。
(山口伸/楽待新聞編集部)
山口 伸
経済・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。街歩きが趣味で駅周辺の商業施設や開発状況を調べている。
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