PHOTO: 彩恵/PIXTA

東京都にあるJR板橋駅西口からすぐの区画で、再開発計画が進行している。

板橋駅は繁華街・池袋の隣駅でありながら、周辺には戸建住宅が多い。大規模な商業施設が見当たらないこともあってか、周辺の再開発はあまり進められてこなかった。

今回の再開発では地下3階・地上34階建てのマンションが建設され、低層階は商業施設となる見込み。住戸エリアは計388戸の規模であり、2022年12月から本体建設工事が始まっている。

板橋駅周辺では、街の高層化を進める動きが見られる。今回はどのようなマンションが誕生するのか、周辺の再開発事情と併せて解説する。

目立った商業施設が少ない板橋駅周辺

JR埼京線が通る板橋駅は、池袋駅と十条駅の間に位置する。池袋駅までの所要時間は約3分ほど、新宿駅までは約10分、埼玉県の大宮駅までは25分ほどでアクセスできる。

東京駅まで向かう場合は、池袋駅でJR山手線か、東京メトロ丸ノ内線に乗り換えるルートと、新宿駅でJR中央線に乗り換えるルートがある。いずれも30分ほどの所要時間であるため、板橋駅は都心へのアクセスが良いと言えるだろう。

板橋駅東口(PHOTO: PhotoNetwork /PIXTA)

しかしながら、板橋駅周辺ではこれまで、大規模な再開発があまり進んでこなかった。

1997年には、西口側に計563戸のマンション「シスナブ池袋本町」が建てられた。2011年にも計785戸の「プラウドシティ池袋本町」が建てられるが、エリア全体としては細い雑居ビルやマンションが目立つ。

100メートル超の高層マンションと言えば、西口から北へ約270メートルの場所に建つ「板橋ビュータワー」(2001年竣工)のみである。ちなみに地上32階建ての同マンションは、都営地下鉄三田線が通る新板橋駅のほうが近い。

また、板橋駅周辺は目立った商業施設が少ないエリアでもある。商店街はいくつか見られるが、池袋にあるような大規模な商業施設は見当たらない。

2020年にはJR板橋東口ビルが開業したものの、入居しているのはフィットネスジムや飲食店などの数店舗。本格的なにぎわいは創出できていないのが現状だ。

そんな地域課題を解決するために、2018年からは「板橋駅板橋口地区第一種市街地再開発事業」が動き出した。本事業はすでに着工しており、2027年6月の竣工を目指している。

西口で駅直結型のタワマンが建設中

再開発の対象エリアは、板橋駅西口にある駅前ロータリーの南隣。板橋区が1992年に取得した区有地と、JR東日本が所有する用地にまたがる区画であり、約0.4ヘクタールの敷地面積を有している。

区有地にはもともと国際交流会館を建設する予定だったが、20年以上にわたって未活用の状態が続いていた。

引用:野村不動産株式会社 東日本旅客鉄道株式会社「板橋駅板橋口地区第一種市街地再開発事業

本区画に建てられるマンションは高さが約130メートル、地上34階・地下3階建ての規模。区の資料によると6~34階が住居フロアとなり、総戸数は388戸が予定されている。

地上3階までのフロアは商業施設、4階は公益エリア、5階は子育て支援施設として活用される見込みだ。

引用:野村不動産株式会社 東日本旅客鉄道株式会社「板橋駅板橋口地区第一種市街地再開発事業

商業施設の運営元に株式会社アトレ(JR東日本系列)の名が挙がっていることから推測すると、低層階は「アトレ(atré)」になる可能性が高い。

アトレは、レジャー性よりも地域住民の機能性を重視したショッピングセンター。現在は吉祥地や三鷹、秋葉原、巣鴨などにあり、成城石井のようなスーパーや惣菜店、雑貨店などが入居している。

また、4階の公益エリアにはシェアオフィスや区民ラウンジ、展示会などを想定した多機能ホールを入れる構想。駅前広場側をガラス張りにし、街に向けての情報発信も考えているという。

再開発事業の施行者がJR東日本及び野村不動産であることから、施設名は「プラウドタワー(野村不動産のマンションブランド)」になる可能性がある。

ちなみに、新マンションの低層階と駅のコンコースは直結させる構想だ。交通利便性が高く、さらに人を呼び込む商業施設も入るため、本プロジェクトは板橋駅前ににぎわいを創出するかもしれない。

昨年時点での見込総事業費は254億円、分譲価格については1億円を超える可能性がある。隣の十条で建設されている「THE TOWER JUJO(ザ・タワー十条)」の価格帯が、文字通り「億ション」になっているためだ。

最寄り駅までの立地条件が似ているため、板橋駅の新マンションも同等の価格帯になることが予想される。

高さ140メートル超のタワマンも計画中

板橋駅周辺では、駅前ロータリーの西隣でも「板橋駅西口地区第一種市街地再開発事業」が進められている。前述の区画から交差点を挟んだエリアに、高さ約142メートルのタワーマンションを建てる構想だ。

2024年度中の着工が予定されており、低層の雑居ビル群を地上38階・地下2階建てのマンションに建て替えるという。総戸数は391戸、店舗や公益施設の入居も計画されている。

本プロジェクトには三菱地所レジデンスや三井不動産レジデンシャルなどが参画し、地上6階建ての店舗兼事務所用ビルも併設する。竣工が予定される2028年度には、板橋駅周辺の雰囲気が大きく変わるだろう。

都内のマンション需要は依然として堅調であり、近年は十条や三河島のような下町でもタワーマンションの建設が相次ぐ。都心へのアクセスを考えると、中でも板橋駅周辺のポテンシャルは大きい。

2つの再開発事業を布石に、街の高層化が加速する可能性も考えられるだろう。

(山口伸/楽待新聞編集部)

山口 伸
経済・不動産分野のライター。企業分析や都市開発の記事を執筆する。取得した資格は簿記、ファイナンシャルプランナー。街歩きが趣味で駅周辺の商業施設や開発状況を調べている。