
亀有駅南口の商店街ゆうろーど(筆者撮影)
大人気マンガ『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(こち亀)の舞台としても知られる、東京都葛飾区の亀有。名前は知っていても、どんな街なのかはあまり知らない人も多いのではないだろうか。
23区内ということで都会のイメージを持つ人もいるかもしれないが、葛飾区は千葉県との県境に近く、住みやすいエリアとしても一定の評価を得ている。
今回は、実際に亀有を訪れて感じた、街の様子をレポートする。亀有の地域性を把握する1つの参考になれば幸いだ。
千葉県よりの立地でも都心アクセス良好
亀有駅はJR常磐線の停車駅だ。常磐線は、上野から我孫子(千葉県)を経由して取手(茨城県)または成田(千葉県)までをつないでいる。
綾瀬からは東京メトロ千代田線に接続しており、大手町・赤坂といったオフィス街までのアクセスも良好だ。亀有~大手町の所要時間は直通の電車で24分、亀有~赤坂は33分となっている。
2駅隣の北千住で乗り換えれば、東京メトロ日比谷線で銀座・日比谷・六本木方面にもアクセスできる。都内でも千葉県に近い場所でありながら、都心への交通利便性は高いと言えるだろう。

亀有駅北口(筆者撮影)
JR東日本の統計によると、2023年度における亀有駅の1日平均乗車人員は3万8920人で、JR東日本管内の駅としては103番目に位置している。ちなみに、101番目は鎌倉駅で3万9593人、102番目は田端駅で3万9231人だ。
人口も地価も右肩上がり
そんな亀有駅は、葛飾区亀有3丁目に位置している。「亀有」という住所は1丁目~5丁目まであり、それぞれ2000~4000人規模の人口を抱えている。
葛飾区の統計をもとに、直近10年間の亀有1丁目~5丁目の人口推移をまとめてみた。
2016年以後、2020年まで右肩上がりとなっていることがわかる。コロナ禍も影響してか、2022年まで横ばい~減少となったものの、直近では再び増加している。今後また上昇傾向となる可能性もあるだろう。

「葛飾区の世帯と人口」をもとに筆者作成
なお、1世帯当たりの人口を算出すると、2023年時点で1.85人だった。2014年時点の2.02人から年々減少している。全国平均が2.20人であることを考えると、亀有には単身者が比較的多いと見ることができる。
次に、直近10年間の駅周辺の地価推移も見てみよう。
亀有駅南口側の商店街が該当する「葛飾5-5」地区(駅から230メートル)の公示地価は、以下のグラフのように推移している。

不動産情報ライブラリ「国土交通省地価公示・都道府県地価調査の検索」より筆者作成
人口推移と似たようなグラフとなっており、コロナの前後で右肩上がりとなっているのが特徴的だ。人口の増加とともに地価も上昇していると考えて良いだろう。
なお、住宅地である「葛飾-21」地区の地価推移は以下の通り。駅から1100メートルと少し離れた地点だが、1つの参考として見てほしい。

不動産情報ライブラリ「国土交通省地価公示・都道府県地価調査の検索」より筆者作成
住宅地も商業地と同様、コロナ禍を除いて基本的に上昇傾向にある。
都心の不動産価格が高騰している現状を踏まえると、今後も亀有の地価の上昇傾向が続く可能性はあると見て良いのではないだろうか。
賑いのメインは大型商業施設に
実際に亀有駅を訪れると、平日の日中でも駅の利用者はかなり多かった。改札を出た時には、かなり開けた街だという印象を受けた。
40年間続いた長寿マンガ『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(こち亀)の舞台なだけあって、駅を出てすぐのところにあるキャラクターの銅像が目を引く。

駅前にある「両津勘吉」の銅像(筆者撮影)
ただ、訪問したのが平日の日中だったからか、観光客らしき人は見当たらなかった。
マンガの連載終了からすでに8年が経過しており、2024年現在、こち亀による集客効果や経済効果がどの程度あるのかは、何とも言えないところだろう。
一方で、駅の近くには生活利便施設が多く、住みやすい街と言えそうだ。駅の北口・南口の双方に商店街があるほか、南口には複合施設の「リリオ」が建っている。イトーヨーカドーやニトリなどが入っており、買い物には便利だ。

亀有駅南口のリリオ(筆者撮影)
さらに、駅南口から5分ほど歩いた先には、大型商業施設の「アリオ」があり、ユニクロ・ロフト・無印良品などが入っている。
日用品の調達には十分な大型商業施設が駅の近くに複数存在しているというのは、23区内の街としてかなり住みやすい方ではないだろうか。

アリオ亀有(筆者撮影)
少しばかりの寂しさ漂う商店街
駅前の商店街はというと、人通りは多いものの、シャッターが降りている店とそうでない店とが半々といった印象だ。下町らしさを感じる居酒屋も多く並んでおり、夜は日中より活気があるのかもしれない。
ただ、駅の近くに便利な大規模商業施設が2つもできたため、昔ながらの商店街がそのあおりを受けた側面もあったのではないか、と感じられた。

駅北口側の商店街(筆者撮影)
もう1点印象的なポイントは、駅徒歩10分以内のエリアに割と背の高いマンションが多く建っていること。北口側では特に多い印象を受けた。
駅の周辺は商業地域・近隣商業地域・第二種住居地域に指定されており、これらの域内に10階建て以上のマンションが集まっているようだ。
南口側では、商業施設のアリオを通り過ぎたあたりから低層の住宅が立ち並んでいる。駅の南北どちらも便利ではあるが、わかりやすい商業施設が固まっているのは南口側だ。
一方で、深夜まで営業している店舗が多いのは北口側だ。南口側のリリオとアリオの営業時間が21時までであるのに対し、北口側には「マルエツ」や「サミット」(どちらも深夜0時まで)といった営業時間の長いスーパーがある。
また、楽待の「賃貸経営マップ」で駅周辺エリアの利回りを見ると、亀有駅周辺エリアの平均利回りは7.4%だった。
興味深いのは、常磐線沿線エリアにおいて、亀有駅を境に利回りが7%に達していることだ。東京方面へ1つ進んだ綾瀬駅は6.4%、北千住駅は6.1%だが、千葉方面の金町駅は7.2%、松戸駅は7.7%となっている。
これは、東京メトロ千代田線に、綾瀬駅を終点とする電車が多いことが影響しているのではないか、と筆者は考える。

楽待「賃貸経営マップ」より
ただ、記事冒頭でも触れたように、千代田線と常磐線は直通運転を実施しており、亀有駅からでも乗り換え無しで大手町方面へアクセスできる。
千代田線沿線のオフィス街に勤める単身者などにとっては、亀有は魅力的に映る街なのではないだろうか。そのような入居者層をターゲットに物件を探すのであれば、亀有以東の金町や松戸なども良いかもしれない。
しかし、亀有駅周辺エリアは特に中川・荒川といった川に囲まれており、ハザードマップでは最低3メートル以上の洪水・浸水が予測されている。災害の可能性を気にするのであれば、松戸駅の東側エリアの方が洪水リスクは低減できる。
このように、亀有という1つの地域をとっても、現地を訪れることで多様な特徴が見えてきた。物件の購入検討にあたっては、そのエリアのことをさまざまな視点から評価してみると良いだろう。
(朝霧瑛太/楽待新聞編集部)
朝霧 瑛太
10年以上不動産業界で経験を積んだあと、フリーライターとして独立。特に不動産投資記事の執筆実績多数あり。一次情報に基づくニュース記事やデータ分析の記事などが好評を博している。
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