個人の「信用力」を数値化するサービスが始まり、SNSなどで話題になっている。
信用情報機関のCICが28日、信用力算出サービス「クレジット・ガイダンス」を開始した。このサービスは、クレジットカードや消費者ローンの利用履歴などを基に、個人の「信用スコア」を算出するサービスだ。500円の手数料を支払うことで利用できる。
個人が自分の信用状況を把握できるようにすることで、多重債務や自己破産を防ぐことが狙いというが、金融機関からの借り入れを活用することが多い不動産投資家にとっては、自分の結果が気になることだろう。
今回は3人の不動産投資家に協力を依頼し、サービスを利用した結果を報告してもらった。
※今回は取材のため、本人の承諾を得て一部の情報を提供していただきました。信用情報は個人情報のため、安易に第三者に提供することがないようにご注意ください。
「信用力」を200~800点で判定
クレジット・ガイダンスは、個人の信用力を200点から800点の3桁で算出するサービス。数値が高い程、信用力が高いことを表す。
算出の基になるのは、主にクレジットカードの取引状況で、支払い状況やキャッシング残高などが加味される。一方で、年齢・性別・勤務先・居住地などは、数値の算出に利用されない。年収や金融資産残高などについても、そもそもCICが保有していないため加味されない。
では、不動産投資などで金融機関からの借り入れがある場合は、点数に影響するのかだろうか?
CICによると、加盟している信販会社などからの借り入れについては反映されるが、加盟企業以外からの借り入れは反映されない。住宅ローンやカーローンなどについても同じことが言えるようだ。
信用情報を見ている企業とは?
信用情報機関は、クレジット会社などが保有するクレジットやローンに関する個人の信用情報を集約している。加盟する企業や個人からの照会に応じて、情報を提供する。
国内には3つの信用情報機関があり、CICのほかにJICC、KSCがある。
CICは、割賦販売法と貸金業法の指定を受けた国内唯一の信用情報機関で、信用情報機関として国内最大規模の信用情報を保有する。
加盟企業数は837社で、信販会社やクレジット会社のほかに、百貨店、リース会社、保険会社、保証会社、銀行、消費者金融、携帯電話会社など幅広い業種の企業が加盟している。
信用情報機関は、従来からこうした加盟企業や個人からの照会に応じて、クレジットカードの取引状況などの信用情報を提供していたが、信用力を数値化するサービスは今回が初めて。
加盟企業から年間約2億6638万件の照会があるという。また、自身の信用情報を確認したい個人からの開示請求は約37万件(2023年)にのぼる。
投資家が使ってみた結果
では、不動産投資家が実際にこのサービスを使ったら、どんな結果になるのだろうか?
今回、3人の投資家に匿名を条件に結果を見せてもらった。算出された点数に対する感想や、不動産投資への活用法についても聞いた。
■Bさん(50代男性)の場合
⇒スコア…601点
<算定理由>
極度額に対する残債額の割合や未入金がないことがプラスになった一方、クレジット契約数(無保証融資)の増加傾向がマイナスに影響した。
※Bさんの情報
・クレジットカード保有枚数:10枚
・住宅ローン:有
・カードローン:無
家賃収入2300万円で、不動産融資の残債が7000万円あるBさん。個人で3分の1ほど物件を持っているといい、「その収益ローンや運転資金の借り入れがあること、住宅ローンやクレジットカードの枚数も足をひっぱっていることがよくわかりました」と結果を受け止める。
「そういう意味では法人のほうが良いですね。住宅ローンは仕方ないので、使っていないクレジットカードを解約して点数を上げたいと思います」と話した。
■Cさん(30代男性)の場合
⇒スコア…611点
<算定理由>
支払いの遅れがないことや未入金がないことがプラスになった一方、残債額が増加傾向にあることがマイナスに影響した。
※Cさんの情報
・クレジットカード保有枚数:2枚
・住宅ローン:有(6700万円)
・カードローン:無
家賃収入1500万円、不動産融資の残債が5900万円のCさん。「私レベルで600点台でしたので、不動産投資家の中にはもっとハイスコアの方も多いのでは」と感想を語った。
また、不動産投資への活用については「融資審査が通らなかった時に、自分の現状を客観的に把握する手段としては役立ちそうです」と話した。
■Aさん(60代男性)の場合
⇒スコア…613点
<算定理由>
極度額に対する残債額の割合や未入金がないことがプラスになった一方、残債額の合計が増加傾向にあることがマイナスに働いた。
※Aさんの情報
・クレジットカード保有枚数:8枚
・住宅ローン:有
・カードローン:無
不動産融資の残債が約4億円あるというAさんは「残債が増えると評点が下がるというのは、やや納得感がいかない」と算定方法に疑問を抱く。固都税その他の税金をカードで支払った場合には、一気に残債が膨れ上がってしまうためだ。
Aさんは「カード決済金額が増加しているので、浪費を疑うという観点はあると思いますが、もう少し毎月きちんと返済しているといった点も含めた指数判断をしてほしい」と話した。
普通の会社員がやってみたら…
では、不動産投資家ではない普通の会社員がやってみたら、どうだろうか? 今回、当社の社員もサービスを利用してみた。参考までに、3人の結果を紹介する。
○30代男性
スコア:608点
・クレジットカード保有枚数:4枚
・住宅ローン:有
○40代男性
スコア:570点
・クレジットカード保有枚数:6枚
・住宅ローン:有
○20代女性
スコア:595点
【参考情報】
・クレジットカード保有枚数:1枚
・住宅ローン:無
ここまで紹介してきたように、今回挑戦した不動産投資家と当社社員の計6人の結果は、最高が613点、最低が570点だった。
点数は200~800点の範囲で算出されるが、全体の分布はどのようになっているのだろうか。
CICが公表しているデータによると、620点以上が過半数を占めている。
◇
信用情報機関が保有する信用情報の利用は、日本では与信や融資の審査に限定されているため、それ以外の用途に利用することはできない仕組みになっている。
一方、海外ではカード発行時の審査だけでなく、賃貸契約などに際して信用力の指標として利用されている国もあるようだ。過去の行動履歴を基に個人が格付けされる―。そんな未来を予感させる信用スコアが今後どのように活用されていくのか、注目したい。
(楽待新聞編集部)
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