リスク満載の激安不動産オークション、競売。競売で物件を買いたいのなら、ただのお客さん気分ではいけません。オークションというからには、自ら「入札」に参加しなければならないのです。
不動産の入札とは、一体どのように行われるのでしょうか。安く買えれば嬉しいけれど、安すぎる金額を提示すれば他の人に買われてしまいます。価格はどのように決めればよいのでしょう。
漫画家・根本尚さんによる競売ルポ漫画、『競売物語』。今回は、ついに入札の模様をお届けします!
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【登場人物】


本作のあいづち役。北海道弁がチャームポイント
※弁護士注:入札できる最低価格について、漫画本編ではわかりやすく「最低入札額」と表現していますが、現行法上は「買受可能額」が正確な表現となります
阿部弁護士のひとこと解説
丸の内ソレイユ法律事務所の弁護士、阿部栄一郎です。これまでに不動産トラブルを数多く担当してきました。『競売物語』に関連して、競売にまつわる豆知識や、私の元に寄せられたトラブル事例などをご紹介します。
解説:ややこしい3つの「金額」を覚えよう
今回の漫画本編では、入札(競売対象不動産の買受を申し出ることです)までのことが描かれています。
不動産競売においては、「売却基準価額」「買受可能価額」「買受申出保証額」といった、価格に関する専門的な用語が出てきます。それぞれ字面が似ていて分かりづらいため、ここでは、それの意味を解説いたします。
・売却基準価額
不動産鑑定士が評価した、不動産の実際の価値のことです。評価の過程は評価書に記載されています。競売手続きの中での評価ですので、一般的な評価よりも低額になる傾向にあります。
・買受可能価額
入札できる最低の価格のことです。法律上、売却基準価額からその2割を控除した金額(つまり8割)とされています。
漫画本編では「最低入札額」と表現されていましたね。意味合いとしてはその通りなのですが、厳密にはそのような用語はありません。
なお、2005年3月までは、入札できる最低価格は「最低売却価額(評価書記載の評価額を基に裁判所が定めた買受可能な最低価格のこと)」とされていましたが、2005年4月から売却基準価額が定められ、その8割が買受可能価額と定められるようになりました。
・買受申出保証額
入札する際に、裁判所に振り込みをしなければならない保証金のことです。
買受申出保証金は売却基準価額の2割以上とされており(2割とされることが多いです)、不動産を買い受けることができれば代金の一部に充てられます。買受人になれなければ、裁判所から返還してもらうことができます。
今回の漫画では、売却基準価額は明らかになっていませんが、入札時には買受申出保証額を支払ったことを証明する振込証明書を添付することが義務付けられています。
(漫画:根本尚、監修/解説:弁護士 阿部栄一郎)
根本 尚/漫画家(X)
『プリンセス』(秋田書店)で連載中。 『怪奇探偵・写楽炎』(文藝春秋) 『現代怪奇絵巻』(秋田書店・週刊少年チャンピオン)、 『恐怖博士の研究室』(同・ミステリーボニータ)他。 同人サークル名、札幌の六畳一間。 北海道ミステリークロスマッチ会員。北海道の自宅を競売で取得した。
阿部 栄一郎/弁護士
2007年東京弁護士会登録。不動産オーナーや大家さんのサポートを中心に、不動産に関する問題の解決実績多数。賃貸借契約にまつわる建物明け渡しや賃料の回収、原状回復から不動産の売買契約等まで幅広い案件を担当しているほか、不動産関連のイベントや相談会などにも積極的に参加。不動産専門紙への寄稿も行っている。
『競売物語』作者の漫画家。北海道の自宅を競売で買った