漫画家・根本尚さんによる競売ルポ漫画、『競売物語』。格安で自宅を買うため、素人ながら競売に挑戦したときの実体験を漫画でお伝えしています。以前の回では、お目当ての戸建てを345万円で落札しました!
やっと自宅を手に入れたものの、すぐに住めるわけではありませんでした。実は家の中に、競売が始まる前からこの家に住んでいる人がいたのです。出て行ってもらえるように自分で交渉しなければ、自宅としては使えません。
競売で買った家を実際に使うには、どんな手続きが必要でしょうか? 今回は、物件を落札した「後」の話を覗いてみましょう。
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【登場人物】


本作のあいづち役。北海道弁がチャームポイント
阿部弁護士のひとこと解説
丸の内ソレイユ法律事務所の弁護士、阿部栄一郎です。これまでに不動産トラブルを数多く担当してきました。『競売物語』に関連して、競売にまつわる豆知識や、私の元に寄せられたトラブル事例などをご紹介します。
解説:競売物件を燃やされたらどうなる?
漫画本編でも描かれていますが、競売物件が完全に壊れてしまったり、なくなってしまった場合(これを「滅失」といいます)、競売手続はどのようになるのでしょうか。
民事執行法53条によると、「不動産が滅失した場合、裁判所は競売手続を取り消さなければならない」ということになっています。
ですので、地震や火事などで競売不動産が滅失してしまった場合、裁判所は競売手続を取り消すことになります。
競売手続が取り消されると、売却許可決定が確定していても、買受人は代金を納付しなくてすみます。つまり、この場合、不動産が滅失した損害は債務者(住宅ローンを滞納した人など)が負うことになります。
しかしながら、民事執行法53条は、あくまで競売手続を「取り消す」ことを定めています。では、競売手続が「終わった後」に不動産が滅失してしまったら…?
一般的に、民事執行法53条が適用されるのは「買受人が代金を納付して、競売物件の所有権が買受人に移転するまで」と理解されています。
そのためこの場合は、競売手続の取り消しはできません。
ただし、前所有者(債務者)から競売物件の引き渡しを受ける前であれば、「契約不適合責任」に基づいて契約の解除をしたうえで、代金の返還を受けることができます。
契約不適合責任については、前回の解説2でお話ししましたね。前所有者(債務者)に資力がない場合には、配当を受けた債権者(銀行等)から代金の返還を受けることができます。
◇
ちなみに、漫画にあるように建物等に放火した場合、現住建造物等放火罪(死刑または無期懲役もしくは5年以上の有期懲役が科されます)を始めとした犯罪に問われ、処罰を受けることになります。決してしないようにしてください。
(漫画:根本尚、監修/解説:弁護士 阿部栄一郎)
根本 尚/漫画家(X)
『プリンセス』(秋田書店)で連載中。 『怪奇探偵・写楽炎』(文藝春秋) 『現代怪奇絵巻』(秋田書店・週刊少年チャンピオン)、 『恐怖博士の研究室』(同・ミステリーボニータ)他。 同人サークル名、札幌の六畳一間。 北海道ミステリークロスマッチ会員。北海道の自宅を競売で取得した。
阿部 栄一郎/弁護士
2007年東京弁護士会登録。不動産オーナーや大家さんのサポートを中心に、不動産に関する問題の解決実績多数。賃貸借契約にまつわる建物明け渡しや賃料の回収、原状回復から不動産の売買契約等まで幅広い案件を担当しているほか、不動産関連のイベントや相談会などにも積極的に参加。不動産専門紙への寄稿も行っている。
『競売物語』作者の漫画家。北海道の自宅を競売で買った