PHOTO:長兵衛 / PIXTA

阪急電鉄箕面(みのお)線の終着駅であり、大阪府箕面市の主要観光地への玄関口でもある阪急「箕面駅」。近年、利用客数の減少と周辺施設の老朽化が進む中で、駅前シンボルの建て替えプロジェクトが始動した。

本プロジェクトが予定通りに進めば、分譲マンション・公共施設・商業施設が融合する新しい駅前シンボルが生まれ、地域活性化の起爆剤となることが期待される。

今回は、箕面駅を含む周辺エリアが抱える課題と、再開発計画の詳細について解説する。

年々利用者が減少する箕面駅

1910年の開業以来、箕面駅は「箕面大滝」や「箕面温泉スパーガーデン」など市内の観光スポットと大阪都心をつなぐ拠点として、観光客や地元住民に親しまれてきた。

しかし、時代の流れとともに駅周辺の環境は変化し、かつてのにぎわいを失いつつある。

駅の乗降客数の推移を見ても、その変化は明らかだ。箕面市の資料によると、箕面駅の乗降客数は年々減少傾向にある。

1990年の1日あたりの平均乗降客数は2万4739人だったが、2015年には1万6482人、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受けた2020年には1万621人となっている。

特筆すべきは、箕面市全体の人口は微増・横ばいであるにもかかわらず、駅の利用客数が減少している点だろう。

こうした背景には、箕面市の住宅開発が箕面駅の所在する西部から中部・東部にシフトしたこと、そして沿線環境が変化したことが影響しているのではないかと考えられている。

例えば、阪急箕面線はかつて大阪梅田駅への直通列車を運行していたが、2022年のダイヤ改正によって廃止に。都心へ出るには乗り換えが必要となり、利便性が損なわれてしまった。

箕面駅前の建物(筆者撮影)

実際に訪れてみても、駅周辺の建物や景観からは、どこか寂れた印象を感じてしまった。

新駅開業がさらなる向かい風に

さらに、2024年3月に「箕面萱野駅」が開業したことで、箕面駅の利用者減少はより一層進むと見られている。

箕面萱野駅は、大阪の主要路線の1つである「御堂筋線」と相互直通運転を行う「北大阪急行線」の新駅で、梅田・なんば・天王寺などの駅に乗り換えなしでアクセスが可能だ。

記事執筆時点(2024年11月)では、最新の乗降客数はまだ発表されていないが、開業時の情報では1日の乗降客数は2万8000人を見込んでいた。

箕面駅・箕面萱野駅ともに、梅田までの所要時間はおよそ25分。箕面萱野駅からだと運賃が480円かかるのに対し、箕面駅からは280円と、コスト面では箕面駅に軍配があがる。

とはいえ、今回の北大阪急行の延伸は、箕面駅の利用者数に少なからず影響があるだろう。

箕面萱野駅が位置する市の中部エリアでは、近年再開発が多数行われている。「みのおキューズモール STATION棟」や「箕面萱野バスターミナル」はその象徴とも言える。

市の中心が徐々に萱野方面(市の中部)へとシフトする状況の中、箕面駅(市の西部)がどのように存在感を示せるかが課題となっている。

駅前シンボルをリニューアル

そこで、箕面市は箕面駅前のシンボルである「みのおサンプラザ1号館」を建て替え、地域の核となる新しいにぎわい施設の創出を目指す。

再生事業には東京建物と阪急阪神不動産が参画し、2023年2月より本格的に進められている。

みのおサンプラザは、1979年の箕面駅前再開発事業で建設された再開発建物だ。敷地面積約2900平米、地上8階建てで、箕面文化・交流センターや物販店舗などが入り、駅前のシンボルとして長年親しまれてきた。

しかし、建物や設備の老朽化が進んでおり、2015年に行われた耐震診断では耐震性が不足していることが判明した。

その後、上記2社や箕面市が再生方針について検討を重ね、「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」に定める「マンション敷地売却制度」を活用する方針となった。この制度の活用は、関西圏では初めてだ。

マンション敷地売却制度は、耐震性不足の認定等を受けたマンションにおいて、区分所有者等の5分の4以上の賛成でマンションやその敷地の売却を可能とするものである。

プレスリリースによれば、本制度活用により、区分所有者に広範な選択肢を提供し、事業期間の短縮や組合運営の負担軽減を図るという。

「新サンプラザ」となる新築建物は、共同住宅・公共施設・店舗などが入る地上11階建てとなる計画だ。

1〜3階は箕面市が率先して取得し、既存公共施設の再配置や、交流施設・地域活性化施設・民間商業施設を整備する予定。

地元住民だけでなく観光客も気軽に立ち寄れる滞在型施設のほか、箕面の雰囲気に合う飲食店や特産品アンテナショップが新設される見込みだ。

4〜11階の住宅部分(109戸予定)は、東京建物と阪急阪神不動産が分譲するという。

2024年夏ごろからは旧サンプラザの解体工事が始まっており、本記事執筆時点(2024年11月)で建物は幕で覆われていた。2025年秋ごろに新築建物の着工、2027年春ごろの竣工を予定している。

解体工事中の旧みのおサンプラザ(筆者撮影)

今回の箕面駅前の再生プロジェクトは、単に建物の建て替えにとどまらず、地域活性化の起爆剤となることが期待されている。

駅周辺がかつてのにぎわいを取り戻すだけでなく、箕面市全体の魅力を高めることにもつながるだろう。

分譲マンション・公共施設・商業施設が融合する新しい駅前シンボルが生まれることで、箕面駅の利用者数はどう変動するのか、駅周辺の地域はどれほど活性化するのか、今後の展開に注目したい。

(山之内渉/楽待新聞編集部)

山之内 渉
国内最大手のアウトドアメディアで編集者を経験。その後、不動産投資会社に勤務し、現在はフリーライターとして多岐にわたる分野で記事を執筆しています。