
PHOTO: TATSU /PIXTA
2024年の建設業倒産は1890件にのぼり、過去10年で最多を更新した。多くの不動産投資家がリフォームなどで関わる機会がある内装工事業なども例外ではない。
建築資材価格の高止まりに加え、建設現場での職人不足や人材の維持・確保に伴う人件費の高騰が引き続き、建設業をはじめ幅広い業種に影響しそうだ。
2025年は日銀の追加利上げにより、過剰債務を抱える中小企業への影響が懸念される。
建設業はまんべんなく苦境に
もっとも倒産は建設業に限らず、全業種で増加傾向が続いている。帝国データバンクの調査で、2024年の企業倒産(全国・全業種)は9901件発生し、前年(8497件)を16.5%上回った。
倒産件数は3年連続の増加だ。懸念された年間1万件には達しなかったものの、2013年(1万332件)に次ぐ11年ぶりの高水準となった。
月別推移を見ても、2024年12月は848件(前年同月比5.2%増)となり、2022年5月から32カ月連続で前年同月を上回った。この結果、過去最長の連続増加記録を31年ぶりに更新した。
物価高、人手不足、後継者難などが重なり、負債5000万円未満の小規模事業者を中心に緩やかな増加が続いた。

帝国データバンク調べ
このうち、建設業倒産1890件の内訳をみると、業態別では、大工工事や内装工事などの「職別工事」(879件)、土木工事など「総合工事」(600件)、電気工事など「設備工事」(411件)のすべてで前年を上回った。
倒産理由をみると、全体の1割強にあたる250件(構成比13.2%)が「物価高倒産」。建材価格や燃料価格の高止まりが大きく影響した。
建設業の価格転嫁率は43.7%と全業種平均(44.9%)を下回っており、価格高騰分を転嫁できず事業継続が困難になるなど、業界環境は厳しい状況が続いた。
従業員が転退職するなどして、事業運営が困難になった末に破綻した「人手不足倒産」も99件判明した。職人不足による受注の頭打ちや、外注費の上昇による影響も複数見られた。
このほか、各種コロナ関連融資を利用後も業績が改善しないまま行き詰まる「ゼロゼロ融資後倒産」も143件判明した。
2025年のキーワードは「新陳代謝」と「優勝劣敗」
2025年の企業倒産は、建設業をはじめ各業界で「緩やかな増加局面」が続く見通しである。
企業にとってのコスト増につながる厳しい外部環境がすぐに好転する兆しに乏しく、追加利上げやさらなる賃上げの動きに対応しきれないまま、中小零細企業の「あきらめ倒産」「あきらめ廃業」が一段と広がりそうだ。
とくに、いわゆる「2025年問題」(=団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となることで起こる諸問題)は倒産動向にも影を落とし、事業承継や人手不足への影響が色濃く出てくることが予想される。
2024年は「物価高倒産」が全体の倒産件数を押し上げたが、2025年はこれに加えて「人手不足倒産」や「後継者難倒産」がさらに増加。経営体力が限界に達した末の「賃上げ難型」倒産の多発も小規模事業者を中心に懸念される。

PHOTO: NOBU /PIXTA
2025年は「新陳代謝」と「優勝劣敗」が加速する1年になることが予想される。
同じ業界内でも、外部環境の急速な変化に対応できる企業と、変化に取り残される企業の明暗がはっきりと分かれる年になるだろう。
なかでも、利益で借入金の利息が賄えず、政府や金融機関等の支援で長年にわたって延命を続けてきた、いわゆる「ゾンビ企業」の新陳代謝もさらに進みそうだ。
2025年1月の最新調査では、2023年度のゾンビ企業率は15.5%、ゾンビ企業数は約22万8000社と推計(帝国データバンク調べ)された。

帝国データバンク調べ
ゾンビ企業の数は、2020年度のコロナ禍以降で初の低下となり、直近1年で3万4000社減少した。コロナ禍前半の2020年度から2022年度にかけて急速に進んだ企業の「ゾンビ化」の動きにひとまずブレーキがかかる形となった。
国際決済銀行(BIS)はゾンビ企業を「3年連続でICRが1未満、かつ設立10年以上」と定義している。
ICRは、企業の利払い能⼒の指標である「インタレスト・カバレッジ・レシオ」を指し、(営業利益+受取利息・配当金等)÷(支払利息・社債利息等)で算出する。
ゾンビ企業が減少した背景としては、2023年5月の新型コロナ「5類移行」に伴う社会経済活動の正常化や、価格転嫁が少しずつ進んだことが挙げられる。
また、ゼロゼロ融資の元本返済開始による過剰債務状況の緩和もあり、状況が変化したことなどが考えられる。
企業倒産(2024年=9901件)や休廃業・解散(2024年=6万9109件)のほか、各種の私的整理スキームなどを通じて、既存ゾンビ企業の新陳代謝が一部で進んだことも影響したものと見られる。
利上げで進む、ゾンビ企業の淘汰
こうしたなかで日本銀行は1月23~24日に開いた金融政策決定会合で、2度目の追加利上げを決定した。今後は、金利引き上げによる家計および企業部門への影響拡大に注視が必要だ。
これから企業は順次、借り換えのタイミング等で支払い利息がさらに上乗せされることになる。ゼロゼロ融資で膨らんだ過剰債務を抱える中小零細企業には死活問題となりかねない。
2025年は企業倒産や休廃業・解散件数の増加という形で、市場からのゾンビ企業の淘汰がさらに進む可能性は十分ある。
他方で、ゾンビ企業の定義に一度でも当てはまった企業がすべて、倒産や廃業に追い込まれるわけではない。収益力を回復させ、財務内容を改善し、ゾンビ状態を脱した企業が一定数あるのも事実だ。
とはいえ、企業単独でのゾンビ脱却は容易ではなく、取引金融機関をはじめとする専門機関の積極的な伴走支援が今こそ求められる。
プロフィール画像を登録