
北綾瀬駅の駅舎と建設中のエスカレーター(筆者撮影、一部加工をしています)
東京都足立区東部に位置する「北綾瀬」エリア。東京メトロ千代田の始発・終着駅ではあるものの、1駅手前の「綾瀬」止まりの電車も多いため、少し不便な印象も抱かれがちだ。
そんな北綾瀬に大きな変化をもたらすであろう存在が、2025年6月に開業予定の「ららテラス北綾瀬」である。エリア初のフードコートのほか、人気店舗が多数入居する予定であり、集客力の高い施設となりそうだと期待されている。
これまであまり耳目を集めていなかった北綾瀬駅周辺だが、そもそもどんなところで、今後はどう変わっていきそうなのか。新商業施設の概要とともにお伝えする。
「ららテラス北綾瀬」完成間近
「三井ショッピングパーク ららテラス北綾瀬」は、東京メトロ千代田線「北綾瀬駅」直結のライフスタイル型商業施設だ。橋上にある北綾瀬駅とペデストリアンデッキで直接接続される予定となっている。
筆者が訪れた2025年1月時点で、ペデストリアンデッキと商業施設の建物はほとんど完成しているようだった。足場はまだ外れていないものの、外壁に「GU」や「無印良品」などのサインがあるのが見えた。

「ららテラス北綾瀬」建設現場(筆者撮影)
ららテラス北綾瀬は地上4階・地下1階建てで、敷地面積が約8700平米、延床面積が約3万1700平米となっている。
施設内には「エリア初」となるフードコートを備え、スーパーや生活雑貨店など約50の店舗が入る予定だ。すでに42のテナントが発表されており、サミットストアや無印良品のほか、マクドナルド、スターバックス、ミスタードーナツといった人気チェーン店も多く入居する予定だ。
北綾瀬駅周辺には目立つファーストフード店があまりないので、フードコートなどには多くの人が集まるのではないだろうか。
英語教室、ダンス教室、インドアゴルフスタジオも入るということで、幅広い世代が集まる施設になりそうだ。三井不動産によると、ららテラス北綾瀬の開業時期は2025年6月の見込みだ。
また、建物の前には交通広場が設けられ、バス乗り場やタクシー乗り場などが整備される。もともと駅前にはバス乗り場などがなかったため、完成後は利便性が大きく向上するのではないだろうか。
現在はやや寂しい印象も否めない北綾瀬駅周辺だが、ららテラス北綾瀬の開業によって街の集客力が向上し、人の流れも変わるかもしれない。
綾瀬に比べて少し寂しい北綾瀬
隣駅の綾瀬駅エリアに比べると、北綾瀬駅エリアはやや人が少なく、利便性が高いとは言えない現状だ。この差はやはり、駅や路線の利用者数から生じてしまったものと言っていいだろう。
1979年、北綾瀬駅は東京メトロ千代田線「北綾瀬支線」の駅として開業した。支線駅ということもあって、当時は隣駅の綾瀬駅と北綾瀬駅の間を3両編成の電車が運行していた。
2019年には、10両編成の電車にも対応できるようホームが延長され、代々木上原方面への始発電車も運行が始まった。これにより駅の利用者も増加し、2023年度の1日平均乗降客数は4万648人となっている。
ちなみに、2018年以降の乗降客数の推移を見ると、近年はコロナ禍前の水準を上回る利用者数となっていることがわかる。

東京メトロ「各駅の乗降人員ランキング」より筆者作成
通勤時間帯には代々木上原方面への電車も多くなり、北綾瀬駅の交通利便性は向上した。平日7時台は8本の電車が運行され、そのうち綾瀬駅が終点なのは3本だ。
これに対し、綾瀬駅発の代々木上原方面の電車は、同じ平日午前7時台で24本となっている。1日平均乗降客数は37万2622人で、北綾瀬駅の9倍だ。利便性という点では、綾瀬駅と北綾瀬駅の差はいまだに大きいといえる。
このような違いもあってか、綾瀬駅周辺と比較すると、北綾瀬駅周辺ではあまり都市開発が進んでこなかった。
綾瀬駅前では現在、沿線最大とされる地上32回建て・総戸数420戸超の大規模タワーマンションが建設されている。2025年11月に完成、2026年4月下旬に入居開始となる予定だ。
綾瀬駅周辺に比べて高層建築物も少ない北綾瀬駅周辺だが、今後ららテラス北綾瀬ができることで様相がどう変わるのか、注目したい。

綾瀬駅前の「シティタワー綾瀬」(2024年11月、編集部撮影)
ちなみに、綾瀬駅と北綾瀬駅の駅前商業地について地価推移を比較すると、価格こそ違うが推移の仕方はほとんど同じだった。コロナ禍によって足踏みしていた上昇基調を、近年は取り戻している。

不動産情報ライブラリ(地価公示)を参考に筆者作成
現地を歩いて感じた、北綾瀬の印象
北綾瀬駅の高架下には、東京の大動脈とも言える環七通りが通っている。首都高への入口も駅からほど近い。そのため、駅前を行き交う車の通行量はかなり多くなっている。
環七通り沿いには背の高いマンションも多いが、環七から1本通りを入っていくと、打って変わって低層の住宅街が広がっている。見た目も少し古そうな住宅・アパートが多いのが印象的だった。駅からすぐの場所であるにも関わらず、畑として利用されている土地もあるほどだ。

駅北側の住宅街(筆者撮影)
一方で、環七通り沿いのロードサイド店舗は閑散としているわけでもない。歩き回って感じた個人的な印象に過ぎないが、環七通りがあるために、街の開発自体、それほど大きく進める必要がなかったのではないかとも思えた。
駅ナカ施設には「ワイズマート北綾瀬店」、駅から徒歩5分程度の距離には「ベルクス足立加平店」と「西友北綾瀬店」といったスーパーがあるが、どの店舗も環七通りから道を入った先に立地している。
なお、ららテラス北綾瀬の開発計画を見ると、23区内の駅直結商業施設であるにも関わらず、駐車場は200台分設置されることになっている。車による来客を相当数見込んだ計画であると言えるだろう。
正直、駅周辺の人通りは多いとは言えない。しかし、高架下のファーストフード店や駅前の公園など、人が集まるところには集まっている。このような人たちを集客できると考えれば、大型商業施設の出店場所としては良い選択と言えるのではないだろうか。

駅ナカ施設(筆者撮影)
北綾瀬駅のある足立区谷中町の世帯当たり人数は約1.68人(2024年1月1日時点)で、単身世帯かDINKs世帯(子どもを持たない共働き夫婦)が多いと予測される。
ららテラス北綾瀬の開業がファミリー世帯の呼び水となるか、今後の変化に期待がかかるところだ。エリアとしてどのように盛り上がっていくのかにも注目したい。
(朝霧瑛太/楽待新聞編集部)
朝霧 瑛太
10年以上不動産業界で経験を積んだあと、フリーライターとして独立。特に不動産投資記事の執筆実績多数あり。一次情報に基づくニュース記事やデータ分析の記事などが好評を博している。
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