PHOTO:Jun-Ju / PIXTA

国土交通省は18日、2025年の公示地価(1月1日時点)を発表した。住宅地、商業地、工業地を合わせた全用途の平均は、前年比2.7%上昇し、4年連続の上昇となった。上昇幅も拡大している。

住宅地は2.1%の上昇。交通利便性や生活利便性に優れ、転入者が多い地域では、住宅需要は堅調であると見られている。

商業地は3.9%の上昇となった。都市部の再開発の影響や、外国人を含めた観光客が増加した地域で特に高い上昇率を記録した。大阪圏で言えば、4月中旬から開催される大阪・関西万博や、大阪駅周辺の大規模再開発の影響を受けているのだろう。

公示地価の前年度比変動率(%)。()内は前年の数値。なお「地方4市」とは、札幌市・仙台市・広島市・福岡市の4市を指す

半導体関連需要高く、千歳市で48.8%上昇も

全国平均を見ると、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも4年連続で上昇し、上昇率が拡大している。

住宅地の最高価格は、東京都港区赤坂1丁目で1平米当たり590万円。前年比上昇率も10.3%と高い数値をつけ、8年連続でのトップとなる。商業地の最高価格は、19年連続で、東京都中央区銀座4丁目の山野楽器銀座本店で、1平米当たり6050万円であった。

地域別に見ると、東京、名古屋、大阪の三大都市圏が全用途平均で4.3%上昇。地方4市(札幌市・仙台市・広島市・福岡市)では、全用途平均・住宅地・商業地のいずれも12年連続で上昇している。

2024年の公示地価では、半導体メーカーの工場進出先エリアでの上昇が顕著だったが、2025年もその傾向は継続しているようだ。

4月に稼働開始を控えた、半導体製造会社「ラピダス」の進出先である北海道千歳市の商業地は、最も高い上昇率で48.8%(全国1位)を記録。上昇率全国6位には、台湾積体電路製造(TSMC)の熊本工場がある菊陽町が30.9%をつけてランクインした。

また、インバウンド需要の高い地域では、商業地だけでなく住宅地においても高い上昇率を記録している。外国人向けの別荘・コンドミニアム需要や地元の住宅需要などが背景にあると見られている。

金利上昇・建築費の高騰も…今後はどうなる?

今回の結果を専門家はどう受け止めるのか。不動産市場に詳しい「オラガ総研」代表の牧野知弘さんは、特に都心部について「予想以上に高い上昇率だ」とコメントする。

都内の商業地では、「100年に1度」といわれる大規模な再開発が進む渋谷桜丘で32.7%、インバウンド需要の高い台東区浅草で29.0%と、非常に高い上昇率を記録している。

「大規模開発やイベント、インバウンド需要の影響が地価に顕著に表れるのが商業地です。都内では駅前をはじめ、再開発を活発に行なっていますから、そうした人が集まる場所の地価が上昇しているのかと思います」

ここ数年の地価は連続して上昇基調にあるが、牧野さんは今後「ターニングポイントを迎える可能性もある」と指摘する。

「見通しは非常に難しいところです。最近話題になった中野サンプラザのように、建築費の高騰によって再開発が次々と頓挫してしまう可能性もあります。金利上昇も踏まえ、このまま勢いよく地価上昇を続けていくのかは考えなければいけないと思います」

再開発が進む地域では、利便性の向上や賑わい創出への期待感などが地価上昇につながっていた。今後は、工事や開発計画の進捗も注視しつつ、地価の動向を確認するようにしたい。

楽待の「賃貸経営マップ」では、2025年発表の最新の公示地価をはじめ、人口・世帯数、利回り、駅の乗降客数などを一度に確認できる。全国の地価情報を手軽にチェックでき、地域ごとの比較や推移を簡単に確認できるため、ぜひ活用してほしい。

(楽待新聞編集部)