駅前広場(筆者撮影)

東京の西側エリアといえば、「住みたいまちランキング」常連というイメージがあるだろう。なかでも吉祥寺や下北沢が人気かつ地価も高い「まち」として知られている。そのエリア内において、知名度こそ劣るものの、着実に地価上昇を続けている地区がある。京王線調布駅周辺だ。

このエリアは駅付近の連続立体交差事業完了を契機とし駅前の再開発が進むなど、街の賑わいが今後加速していく材料がそろっている。調布駅周辺について、街の雰囲気や開発がどのように進んでいるのかを紹介したい。

基本情報からみる調布駅・調布市の姿

調布駅は、西東京を走る私鉄、京王線の停車駅だ。八王子・高尾方面へ至る京王本線と、橋本方面へ至る京王相模原線との乗換駅になっている。特急電車の停車駅でもあり、新宿駅から調布駅までの所要時間は特急で16、17分、各駅停車では約30分だ。

年度別の乗降人員数推移を見ると、コロナ禍の影響もあり2020年度は約4万人減少したものの、その後は順調に回復の一途をたどっていると言える。

京王電鉄が公表している資料によると、2023年度における調布駅の一日平均乗降人員は11万5507人であり、乗降人員数が10万人を超えている駅は、京王線の中では新宿と調布しかない。

また、駅から北へ徒歩5分圏内に、都内の主要幹線道路である甲州街道が通り、中央自動車道の調布インターチェンジも近い。渋滞がない前提にはなるが、甲州街道を利用した場合の新宿からの所要時間は30分弱と、調布駅周辺は電車だけではなく車でのアクセスも良いという特徴もある。

調布駅の所在地は23区内ではなく「調布市」という市に該当する。高い利便性を持っている一方で、例えば隣接する世田谷区と比べれば知名度・注目度は劣っているのが実態だ。

調布市の人口推移を見ると、23区内の居住費の上昇も影響しているのか、着実に増加を続けていることがわかる。

出典:調布市

なお、増加幅においては、コロナ禍以前は毎年2000~3000人単位だったが、コロナ禍以降は毎年約200~500人単位と10分の1から6分の1程度にまで減っている状況だ。

しかし、地価推移に目を向けると、コロナ前後で足踏みしたものの、2025年時点で再び上昇基調に乗っていることがわかる。

このように商業地・住宅地のどちらの推移を見ても、コロナ禍において横ばい程度で持ちこたえ、以降2024年ではコロナ前の勢いを取り戻している。

都市開発が進む調布駅周辺

調布駅周辺の変化を見ていくうえで欠かせないポイントは、調布駅の地下駅への切り替えなどといった調布駅付近連続立体交差事業である。

本事業は、国・東京都・調布市・京王電鉄が実施した京王線(柴崎駅から西調布駅間の約2.8キロメートル)および相模原線(調布駅から京王多摩川駅間の約0.9キロメートル)を地下化し、調布駅、布田駅、国領駅を地下駅というものであり、この地下化により18カ所の踏切の除却で、周辺の交通渋滞を解消するのが主な目的であった。

工事は2003年度に着工、2012年8月に地下駅の運用を開始、2014年度に全工程が完了という経緯をたどってきた。そして以降調布駅駅周辺では段階的な再開発が進行中である。

まず、調布駅北側では、商業施設の「トリエ京王調布A館」などの建物が2017年に完成。また、南側約1.9ヘクタールの敷地は「南口中央地区」として東急不動産や住友不動産などのディベロッパーによる開発が2025年春現在続いているといった状況である。

さらに、調布駅を出てすぐの駅前広場の整備も進んでおり、こちらは2025年度内に完成見込みとのことだ。

工事中の駅前広場(筆者撮影)

そのほか、駅からは少し離れた場所になるが、味の素スタジアムの西側を通る「味スタ通り」沿いでも2029年の完成をめざし、三井不動産が大型商業施設の開発を進めており、調布駅周辺のさらなる進化が期待されてる。

調布駅周辺の現在の姿と期待される未来

実際に調布駅を訪れ周辺を歩いて感じるのは、駅周辺に人が多いということだ。訪れた日は平日の夕方だったこともあってか、大学生や高校生などの学生も多く、駅周辺は活気にあふれていた。

実際、調布駅の北には電気通信大学(国立)と桐朋学園大学(私立)の2つのキャンパスがある。さらに、最寄り駅は京王相模原線の京王多摩川駅になるが、南側には都立調布南高校とあるので、学生の姿が多いのはうなずける。

また、生命保険大手の「アフラック」が調布駅前に自社ビルの本社を構えており、関連会社も多く設置されている。17時過ぎには関係者と思われる人々がこのビルから出てきて、駅へと向かっていた。

開発中のエリアが残ってはいるものの、商業施設の「PARCO」や「ビックカメラ」、バス停・タクシー乗り場などの利用者は多く、人通りも車の交通量も多い印象だ。

駅を出るとビックカメラ、アフラックが入っているビルが見える(筆者撮影)

さらに、交通広場前には「調布市グリーンホール」、駅徒歩3分の場所には「調布市役所」と公共施設もあり、調布駅周辺は交通、生活いずれの利便性もかなり高いエリアだと感じた。

調布市役所庁舎

また、調布市は「映画のまち調布」としての一面も持つ。市内には約40社の映画・映像関連企業が拠点を構えており、行政もアピールしている(参考:調布市役所市「映画関連企業一覧」)。

調布駅前には11のスクリーンを擁するシネコン「イオンシネマ シアタス調布」がある。今後、映画関連施設やイベント誘致などでさらにまちが活性化する可能性もありそうだ。

少し駅前通りを離れると閑静な住宅街が広がっており、駅前の賑やかさとは少々アンバランスな印象も受けた。とはいえタワーマンションが乱立しているエリアと比較し、落ち着いた街並みも残っているというのは魅力のひとつかもしれない。

駅南側の住宅街(筆者撮影)

連続立体交差事業や再開発が進む調布駅周辺。現在進行中の再開発エリアもあり、「伸びしろ」もあると言えそうだ。今後、駅周辺はさらに活気が出てくるかもしれない。今後の発展がさらに楽しみなエリアとして注目しておきたいところだ。

(朝霧瑛太/楽待新聞編集部)

朝霧 瑛太
10年以上不動産業界で経験を積んだあと、フリーライターとして独立。特に不動産投資記事の執筆実績多数あり。一次情報に基づくニュース記事やデータ分析の記事などが好評を博している。