
武蔵小金井駅:北口(筆者撮影)
東京を東西に横断するJR中央線沿線には、荻窪・吉祥寺・八王子など、人気のエリアが並んでいる。しかし、これらのエリアにある物件は価格も高く、手が出ないという人も多いのではないだろうか。
こういった人気に挟まれたエリアで注目したいのが武蔵小金井駅周辺だ。「吉祥寺に住みたいけど高くて手が出ない」人も選択するエリアであり、中央線沿線の穴場的スポットと言えるだろう。
武蔵小金井駅周辺エリアについて、街の雰囲気や駅周辺で進んでいる再開発計画などをお伝えする。
基本情報からみる武蔵小金井の姿
武蔵小金井駅はJR中央線で、新宿駅から25分前後の距離にある。吉祥寺・三鷹といった人気のエリアと、国分寺・八王子といった西東京の中心エリアの中間に位置している。
年度別の1日乗車人員数を見ると、2023年度は5万5334人でJR東日本管内のランキングは72位。前後には、辻堂、平塚、長津田、海浜幕張といった駅が並んでいる。
10年間の推移では、コロナ禍に1万5000人以上減ったものの、その後はコロナ禍前より強い上昇基調にあるといって良いだろう。
道路のアクセスに目を向けてみよう。駅の南北を通る小金井街道により、アクセスは良好。南は多摩川に近い府中市へ、北は東久留米市を抜けて清瀬まで行くことができる。
次に、武蔵小金井駅がある小金井市の人口推移を見てみたい。コロナが流行した2020年前後も増加していたが、2022~2024年の間は横ばい。とはいえ直近10年の傾向は右肩上がり、かつ2025年には増加の兆しも見えているので、今後も人口増加が期待できそうである。

出典:小金井市
さらに地価推移に目を向けると、商業地・住宅地ともに2020~2021年にかけて足踏みしたものの、早い段階で上昇基調に戻っていると言える。
武蔵小金井駅に降り立ってみると…
武蔵小金井駅で電車を降りてまず感じるのは、駅舎が比較的新しくてきれいということだ。駅ナカ商業施設の「nonowa」も2009年の開業から15年以上経過しているものの、あまりその年数を感じない。

駅構内にある商業施設の様子(筆者撮影)
周辺は駅を挟んで南北に分けられるが、それぞれかなり異なる様相を呈している。
まず、南口側はとにかく「広々としたきれいな街」という印象を抱く。これは、武蔵小金井駅南口第2地区市街地再開発事業にて誕生した商業施設「武蔵小金井シティクロス」の印象と言って良いだろう。
駅前の広場から続く敷地内には、商業施設のほか、タワーマンション、子育て支援施設、小金井の歴史に触れることができる施設もある。
そして人通りに関しても多くの人が行き交っており、活気も感じられる。

南口にある「武蔵小金井シティクロス」(筆者撮影)
武蔵小金井駅北口の現在の様子と再開発計画
北口側はというと、モデルルームの垂れ幕が掛かったやや古めかしいビルに象徴されるように「古い街」という印象だ。

モデルルームの垂れ幕がかかる「第一大久保ビル」(筆者撮影)
再開発計画が進行中である本エリアは、2024年12月13日に再開発事業が都市計画決定され、事業協力者として住友不動産が選出。2026年度の工事着工・2030年度の事業完了を目指している。
対象区域は駅の北口を出てすぐに位置している小金井街道沿いの0.6ヘクタールの場所である。
駅前だけでなく、ロータリーを入ってすぐの商店会エリア内にも古い建物が多いが、「ドン・キホーテ」、ドラッグストア、銀行、その他さまざまな飲食店が並んでおり、生活に便利な環境は整っていると言える。
しかし狭い路地が防災性や通行利便性における問題になっているため、再開発は歩車分離・無電柱化などこの問題も併せて解決する方向で進んでいるようだ。

古い建物が多い北口の商店会エリア(筆者撮影)
また、歩行者空間においてはさらなる工夫が計画されている。
南北の街区を結ぶデッキを整備することで北口エリアの回遊性を高め、駅から商店街方面へ人の流れをつくるというものだ。
計画通りに整備が進めば、北口側の賑わいの創出につながるだろう。
ともすれば「古くて狭い街」という北口エリアにおける現在の印象が再開発でどう変わるかが、今後の来街者数増加のカギとなりそうだ。
北口だけに留まらない武蔵小金井駅周辺の再開発事業
北口エリアとは別に、駅東側の高架下にて「(仮称)RAKU SPA 武蔵小金井」という温浴施設の建設工事も進んでいる。
敷地内にはイベント会場としても活用できる公園も整備され、2025年12月の開業が予定されている。

高架下に建設中の温浴施設の現場(筆者撮影)
中央線沿線には、荻窪駅の北口に「なごみの湯」というスパ施設があるが、平日でも賑わいを見せ、若い人も多く利用している。いわゆる「サ活」が流行っていることからもスパ施設の需要はあり、一定数の来訪者数は見込めそうだ。
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これまでは吉祥寺や国分寺など高い知名度と人気を誇るエリアの陰に隠れて存在感の薄い武蔵小金井。再開発によって知名度や利便性の向上が期待できるエリアと言えるだろう。
(朝霧瑛太/楽待新聞編集部)
朝霧 瑛太
10年以上不動産業界で経験を積んだあと、フリーライターとして独立。特に不動産投資記事の執筆実績多数あり。一次情報に基づくニュース記事やデータ分析の記事などが好評を博している。
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