競売ルポ漫画『競売物語』。競売で手に入れた自宅の激安戸建てで起こる、「素人にはキツすぎるトラブル」を専門家の解説とともにご紹介! 今回からは「空き家再生人」でおなじみの広之内友輝さんが新たに解説に加わります!
さて、今は汲み取りトイレの水洗化工事に取り組んでいるところです。何にいくらかかって、お金の工面はどうしたらいいのでしょう。さらに、家の下水をよく見ると「違法」なポイントが隠れていたようで―。
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【登場人物】


本作のあいづち役。北海道弁がチャームポイント

レゲエ風ファッションのスゴ腕水道職人。
空き家再生人の「現場目線」
今回からコメントを寄稿します、大家歴15年の「空き家再生人」こと広之内友輝です。漫画と同じ北海道で、ガラガラ・ボロボロのワケアリ物件を「直して貸す」のが得意です。私からは、不動産にまつわるリアルな「現場の話」をお伝えします!
解説:経験者が語る、トイレの水洗化にいくらかかる?
トイレの水洗化工事は、大家さんにとっても優先投資の対象です。ただ、気がかりなのは費用ですよね。私の経験では、おおむね以下のような費用感です。
■トイレの水洗化にかかる費用
・水洗化工事・・・50~150万円
・トイレ本体工事・・・5万~15万円
・オプション工事・・・5万~15万円
・撤去、設置工事・・・5万~30万円
実際のところ、費用は自治体や周辺環境によって大きく異なります。特に高額になりやすいのは「新規に下水接続するケース」と「大掛かりな工事が必要なケース」です。
新規接続の場合、下水道整備の事業費を利用者で公平に負担する趣旨の「受益者負担金」がかかる場合があります。平米あたり数十円~数百円で、土地の広さによっては10万円以上になります。
工事が大掛かりになるのは、工事にあたってアスファルト舗装を剥がさなければならないケースです。特に、家の排水設備と下水道管をつなぐ「公共汚水桝」が道路を挟んで反対側にあると費用がかさみます。
実際に工事する際は、信頼できる職人によく相談することが大切です。
◇
少しでも安く済ませるために有効なのは、本編でも描かれていた「相見積もり」と「補助金」の活用です。
公共下水接続施工は自治体の指定業者が行いますが、政令指定都市クラスの地域でしたら業者が競合していますので、相見積もりにはメリットがあるでしょう。
ただ、小さな町の場合は業者が相見積もりをいやがったりするので、事前に「相見積もりを取ってもいいでしょうか」と一言断っておくとよいです。
また、自治体によっては、下水関係の工事で使える助成金・補助金・低金利の開始付け制度などを用意しています。役所の下水道の担当課、もしくは指定業者に聞くのが一番だと思います。
阿部弁護士のひとこと解説
丸の内ソレイユ法律事務所の阿部栄一郎弁護士が、不動産トラブルを数多く担当してきた経験を活かし、法律の豆知識をご紹介します。
解説:下水の「違法接続」、そもそもなぜ「違法」なのか?
物件の前所有者が、生活排水を市に無断で公共下水道に流していた―。このような行為は「違法接続」「無断接続」など呼ばれます。
でも、下水につなぐだけでいろいろと届出がいるなんて、面倒じゃありませんか? なぜ勝手にやってはいけないのでしょう。
1. 下水の詰まりの原因になる
違法接続の場合、工事前後に通常行うべき審査を受けないことになります。そのため、下水の構造に問題があったとしても気づけません。下水の流れが滞り、詰まりの原因になるかもしれません。
2. 自治体が下水道使用料を徴収できず、財政に支障が出る
公共下水道の使用者は、使用量に応じて、下水道の使用料を自治体に支払っています。違法接続の場合は自治体に届出をしませんから、自治体側も使用料を徴収できないのです。
なお、過去分に遡って使用料が徴収される可能性もありますし、自治体によっては罰則もあります。例えば、東京都下水道条例では、25条で違法接続に関して「5万円の過料に処する」旨を定めています。
5万円と聞くと案外安いと思うかもしれませんが、ダメですよ! 違法接続はトラブルの原因ですので、絶対にしないようにしましょう。
(漫画:根本尚、監修/解説:弁護士 阿部栄一郎、広之内友輝)
根本 尚/漫画家(X)
『プリンセス』(秋田書店)で連載中。 『怪奇探偵・写楽炎』(文藝春秋) 『現代怪奇絵巻』(秋田書店・週刊少年チャンピオン)、 『恐怖博士の研究室』(同・ミステリーボニータ)他。 同人サークル名、札幌の六畳一間。 北海道ミステリークロスマッチ会員。北海道の自宅を競売で取得した。
広之内 友輝/不動産投資家
不動産投資歴15年。32棟400室を所有する。北海道で、ガラガラ・ボロボロの「ワケアリ物件」に数多く投資。物件再生に関して豊富な知識と実績を持つ。楽待では「空家再生人」としてもお馴染み。
阿部 栄一郎/弁護士
2007年東京弁護士会登録。不動産オーナーのサポートを中心に、不動産に関する問題の解決実績多数。不動産関連のイベントや相談会への参加不動産専門紙への寄稿も行っている。
『競売物語』作者の漫画家。北海道の自宅を競売で買った。