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東京のマンション需要は旺盛だ。不動産経済研究所の調査によれば、23区内における新築マンションの平均価格は2023年に1億円を突破して以降、2025年2月時点でも1億392万円と、1億円超が続いている。

こうした状況で、都内のマンションはなかなか手が届かないのが実情だ。

一般的に、住宅価格の目安は「世帯年収の5倍」と言われる。仮に世帯年収が1000万円なら住宅価格の基準は5000万円。

では、ファミリーを念頭に「3LDKで5000万円以下」の新築マンションを買うためには、都心からどこまで離れる必要があるのだろうか。西・北・東の3方向で調べてみた。

都内西部エリアでは、八王子駅から徒歩15分以上が目安

まずは、都心西側から見てみよう。

JR中央線沿いの駅で見てみると、三鷹駅北口から徒歩21分の新築マンションでも販売予定の価格帯は7500万円前後であった。さらに西に位置する立川駅周辺でも条件に合う物件は見当たらない。

では、八王子ではどうだろうか。八王子は2017年頃に新築マンションの供給数のピークを迎え、現在以前ほどの勢いはないものの、価格は上昇しているエリアだ。

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駅徒歩6分の地区には2025年秋に竣工予定の「プレシス八王子横山町」がある。第2期販売概要によると、1LDK~3LDKは価格は2600万~4600万円台。3LDKの専有面積は55.307平米のため、やや手狭に感じるだろう。

また、駅から徒歩20分の16号線近くにある「サンクレイドル京王八王子」も、3LDK、約60平米で5000万円以下である。

八王子駅から1駅西に行った西八王子駅でも該当物件を見つけることができた。同駅北口から徒歩8分、南浅川に面する「プレシス西八王子リバーサイド」だ。

第1期販売では、3LDKが4200万~5470万円で売りに出ており、第2期の予告販売概要を見ると、同じ3LDKの物件で57.44平米が2900万円台、63.13平米が4600万円台となっている。

八王子駅は新宿駅から中央線特別快速で40分弱。駅から徒歩15分以上離れた場所で該当物件を見つけられたことから、西側エリアは都心から約1時間が目安と言えよう。

高崎線沿いは桶川・鴻巣で、条件に合致する物件が

次に北部エリアとして、JR京浜東北線・高崎線沿いの埼玉県を見てみたい。

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浦和駅前は現在、地上27階建ての「URAWA THE TOWER」が建設中で、2026年4月の竣工を予定している。

2024年10月に公表された第1期正式価格表では2LDKでも1億円を超え、3LDKは面積によってばらつくものの1億5000万円前後と、都内のタワマンと同等の価格帯である。

駅周辺は、以前より開発が進められてきたエリアということもあり、新築マンションの供給数は少ない。

また、価格も高く、近接するJR埼京線と武蔵野線が停車する武蔵浦和駅から徒歩14分の「プレミアムレジデンス武蔵浦和」で、3LDKで5100万〜6500万円台の予定(第4期1次予告)となっている。

大宮駅周辺の徒歩圏内の物件でも、2LDKで6000万近くになるため、さらに北となるエリアを見ていく必要がありそうだ。

今回基準としている「3LDK・5000万円」の物件は、大宮駅から高崎線で北へ4駅向かった桶川駅にて見つけることができた。

2026年3月竣工予定の「サンクレイドル桶川II」で、同駅から徒歩8分の場所にあり、現在の予告広告では66.65平米の3LDKの2戸がそれぞれ4400万円台・5000万円台となっている。

さらに桶川駅から2駅北上した鴻巣駅では、徒歩5分の場所に337戸からなる大規模マンション「COCOCHI FIRST PROJECT(ココチファースト プロジェクト)」が今年に入って完成。

3LDKで3900万円から、87平米超の広い間取りで5400万円からであることから、ここも5000万円以下で買える物件に該当する。

上野駅から桶川駅までは高崎線で40分強、鴻巣までは50分前後。八王子方面と同様、北側エリアも都心から1時間程度が「3LDK・5000万円」物件の目安となる。

JR総武線沿線での物件探しは困難

最後に東部エリアとなる千葉方面を見てみよう。

常磐線沿いの松戸駅周辺は不動産価格が比較的安いエリアと言われていたが、駅から徒歩2分の「ザ・パークハウス松戸本町」の価格は、2LDKで6480万円、3LDKで8000万円近くと、もはやかつての都心レベルだ。

さらに東に進んだ柏駅では、駅から徒歩約20分弱の場所で該当物件を見つけることができた。「イオンモール柏」に近い12階建ての「サンリヤン柏 レジデンス」が、3LDKで4400万円台となっている。

総武線沿いも見てみよう。船橋駅周辺では徒歩10分強の場所で新築マンションが売りに出ているものの、相場は2LDKで5000万円前後、3LDKで6000万円を超える。

さらに東へ向かった津田沼駅周辺では、徒歩13分の場所にある「サンクレイドル津田沼III」は、条件に該当する数少ない物件だ。

第3期販売概要によると、2LDK~3LDKで4398万~4998万円、専有面積は最大70.11平米となっている。同エリアでさらに大きい部屋を供給するマンションは6000万円を超える。

津田沼より都心から離れた千葉駅周辺を見ても難しい状況と言える。徒歩圏内では2LDK以下の物件が多く、3LDKでは60平米台でも6500万円を超えるからだ。

千葉駅から外房線でさらに1駅下った蘇我駅一帯でもコンスタントに5000万円を下回るわけではない。また、千葉駅からさらに離れたエリアでは供給数が少なく、戸建てが中心といった状況もある。

東部エリアは私鉄沿いが穴場

千葉方面では私鉄沿線が穴場と言えそうだ。

例えば、JR、東京メトロ、東葉高速鉄道が乗り入れる西船橋駅を起点とする東葉高速鉄道の村上駅の南側徒歩3分の場所で売りに出ている「ウエリス八千代村上」。

本物件は、商業施設の跡地を活用した地上15階建て、総戸数967戸の巨大マンションであり、2棟で構成されている。第3期予告広告概要によると、2LDK~4LDK、面積54.90~82.02平米で、価格は2600万~6100万円台だ。

ウエリス八千代村上(筆者撮影)

駅北側にはスーパーマーケットをはじめ、衣料品店、飲食店などからなる商業施設「フルルガーデン八千代」があり、生活利便性は高いと言える。

フルルガーデン八千代(筆者撮影)

村上駅から西船橋駅までの所要時間は19分。東葉高速鉄道は運賃の高さがデメリットだが、東西線との直通運転により、大手町駅まで45分で行けるアクセスの良さは、大きな魅力だろう。

京成本線の実籾駅周辺でも該当物件を見つけることができる。

実籾駅(筆者撮影)

駅から徒歩5分の場所にある「バウス習志野 mimomiの丘」だ。96戸からなる中規模マンションで、最終期では2LDK+Sと4LDKの3戸が3498万~4498万円で売り出されている。

バウス習志野 mimomiの丘(筆者撮影)

実籾駅周辺は、低層の雑居ビルや店舗が並び、周辺は戸建やアパートが占める住宅街だ。

京成本線で実籾駅から上野駅までの所要時間は約50分。とはいえ主要路線のJR総武線との接続は悪い。

JR津田沼駅に行く場合は、京成津田沼駅で京成松戸線に乗り換えて新津田沼駅まで行く、もしくは実籾駅から京成船橋駅まで乗り、同駅からJR船橋駅まで歩くことになり、電車通学・通勤者にとっては負担要素になると言える。

条件に合致する物件はいずれも都心から1時間の場所

結論としては、最寄り駅までの徒歩を含め、いずれも都心までの所要時間は1時間程度が目安となることがわかった。そして、東側(千葉方面)の場合はJR沿線の価格が高く、私鉄沿いが穴場と言える。

ただし、都心から1時間以上の場所は、そもそもマンションの供給数が少なく、距離的に「都心に近い場所に住める」というマンションのメリットが薄れるという現実にも直面する。

また、今回テーマとして設定した「3LDK・5000万円以下」の物件がある西八王子、埼玉の桶川・鴻巣、千葉の村上・実籾は、駅から徒歩10分強のエリアにて新築戸建てが4000万円前後で供給されてもいる。

このことからマンションはむしろ割高と感じる。

新築マンション5000万円以下のエリアでは、新築戸建ても選択肢に入るだろう。

今回調査した「3LDK・5000万円以下」の新築マンション

<西側エリア>
・「プレシス八王子横山町」
 JR八王子駅徒歩6分/1LDK~3LDK2600万~4600万円台

・「サンクレイドル京王八王子」
 JR八王子駅徒歩20分/3LDK4438万円~

・「プレシス西八王子リバーサイド」
 JR西八王子駅徒歩8分/3LDK2900万円台・4600万円台

<北側エリア>
・「サンクレイドル桶川II」
 JR桶川駅徒歩8分/3LDK4400万円台・5000万円台

・「COCOCHI FIRST PROJECT」
 JR鴻巣駅徒歩5分/3LDK3900万円~

<東側エリア>
・「サンクレイドル津田沼III」
 JR津田沼駅徒歩13分/2LDK~3LDK4398万~4998万円

・「ウエリス八千代村上」
 東葉高速鉄道村上駅徒歩3分/2LDK~4LDK2600万~6100万円台

・「バウス習志野 mimomiの丘」
 京成本線実籾駅徒歩5分/2LDK+S・4LDK3498万~4498万円

※いずれも先着順販売概要情報から抜粋 2025年4月16日時点

(山口伸)