ごみ部屋の住人は孤独感が強い
さらに穂積さんは、ごみ部屋の住人の心理について話を続けます。
「わたしの経験では、『どうしていいか誰にも相談できない』という孤独な人が多いと強く思います。精神的な病気を抱える方もいます。
ですから、いったんは撤去しても再発する可能性が高いということを知った上で、オーナーや管理会社が、入居時にごみ出しの方法を丁寧に伝える、分かりやすく説明した書面を作って渡す、仕事が忙しくてごみの日に出せない人には相談に乗る、せめて声をかけるなど、部屋を貸す側にとって当たり前の業務を今一度、見直して実行することは有効だと考えています」
穂積さんが、この連載の第2回『借り主同士の争い事に備える。ご近所トラブルのナンバーワンとは!?』で指摘した、オーナーや管理会社から、入居者に一言でも挨拶をする、コミュニケーションをとることは、この場面でも生きるかもしれません。
国土交通省が平成21年、全国の自治体に「空き地・空き家等外部不経済対策について」というアンケートを実施しています。「外部不経済をもたらす土地利用の例」として、「空き地」、「空き家」、「廃屋・廃墟等」、「耕作放棄地」などと並んで「ごみ屋敷」が列挙され、250の市区町村が「(ごみ屋敷が)発生している」と答えています。このことから、ごみ屋敷は自治体にとって「不経済である」ととらえられていることが分かります。
2013年12月現在、東京都足立区や荒川区では、自治体がごみを強制撤去できる条例が成立し、大阪市も制定を目指しているところです。この傾向は、今後、全国の自治体に広がっていくと予測できます。
独居の高齢者のごみ屋敷問題に取り組む自治体は多く、困った場合、自治体の窓口で相談してみると何らかの情報が得られることもあるようです。
筆者は、子どもと学生の部屋の取材、研究を続けています。拙著『これが東大生・京大生の部屋だ!』(扶桑社)などでも伝えていますが、部屋とは2つとして同じものがない、住人の心の内が無意識のうちに直接的に反映された空間であるということを、数々の取材を通して実感しています。
数年前から「片付けられない女」という言葉が社会に流行、定着し、テレビ番組や漫画、小説の題材にもなっています。個性ととらえて揶揄(やゆ)する風潮にあるようですが、その心の内には、「片付けられない」、「捨てられない」ことに現れる自己への根強いコンプレックス、人とのコミュニケーションにおいて自分は劣るという思いが通底しているように思います。
ですが、冷静に考えると、誰しも、心身が疲れたとき、多忙なとき、病気のとき、何もする気が起こらない、ごみ出しが手に負えない、異様に部屋が散らかったという現象に思い当たることがあるでしょう。そこからごみ部屋の住人の心のありようを類推することはできないでしょうか。
自分の存在は、他人にとって迷惑なだけではないか。その孤独感が自分の中のあるラインを越え、理性を見失って他人への迷惑行為に及んでしまう……。
心身の疾患の問題が根底にある限り、物理的にごみ撤去だけでは済まず、解決や対策は困難を極めることになります。だからこそ、相手の性質、生活、状態にもよりますが、早期にごみ部屋を発見できた場合、ある程度は許容し、できれば原因など話を聞き、説得を試みて「自ら片付けるように根気よく導く」ということが最善の方法ではないでしょうか。
~ 不動産アドバイザー・穂積さんの教え! ~
1.ごみ部屋の兆候は、見た目や入居時の審査のときには分からない。 |
2.ごみの山積みが、ひざの下までなら改善率が高い。 |
3.消防や設備の定期点検のときに立ち合う。 |
4.ごみ部屋の住人の背景には、孤独感があることを知っておく。 |
5.ごみの分別法を丁寧に説明し、日ごろからあいさつなどコミュニケーションをとる。 |
プロフィール画像を登録