バリアフリーの進化がすごい。

身体の不自由な人でも快適に使えるという機能的な側面だけではなく、特にデザイン的な進歩が目ざましい。まるで病院や施設のよう……バリアフリーにつきまとう、そんなマイナスイメージは過去のものになりつつある。

団塊の世代が高齢化入りする、いわゆる「2015年問題」も間近の今。安心・快適な暮らしを提供する「バリアフリー」を保有物件に導入することを考えてみるのはいかがだろうか。

バリアフリーを身近にするデザインの進化

日々進歩しているバリアフリー。現在のトレンドとして注目したいのが、デザイン性の向上だ。

少し前までのバリアフリーは機能性が最優先され、デザイン性はあまり重視されてこなかった。しかし、バリアフリーが必要な高齢者や障害者にとっても、自宅が病院や施設のような雰囲気で良いはずはない。もちろん同居する家族にとってもだ。

そうしたニーズに応えるべく、ノーマルな住まいとまるで変わらない、デザイン性を重視した実例が増えてきている。

本記事の写真をご覧いただきたいが、どこがバリアフリーなのかひと目ではわからないようなものばかりである。

優れたデザインにすることで、バリアフリーがより身近にな存在になってきていると言えるだろう。

交通事故で右腕以外の機能が麻痺した女性が使用しているキッチン。写真ではわかりにくいが、全体的に位置が低い造りになっている。

全身の筋力が低下する進行性の難病の人がご夫婦で暮らしている住まいの山小屋風のリビング。建坪は狭いが、非常に合理的に造られている。

国の基準を満たせばOK? どのようなバリアフリーを目指すべきか

2006年に「バリアフリー新法」が施行され、不特定多数の人々が利用する建築物(特定建築物・特別特定建築物)については国が定めたバリアフリーを施さなければならなくなった。それに伴い、多くの建築会社にはバリアフリーの設計・施工のノウハウがある。

マンションでも「バリアフリー」をうたっている物件は珍しくない。それらはバリアフリー新法施行に伴って定められた「国の基準」を採用した上で、バリアフリーを標榜している物件がほとんどだ。

しかし実際には、入居者の身体機能の状態や、障害のある個所、自立生活を前提にしているのか、介護のしやすさを優先させるのかなどの条件によって、整えるべきバリアフリーはまったく異なってくる。

国が定めている基準はあくまでも、公共性の高い建築物での最低限の利便性に配慮したものであり、居住用としては、入居者のケースに応じた適切な工夫が非常に重要になってくるのだ。

例えば手すりひとつにしても、施工されていればいいというわけではない。使う人の身体状況によって的確な高さや角度、太さなどを決めていかなければ、まったく使えない無用の長物となってしまうこともある。

国の基準はできるだけ多くの人が使えるような配慮であり、決して万全のバリアフリーではないのだ。

手すりを取り付けた例。壁のデザインを統一させるだけで、手すりの存在感は薄くなる。

まずは最低限の「器づくり」を目指す

となると、様々な身体状況の入居者に対応できるバリアフリーを集合住宅で実現するなどとても困難に感じるかもしれないが、決して無理ではない。

例えば中古マンションをバリアフリーにリノベーションしようとするなら、以下のことを吟味する。

居室については、住む人の身体状況に応じて柔軟に対応できるような「器づくり」ができるか考える。段差の解消、開口部は広くし、可能な限り引き戸を採用する、動線に配慮した間取りにする、手すりが必要そうな個所に下地材を施工する……といった、バリアフリーの基礎的な条件を整えることが可能かどうかをチェックするのだ。

そして可能であれば、この最小限の条件だけを整え、後は入居者それぞれが各自の状況に応じて自由に工夫できるような余地を残す。個々に必要なリノベーションは、各自にお任せするというわけだ。高齢者の居住者であれば、介護保険などを利用して低価格で改装できる。

自室だけでなく、集合玄関への出入り、自室までのアプローチなど、建物の共用部分はオーナーの責任となる。こちらは先に挙げた国の基準をベースに、極力使いやすいと思われるバリアフリーにするのが理想的だ。

これらトータルの条件を精査するうえでは、どの程度の身体状況の人までを受け入れられるようにするかという、入居対象者のターゲットを明確にしておく必要もあるだろう。

認知症に加え、ほぼ寝たきりの母親を娘さんが介護するためにリフォームされたマンション。寝室から母親を移動させやすくするように余計な間仕切りを撤去してある。

経験豊かな企業とのタッグが不可欠

ひと口にバリアフリーといっても非常に奥が深く、精通していなければ難解な事柄がとても多い。投資物件をバリアフリーにする場合、要点を把握している建設会社や設計事務所の選択は非常に大きなポイントになる。過去にバリアフリー工事の実績があり、施工主にわかりやすく、納得いく説明をできる企業の選択が第一歩だろう。

気になるのが費用だが、立地などの条件やどの程度までバリアフリーにするかによって大きく変わる。

ちなみに、建築物のバリアフリーに対する補助金もある。その多くは居住者を対象にしたものだが、オーナー向けのものもある。主に自治体の補助金で、自治体により条件は異なるが使わない手はない。

■東京都練馬区の例
http://www.city.nerima.tokyo.jp/kurashi/sumai/takuchi/barrierfree.html

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