2020年に開催される東京オリンピック。中でも競技場や選手村が集まる予定の湾岸エリアは注目度が高まり、同エリアでの分譲マンションには購入者が殺到していると聞く。
「中古マンション・投資用マンション購入のご相談はどちらも増えています。現状、都心部を中心に城南エリア(世田谷区・目黒区・渋谷区・品川区・大田区・千代田区・中央区・港区)の投資用ワンルームの価格は2割前後上昇している傾向があります」
こう語るのは、不動産仲介業を行うエーアイアール麻布十番店店長、山口嘉一氏だ。五輪開催やアベノミクス、消費税増税などの影響もあり、売り手市場になってきていると同氏は分析する。
「しばらくは無理して売りに出さず保有しておきたい、今後価格が上がりそうだから指値は受けないなど、売り手側に合わせた取引が多いようです。海外からの購入者が増加していることも、この動きを後押ししているように感じます」(以下「 」内は山口氏)
湾岸部にとどまらず、今後の景気上昇予想に伴い、都心部全体の不動産価格が上昇する可能性は高い。ではこの時期にどのエリアで、どのような物件を買っておくのが正解なのか、山口氏に詳しく聞いた。
狙いたい注目エリア 環状2号線、地下鉄8号線がカギに
五輪開催までに買っておくと注目度が高まり、値が上がりそうなエリアを4ヵ所挙げてもらった。
(1)勝どき・月島
五輪の競技場や選手村の施設開発が最も活発に行われる勝どき・月島エリア。もともと中央区内でも人気を誇るエリアだが、五輪開催がますます追い風となっていると同氏は指摘する。
「環状2号線が完成すれば、選手村からオリンピックスタジアムまで約10分で移動できるようになります。現在は渋滞の多い晴海通りがネックですが、今後アクセスはかなり便利になると予想されます」
2015年度、環状2号線は虎ノ門〜豊洲地区までの区間が完成する見込みだ。これにより都心と臨海部との交通アクセスが大幅に改善される。
「商業施設が多く、銀座まではタクシーで1000円前後と都心にも出やすく、生活環境としては最高です。タワーマンションも数多く建設される中、ますます人気になりそうなエリアです」
(2)泉岳寺
これまでは都内西寄りのエリアが人気で、注目度は決して高くなかった都内東寄りエリア。品川〜田町エリアの間にある泉岳寺もそのうちのひとつでしたが、今ではかなり期待度の高いエリアに。
「昨年6月、東日本旅客鉄道から、JR山手線の品川駅~田町駅間に新駅を作る計画が正式に発表されました。現状、同エリアはあまり賑やかな街並みではありませんが、今後発展していくことが予想されます」
同エリアは品川にほど近く、アクセスも良好な点が一番の魅力だ。新駅計画を機に品川では周辺の再開発が進められている。2027年に開業を予定しているリニア新幹線の起点となるほか、押上-成田空港、泉岳寺-羽田空港を結ぶ「都心直結線」構想にも大きく関わるエリアだ。つまり、五輪が終わってからも泉岳寺を中心とする品川周辺エリアは、中長期的に将来性のあるエリアといえるだろう。
新幹線停車駅でもある品川にほど近い立地でアクセスも良好なことから、注目度が高まることは間違いないエリアだという。
(3)虎ノ門
「昨年開業した超高層ビル『虎ノ門ヒルズ』の建築で、今でもかなり話題になっているエリアです。ビルの地下には環状2号線が通ることから、晴海などの湾岸部にも出やすく便利になります」
オフィス街として知られる虎ノ門。住宅などの建物が少ないエリアだが、虎ノ門ヒルズ内にもオフィスの他、ホテル、住居が入る予定で、今後も開発は進むと見られる。
(4)東陽町・住吉
「江東区などが出資する第3セクターで、東京メトロ有楽町線豊洲駅と半蔵門線住吉駅を結ぶ新地下鉄(地下鉄8号線)が開通すると、江東区内の南北移動が格段に便利になります」
現在江東区エリアには、都心方面へ向かう東西をつなぐ路線はあるものの、北部と南北の臨海エリアを縦につなぐ路線はない。そのため、鉄道で臨海エリアに移動する場合は、やや遠回りする必要があった。同線が開通するとアクセスの良さから、人気が上昇する可能性は非常に高い。
「値上がりしそうな物件」を選ぶポイント
次に、今後値が上がりそうな物件選びの留意点についても尋ねた。
「区分マンションは個人間での取引が多く、価格帯で見ても銀行融資を受けやすいことが特徴。現在の流通量を考えると今後はもっと活発に動きそうです」
一方で、近年深刻な問題になっている築40~50年の老朽化マンションは、この先建て替えなどが積極的に検討されるようになる、と同氏は語る。
気になるのが新築・中古の選び方だ。どちらにも当然メリット・デメリットがあるとはいえ、より賢い選択はどちらなのか。
例えば、新築マンションを買う場合、当然建物や設備などに高い魅力があるが、注意したいポイントがあるという。
「タワーマンションなど一部のマンションでは、修繕一時金が50~100万円単位でかかることがあります。新築だけに限りませんが、長期的な修繕計画表などは慎重に確認したほうがよいでしょう」
一方、中古マンションを買う場合、既に住んでいる居住者がいるため、良くも悪くも事前にマンションの評価・評判を確認できて安心だ。
「都心部では分譲当時の価格よりも、値が上がっている物件も少なくありません。仮に5〜7年程度住んだ後に買い替えとなっても、購入時とあまり変わらない価格で売り出せるケースもあります」
とくに中央区や港区、目黒区、渋谷区などのエリアでは、中古市場も高い人気がある。さらに、中古の場合は市場価格になるため、物流が少ない状態が続く限り、価格もしばらくは割れることがない。
「最近人気なのは、築年数の古い建物をリノベーションして再販する部屋。価格も手頃で内装は新規内装リフォーム済なので、賃貸からのお客さま層が多いと感じます」
近年、海外の投資家も積極的に来日し、都心の物件を購入していると同氏は話す。利回りの良い物件であれば、一棟アパートや商業ビルなども中期的な価格上昇が起こる可能性が高いという。
「売り手市場になっているマーケットでも、賃貸相場はそれほど変動がなかったり、その逆もあったりします。適正な賃料相場を見極めた上で検討してみてください」
早まってしまうことなく、上記を参考に慎重な物件選びを試みていただきたい。
【取材協力】
株式会社エーアイアール http://www.air-home.jp/
プロフィール画像を登録