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まりおさん

不動産投資をする際は、成功例だけでなく、失敗談を聞くことも重要だ。
失敗談を聞くことで、不動産投資における失敗や落とし穴に気付き、対策を取ることもできるだろう。

過去に不動産や株、FXなどさまざまな投資で失敗し、その失敗談を綴ったまんがブログ「僕と投資と樹海の日々」を執筆するまんが家のまりおさんに、不動産投資の失敗談について伺った。

 

-まりおさんが不動産投資を始めたきっかけを教えてください。

不動産を始めた経緯は、激安不動産投資家の加藤ひろゆきさんの著書『借金ナシではじめる激安アパート経営 不動産投資でつとめ人を卒業スル方法』(ぱる出版)を読んだことがきっかけです。
仕事でたまたま読む機会があったのですが、「100万円で投資した」という内容に、ふと「僕にもできるんじゃないか」と思いました。
「不動産投資って面白いなぁ」と感じたのを覚えています。

-まりおさんが不動産投資を行っていたのは、2008年から2012年の4年間。その間、どんな物件を所有していたのでしょうか。

私が所有していたのは、2つの物件です。
最初に購入したのは、次のような物件。

所在地
長野県長野市
購入価格
90万円
タイプ
分譲マンションの1部屋
間取り
2K
平米数
約35平米
築年数
29年

長野県の都心部にある、駅近の物件です。
加藤さんの本にならい、100万円の物件を探したところ、運よくいい物件を見つけられたんです。この物件の売主は、もともと会社を経営されていた方。
「会社をたたむので物件も手放したい」とお話しいただき、金額交渉の末、90万円で購入しました。この物件は、2~3年ほど保有しましたね。

-この物件の財務状況はどうだったのでしょうか。

悪くなかったですよ。
ただ、僕は「不動産で金持ちになりたい」という目標があったので(笑)、そういう意味では合ってなかったのかも。毎月、4万円で入居者に貸していたのですが、マンションの修繕費として毎月7000円がかかっていました。

結局、月の収入となると3万3000円。
これだといくらたっても豊かにならない。
豊かになるために、もう一つ物件を購入することにしました。

-それが2件目の物件ですね。そちらはどんな物件だったのでしょうか

4000万円の物件です

-急に高額になりましたね(笑)

そうですね(笑)。結局、この物件ですごく苦労することになった。
今思えば、90万円で購入した最初の物件だけにしておけばよかったんです……。

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2件目は、どんな物件だったのですか?

スペックは次の通りです。

所在地
長野県上田市
購入価格
4000万円+1000万(リフォーム代)
タイプ
RC造マンション
階数・戸数
3階建て全18戸
間取り
2DK、3DK
平米数
約40平米~
築年数
30年

駅から車で2~3分という利便性のいい場所にあったマンションを1棟購入しました。5000万円の融資は、JAから、「フルローン」という条件で受けました。


-購入の経緯は?

これまでは90万円の分譲マンション1部屋だけでしたが、不動産投資についての勉強を続けていくと、「固定資産税の高い物件ほど融資がおりやすい」ということが分かったんです。
融資のおりやすい物件を探したところ、この物件を発見。

ほかに選択肢となるマンションがなかったことから、このマンション一択で購入しました。
実際は、固定資産税の高い物件でも、返済後の手残りがあまりない状態だと融資はおりにくいのですが、いい担当者の方にめぐりあい、その方が一生懸命上にかけあってくれたことから、最終的に融資がおりることになりました。

-全18戸となると、結構な大きさですね。入居状況はどうだったのでしょうか。

不動産屋にも頑張ってもらい、こちらもさまざまな入居者が入れるような条件にしたので、1年間で満室になりました。
購入前のシミュレーションでは、返済比率約50%で、13年でローンを返済できる計算。

そのため、13年間は手残りがわずかでもがまんしようと思っていました。
しかも築30年と古かったので、水回りをリフォームしなければいけないなど、思いのほか出費がかさみました。

それだけだと問題はなかったのですが、正直「これはまずい……」と思ったのは1年を過ぎてからのことでした。

-というと?

当初、ぼくは市営住宅に住んでいたのですが、4000万円の物件が満室になって家賃収入が年間750万円になり、まんが家としての仕事の収入もあったため市営住宅から出なくてはいけないことになりました。
その結果、2.5万円程度だった家賃が、7万円になりました。
それに加え、1年たったあたりから税金があがりはじめました。

収入が増えたので、所得税があがり、健康保険もあがり、僕には子どもがいるので保育料までもあがり、総額で月数十万円ほど支出が増えました。
そもそもローンの返済で手残りがほとんどないのに、です。その結果、物件を購入する前より貧乏になりました。

-ローン返済は計算していたものの、税金のことまでは考えていなかった、と。

そうです。そこまで考えなかったんですよね。
結構勉強したつもりだったんですけど、税金がどのくらい増えるかまで書いている書籍も少なく、気づいたころには首が回らない状況に。

今考えると、不動産で今すぐ金持ちになろうと思っていたのが間違いだったのかもしれませんね。

 -想定外にかかった税金はどうしたんですか?

お恥ずかしい話ですが、滞納し、分割で支払わせてもらっていました。しかし、それも長く続かず、税金支払いの担当者が変わったタイミングで、赤い紙で書かれた差押え通知書が届いたんです。
生まれて初めて見ましたよ(笑)。

それを見たとき、怖くなってしまって。
「あぁ、これはもうやめたほうがいい」と、不動産投資から手を引こうと思いました。それが、2件目の物件を購入してから約3年たったころでした。

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差押え通知書の封筒

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差し押さえ予告表 (クリックで拡大します)


-そうして3年前に不動産投資から手を引いたのですね。最終的には売却したのだとか。

そうです。4000万円で購入した物件を、4550万円で売却しました。
売却金でローンや滞納していた税金、リフォーム代などを全額返済し、現在は物件売却の消費税を支払っています。
これを払い終われば完済です。

-不動産投資で記憶に残っていることはありますか?

入居者のことはよく覚えていますね。

2軒目の物件を購入した際、こちらは早く空室を埋めたい一心でしたから、比較的どんな方でも入居できるようにしたんです。
それも不動産投資に疲弊した理由の一つです。

とあるカップルなのですが、入居して約1ヵ月で「家賃が払えなくなりました」という連絡があったんです。
契約者は女性だったのですが、その方が勤めていたキャバクラを辞めたらしく、一緒に住んでいた彼氏も無職で支払い能力がなかった。

ただ、こっちも家賃収入が必要ということもあり、「そんなすぐに出て行ってもらっては困る」というのが本音でした。仕事が見つかれば解決するのでは、と考え「仕事を紹介しますよ」と言ったところ、相手もよろこび「ぜひやりたい」と。

そこで、友人が経営している会社で雇ってもらえないか聞いたところ、面接をしてくれることになったんです。

しかし、肝心の面接日になっても来なかったらしく、友人から「来なかったけど……」と連絡がありました。

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入居者に聞くと「行ってません」と。
その後も働き口を見つけられないようだったので、やむなく出て行ってもらいました。

-せっかく働き口を紹介してもらえたのに……。ほかにはどんな方がいましたか?

悩まされたのは、騒音問題ですね。ある日、3階の入居者さんから「下の階の住人がうるさすぎるので、出ていく」と連絡が。その方をなだめ、すぐにマンションへ行ってみると、2階に住むとある入居者が部屋の電気を点滅させ、マンション中に聞こえるほどの爆音で音楽を流していました。
さながらクラブという雰囲気でしたね。

チャイムを押すと中から入居者が出てきたのですが、ペットは不可だと伝えていたにも関わらず犬も一緒に出てきて。
ほかの優良な入居者さんに出て行かれるとかなわないので、その方にはすぐに出て行ってもらいました。

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-変わった入居者が多かったんですね。

それは僕のせいもあったかもしれません。
実は、不動産会社から内密に「この入居者はパスしたほうがいいよ」と言われることがあるんです。でも僕は入居してほしいから、入れてもらっちゃうんですよね。

しかし、不動産屋の予測はだいたい当たるもの。
入居して後々になって問題が出てくるのは、不動産屋が「入居させない方が……」と言っていた人ばかり。ちゃんと言うことを聞いておけばよかったですね(笑)。


-不動産投資に向いていない人、向いている人はどんな人だと思いますか?

向いていない人は、コミュニケーションを取るのが嫌いな人だと思います。
一見、人と話さなくても済むように思われますが、実は入居者と喋る機会って結構あるんです。
しかも、話さないといけない相手は、問題を起こした入居者ということがほとんど。人と話すのが嫌という人は、気分がゆううつになるのではないでしょうか。

向いている人は、ある程度の資金を確保している人だと思います。
資金がないと、大きな物件を所有して回したり、税金の支払いを行ったりするのが難しいのかな、と思いました。

4000万円の物件を購入した僕であれば、最低限1000万円ほどの資金はあらかじめ必要だったかと。その上で、人とのコミュニケーションを臆さない人であれば、不動産投資はいいと思います。

現在は一旦手を引いていますが、僕も機会があればまた不動産投資にチャレンジしてみたいと思っています。
やっぱり、不動産投資をやっていて楽しかったのは事実ですから。
不動産投資で失敗し、そこから学んだことを、次に生かせられれば……と考えています。

不動産投資では、思わぬところで失敗してしまうことも。
まりおさんの話を参考に、不動産投資を始める際は、自分の身の丈にあった物件を購入し、無理のない範囲で運用したいところだ。

mario

プロフィール:まりお

1974年長野県生まれ。
2006年に友人の影響で株を始め、同時に投資生活に関する漫画をブログに書き始める。
株とともにFXでも大負け。
2008年不動産に挑戦するも失敗。

しかし、一方でブログ「僕と投資と樹海の日々」は、累計1千万ページビューを超える人気まんがブログへ。
著書に『めちゃくちゃ売れてるマネー誌ZAiが作った 恐る恐るの不動産投資』(ダイヤモンド社)や『僕と株と樹海の日々』(扶桑社)など