pic062005年に起きた耐震偽装問題をきっかけに、取り沙汰されることの多くなった「欠陥マンション」。満を持して購入した物件が、構造的な欠陥を持ったマンションだった……という事態は誰もが避けたいはずだ。

しかし、どのような構造・建築のマンションが“欠陥”にあたるのか、専門的な知識がなければ判断がつきにくい。

そこで今回は、欠陥住宅や欠陥マンションの検査、鑑定を行う全日本インスペクターズ連合会最高顧問(日本建築検査研究所代表)の岩山健一氏に、欠陥マンションの基礎知識や対処についてお話を伺った。

欠陥マンションを回避することは可能なのか? 

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壁にこのようなヒビが入っている物件は「欠陥」そのもの
(写真提供:岩山健一)

                            

誰もが欠陥マンションなどには関わりたくないのが本音。そういった物件に自分が当たるのは想像もしたくないが、しかしその危険は至る所に存在しているようだ。

欠陥のある不良物件は決して少なくありません。大手デベロッパーのマンションでも欠陥が見つかったケースは多数あります。特にマンションは、立地と価格が消費者の求める情報であるため、建築的な要素は埋もれる傾向にあります。それが欠陥を生む要因にもなっていますね」(岩山氏)

確かにマンションの情報としては、地名や価格が前面に出てきて、建築的な情報や安全性はこの次となりがちだ。とはいえ、やはり欠陥マンションは回避したいところ。そういった物件を避けるよう、購入前に出来ることはないのだろうか?

 

「一般の方が外から見て、構造的な欠陥を見破ることはまずできません。回避策として、建築士や専門業者がマンション内覧会に同行しチェックするケースも増えていますが、これも確実ではないのが現状。同行チェックをしたマンションでも、あとから欠陥が見つかった例があります」(同)

一番よくないのは、デベロッパーが同行する建築士や業者を紹介したり推薦していたりするケース。そういった関係性では、どこまできちんと見てくれるか怪しいのが現実だという。

欠陥マンションを事前に見破るのはかなり難しそう。購入者にとっては何とも頭の痛い話だが、岩山氏は「欠陥マンションを事前に見破るのは難しいからこそ、大切なのは、購入後にどう対処するか」だと語る。

 

一般の方が『経年劣化』だと思っていることでも、実は構造的な欠陥であるケースが非常に多いんです。しかしそれを『経年劣化』だと思い込んでいるために、大規模修繕用にプールした積立金で直している例が多々見られるんです」(同)

もちろん欠陥があった場合は、デベロッパーや建設会社に対して法的に責任を追及できる。相手が欠陥を認めれば、修繕費用も居住者が出す必要はない。ただし岩山氏によれば、「多くは建設側が非を認めず、紛争に発展してしまう」という。

それでも、経年劣化という言葉を鵜呑みにして積立金を使うよりは、何か不具合があったら構造の欠陥を疑って検査してみることが大切なようだ。

なお、マンションの構造に欠陥がないかを検査する場合、「40~50所帯のマンションで300万円ほどはかかる」という。それでも、経年劣化とごまかされて自分のお金で直すよりははるかに安いし、また検査をする方が長い目で見て安心かもしれない。

経年劣化ではなく、欠陥から生まれる不具合の例

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正しく建築されていれば、写真のようなヒビ(わかりやすくするためにテープを貼っている)が入ったり、タイルの浮きは起こらない。
(写真提供:岩山健一)

                            

何より大切なのは、「経年劣化と欠陥の違いをきちんと見極めることにある」と岩山氏。では、経年劣化ではないマンションの構造的な欠陥とは、いったいどのようなものだろうか。

経年劣化と勘違いされやすいのは、壁のヒビやタイルの浮き。基本的にこれらは経年劣化ではなく、きちんとした建築なら年数に関わらず発生しないものです」

このような現象の原因として考えられるのは、コンクリートの厚さや鉄筋の位置の不備、あるいは、タイル間に入れる伸縮材の簡略化など。それらの欠陥がヒビや浮きを生むという。

さらに細かく説明すると、鉄筋コンクリートの場合、鉄筋を覆うコンクリートの厚さは決まっており、それが薄いと中性化速度が早まるため劣化が進行し、ヒビの発生につながる。

また、タイルの間に入れる伸縮材は、タイルの下のコンクリート躯体にまで届かなければならないが、手を抜いてタイルのみに伸縮材を入れていると、モルタル部分が歪んで浮きにつながるとのことだ。

そういった欠陥があるにもかかわらず、「大規模修繕という形で、積み立てていたお金を使って直していることが多い」(岩山氏)のが現状だ。

 

排水溝周り、壁のチェックポイントは?

そのほか、排水管周りの遮音壁なども手抜きが多い箇所だ。排水管の遮音壁はスラブからスラブまで到達していなければならないが、天井を先に施工するなど、無知な技能者により不適切な手順で施工されることがあるという。

これは明らかな手抜き工事で、「上階の足音や排水の音がうるさい」というのは、実は構造の欠陥から来ているかもしれない。

水漏れも基本的には欠陥ですね。きちんとした建築で、コンクリートが密実に打たれていれば、たとえば上の階で洗濯機が溢れても下の階に水は落ちないはず。水が漏れるのは構造的に問題があるか、あるいはどこかに貫通のヒビ割れが出来ている可能性が高いです」

先述のように、ヒビ割れは欠陥と考えられるので、水が漏れることは異常な事態だといえる。このような場合は、専門家を呼んでヒビのある箇所をチェックし、貫通がないかを確認。ある場合はそれを塞ぐなどの対処をすることになるという。

「これらの欠陥は、専門家が内部にまで立ち入らないと分からないことなので、事前に見つけるのは困難。ただ、こういったケースが経年劣化ではなく欠陥によるものだと知っておくだけでも、その後の対応は変わってくるはずです」

経年劣化と思っていたものでも、本当にそれが欠陥ではないのか、これらのケースを思い出しながらきちんと追及することが必要といえそうだ。

 

一方で、経年劣化として起こり得ることには何があるのか。

「経年劣化として挙げられるのは、コンクリートの中性化、鉄のサビやタイル・塗装の退色・変色、あるいは摩耗ですね。それ以外の変形やヒビが入るという現象については、まず欠陥を疑った方がよいのではないでしょうか」

経年劣化の事象であれば、基本的に修繕する必要はないという。きれいにしたいなら別だが、たとえ経年劣化を放っておいても、住環境に影響を与えることはないようだ。一方で、先に挙げた欠陥については、修繕しなければ「水漏れ」や「騒音」といった住環境の悪化につながってしまう。

欠陥マンションを事前に回避するのは簡単ではないのが実情。だからこそ、そういった物件に出合った場合、きちんと気付いて対処することが大切といえる。すでに物件を持っている人も、これから購入を考える人も心に留めておいた方が良いだろう。

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