pic03誰にも看取られずに最期を迎える「孤独死」。社会問題化している孤独死は高齢者の一人住まいに起こりうる事象だと思われがちだが、最近では晩婚化や熟年離婚などによるライフスタイルの変化で“おひとりさま”が増えていることから、40~50代の孤独死も珍しくない。

東京都福祉保健局・東京都監察医務院の「平成25年東京都23区における孤独死統計」によると、女性は85歳以上、男性は65~69歳が最も多く孤独死している。また、女性は59歳までほぼ横ばいなのに対し、男性は40歳から急激に増加している。つまり、死とは無縁と思っているアラフィフ世代も突発的な要因で死亡するケースもあるということだ。

不動産オーナーにとって避けては通れない問題である居住者の「孤独死」リスクにどう備えればいいのだろうか。また、実際に起きてしまったときにどう対処するべきか、どれほどの損失を被るのか、事後の募集への影響はどの程度あるのか……。実際に保有物件で孤独死された経験のある大家や、孤独死につて詳しい行政書士、不動産仲介業者に話を聞いた。

孤独死の具体的な損害をご存知ですか?

第八行政書士事務所代表・谷茂氏によると、孤独死では以下の被害が懸念されるという。

1.変死案件となり、警察による現場検証が行われることによる風評被害が出る恐れがある

2.悪臭(死臭)や害虫(ハエ、ウジ)などが隣室や階下の住人の退去に繋がる場合がある(=家賃収入の被害)

3.相続人や連帯保証人がいない場合、残置物の撤去費用や原状回復費用、消毒、消臭、現場供養の費用などが大家の負担となる場合がある 

4.孤独死の遺体の状況によっては、自殺の場合のように告知義務についても考慮する必要がある 

では具体的にどのような対策をとるべきなのか、次のように述べている。

「新聞が溜まっている、集合ポストからチラシが溢れている、夜中でも電気がつきっぱなし……。これらの異常を近所の方が気づき、報告してもらえるように物件の掲示板などに、それ専用の案内と連絡先を載せておき、住人同士で見守りする体制を作っておくのが大事です」

 もし、起きてしまったらどうするべきかについて、次のように語ってくれた。

「多くの遺族は、大家側から強く非難されたり、賠償問題をちらつかされたりすると、『相続放棄』の手段を選択してしまう。そうなると連帯保証人の有無にもよるが、最悪の場合は項目3で述べた負担に加え、空室期間の家賃損失など全て大家が被ることになります。事故が起きた際は冷静に話し合う姿勢を保ち、遺族から可能な限りの協力と費用の捻出をお願いするのが最善です」

 自分の所有する物件で孤独死が発生すると誰しも動揺するもの。だが、パニックに陥らず落ち着いて遺族と話し合うことが大事なようだ。

亡くなることは自然なこと、まずは早めに見つけることが肝心 

では、実際に孤独死が起きた場合、大家たちはどのような対応を取ったのだろうか。自身の保有物件で居住者の孤独死を5回経験している大家Sさん(男性・42歳)の意見を紹介する。

 「大家は“人が生きて死ぬ場所”を提供しているので、亡くなることは仕方がない。肝心なのは、早めに遺体を見つけること。自分の保有物件は財産なので、遺体の腐敗が進んで部屋に損傷が出る前に、死後1~2日の自然死の状態で発見したいですね」

Sさんが所有する物件は、1部屋3~4万円台で貸し出していることから、高齢者や生活保護の一人住まいが多いという。入居している高齢者は病院通いやヘルパーの訪問などがあるため、部屋で亡くなることは少ないそうだ。むしろ50~60代の無職の人こそ、体の心配をしていないことにより突然死する場合があると話す。さらに社会との接点が少ないため発見に時間がかかるのだという。

過去に孤独死が起きた際、Sさんは自宅から保有物件まで30分圏内という近さから、事後の対応を迅速に行った。基本的に「業者に頼まずにできる限りのことは自分で処理する」。そのため、部屋のクリーニングなどにかかる費用は2~3万円ほどで済んだそうだ。部屋の大幅な修復が必要な場合は、火災保険の「汚損破損特約」で改装費がまかなえたという。なお、次の入居者には家賃を3~4割値引いて貸し出すそうだ。この価格帯もあって、入居者は割と早く見つかるという。

また「外国人居住者の場合は事故物件をあまり気にしない」と話してくれた。近所の人による風評被害も全くないわけではないが、戸建てならともかくわざわざ1ルーム住まいの人に「あなたが住んでいるアパートで人が亡くなっている」とは言いに来ない。人の入れ替えも多いため、あまり悪い影響はないという。とにかく安く住みたい人にとっての需要はあるようだ。

住居の提供と介護サービスは別の事業者が担うべき!? 多重のセーフティーネットが大切

ただし、大家が入居者への声掛けや様子見などの行動を取ったとしても、事故死を完全に防ぐことは難しいという意見もある。
そう語るのは所有物件で2件の孤独死が起きたというKさん(女性・41歳)だ。

「私は我々のような家主や賃貸管理業者が、同時に高齢居住者の介護・福祉を担うことには否定的です。一見ワンストップサービスで便利なように見えますが、住宅サービスと保健・福祉は、互いに別の事業者が担うことで多重のセーフティネットを作ることになると思うんです」

なお、Kさんの物件で起きた孤独死は、一人は40代、一人は50代だった。比較的若くしても起きてしまうのだ。

「もし防げず発見時に遺体が腐敗していた場合、最低でも特殊清掃と一部屋全ての床や壁の貼り替えは必要になります。1ルームで40万円、ファミリー物件で60万円ほどはかかる計算です」と話す。普通賃借に出さず、やむなくマンスリー契約の部屋に変更したケースもあったのだとか。

未然に防ぐために高齢者だけでなく40代の居住者にも警戒するとなると、金銭面だけでなく精神面にも大きな負担がかかることがわかる。

未然に防ぐには「声がけ」をし、投資対象を絞り込むこと 

他の大家は孤独死を防ぐためにどうしているのだろうか。

「ターゲットを定めることが必要だと考えています。例えば、私が所有する50戸は全てファミリータイプ。入居も、法人による転勤(=単身赴任)以外、全戸家族が入居しています。つまり、そのターゲット層では“孤独死のリスクは少ない”といえるんです」(男性・55歳)

古い物件を購入した場合、ある程度のリフォームをして低家賃で貸し出すことが多いが、結果的に高齢者や生活保護者の単身者が入居することになり、孤独死のリスクは高くなる。そもそも物件選びが孤独死リスクを回避できるかどうかの分かれ目でもあるのかもしれない。

では、低賃金・単身者層を狙う大家がどのような対策を取るべきなのかと言えば、それは“声掛け”だという。ただし、物件と自宅が遠い “遠隔地大家”には難しい。管理会社もそこまでのサービスは提供しないのが現状だ。

 「警備会社などの活用により“24時間以上動きが無い場合、警備に連絡が入るようにする”というのもありだと思うが、もともとリスクの高い物件は低家賃なので警備サービスを導入するのは経営的に無理がある」と、対策とその現状についての難しさを語った。

不動産会社も事故物件は敬遠、保証会社加入は必須

孤独死が起きると大家だけでなく、不動産会社までもが一大事だ。不動産仲介業に勤めるTさん(男性・36歳)は未然の対策として次のように述べている。

入居者募集時に年齢制限や保証会社を必須としている所が多いですね。現時点では65歳以上の方はなかなか受け入れない。それでも40代、50代になると判断がつかず、保証会社を使うことによりリスク回避を行っている状態です」

実際に孤独死によって事故物件となったケースを見てきた彼によると、クリーニング以外に各大家が取った対応は次のようなものがあったという。

1. 建物自体を建て替えた
2. 孤独死の起きた部屋のフルリフォームを行い、賃料を2万円減額で募集した
3. 建物を壊して駐車場にした

上記の対応における金額は計り知れない。「クリーニングだけで済むようにするには、直ちに発見することが最も大切」と話す。

孤独死が起きてしまった際、大家自ら後処理を行うことはコスト削減にはなるが体力的・精神的にかなり厳しい。まずは孤独死を未然に防ぐことから始め、もし起きてしまった場合は早急に対処することが何よりも大切なようだ。

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