賃貸物件において、住人の恋愛トラブルがその物件全体に大きな影響を及ぼすこともある。そして原因が恋愛であるからこそ、その対処も難しくなるようだ。
そこで、アパートやマンションを所有するオーナーや管理会社に取材し、恋愛が引き起こした賃貸トラブルについて伺った。
カギ交換の怠慢が、思わぬハプニングに……
東京都八王子市にある2階建てのアパート。全8部屋のこの物件で、警察を巻き込んだ思わぬトラブルが発生した。そのアパートのオーナーが経緯を語る。
「2階の部屋に引っ越してきたTさん(男性)。ある日帰宅すると、『見知らぬ男性が部屋の中にいた』とのこと。Tさんは泥棒だと思い、ただちに警察に連絡。ただ、部屋に入っていた男性は逃げようとせず、むしろ困惑していたようです。警察が来て事情を聞くと、思わぬ事実が発覚しました」
部屋に侵入した男性は泥棒ではない。そしてなぜか、彼はTさんの部屋の合いカギを所有していた。警察が話を聞くと「前の彼女がここに住んでいたのですが、連絡が取れず。心配になり、返し忘れていた合いカギで入ったのですが……」と男性は答えた。
「侵入した男性の言う“前の彼女”は、Tさんの隣室に4ヵ月前まで住んでいた女性。そしてその女性が退室し、ほぼ同時にTさんの部屋の前の住人も引っ越したため、管理会社はなんと隣室のカギ同士を交換したようなんです」
通常、退室のあった部屋は防犯のためカギの取り換えが行なわれる。その場合は当然ながらまったく新しいカギを用意するのだが、この管理会社は経費削減のため、同じアパート内のしかも隣同士でカギを取り替えた。そしてTさんはその部屋に引っ越してきた。
「侵入した男性は、まず本来の元彼女の部屋に行って合いカギを入れたのですが、ささりません。彼は自分の記憶違いかと思い、隣の部屋にカギを差したようです。するとドアが開いたので、そのまま入ったとのこと。この件を機に、私は管理会社を変更しました」
事件の引き金となったのは、前の彼女が合いカギを回収し忘れて退室したこと。そして、男が彼女を心配して部屋に入ったことだ。なお、彼女が引っ越したことは、その男に伝わっていない。
そして最大の問題は、管理会社の「カギ交換」。ひとつの怠慢が関係のない入居者に迷惑をかけ、そしてアパート自体の信頼を失墜させた。恋愛と管理会社が生んだ危険な賃貸トラブルといえる。
真っ昼間に裸で寝そべる男性2人……
東京都の郊外にあるマンションへ家族で引っ越したSさん。小学生の子どもを2人持つ専業主婦だった。半年ほど経ったころに、同マンションの管理会社に連絡が入った。
「ちょうど向かいのマンションに男性が2人で入居したようなのですが、昼間になると、窓を開けた状態で寝ているようなのです。しかも上半身裸で、2人寄り添って。Sさんは『苦情ではないのですが……』と相談してきましたね」
Sさんの向かいに入った男性2人はおそらく同性愛者だった。同性愛に批判的ではないSさんだが、「男性であれ女性であれ、恋人同士と思われる二人が裸で寝ている姿を見るのは何とも気まずい」という理由から連絡したそうだ。最初は「自宅内でしていることなのでこちらがとやかく言うのはお門違い」と見て見ぬふりをしていたそうだが、あまりに頻度が多い上見ないようにしていても目に入ってしまうため、たまらず管理会社に相談したという。
「私たちも予想外の相談にびっくりしましたが、向かいのマンションはたまたま旧知の管理会社が見ている物件だったので助かりました。その管理会社に事情を説明して、対応を取ってもらいましたね」
男性2人は、向かいのマンションのSさんに見えていると気付いていなかったらしく、むしろ恥ずかしい表情を浮かべていたようだ。そしてそれ以後、同様のケースは起きなくなったという。
この声はDVや危険ドラッグかもしれない?
東京都の学生街にたたずむマンション。住人のほとんどが大学生というこの物件でも恋愛絡みのトラブルが起きた。管理会社の方が苦笑しながら、事の仔細を説明してくれた。
「大学3年生のM君が住んでいる部屋に、彼女がよく来ていました。それはいいのですが、夜になると物凄い声でわめくようで……。要は、エッチの最中の声が大きすぎたんですね。大きいだけならいいのですが、あまりにその声は狂気的でした」
M君がちょうど4年生になったとき、隣の部屋の住人が入れ換わった。すると、そこで問題が起きた。新しく入った隣人が、その声に驚いて管理会社に電話してきたのである。
「あまりにすごい声なので、DVなのではないかと……。もしくはベランダに鉢が置かれているのを見て、危険ドラッグの使用まで疑っていましたね。他の住人からもこの問題は何度か聞いていたので、きちんと対策を取ろうと思いました」
管理会社はマンションの住人全員に書類を配布。大声が聞こえて住人が迷惑している旨と、これ以上エスカレートすると事件を疑って警察を呼びかねないことを記載した。
「それ以来、M君の部屋に彼女が泊まることは少なくなりました。狂気的な声も聞こえなくなったようです。こういったエッチの声は、ただうるさいというだけでなく、誤解を招くこともあるので注意したいですね」
男女の情事により発せられる声とはいえ、雰囲気によっては事件を疑ってしまう場合もある。そしてこのような問題は、どの物件でも起こりかねない。オーナーや管理会社にとって、きわめて身近な問題だろう。
恋愛が引き起こす賃貸トラブルの数々。事前に取れる対策は限られているが、契約時に注意事項を設けるなどして、出来得る限りの対策を取ることが必要だ。
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