pic06さまざまな事情から差し押さえられた物件。それらは「不動産競売」として購入することができる。その競売物件ばかりを狙い、不動産投資を行う投資家がいる。これまで購入した20軒の物件のうち、18軒を競売で購入し、現在24%の利回りをキープしている竹内かなとさんに、投資に向く競売物件の見つけ方について聞いた。

最初に購入した競売物件は「失敗」?

竹内かなとさんは、大学在学中に仲間と2人でヤフオクを使って車やバイクのパーツ販売を行い、6年間で2億円を稼いだ経歴を持つ。その軍資金を元手に22歳で不動産投資を開始した。

「もともと、大学在学中から『自分は就職に向いていない』と思っていました。会社で働くことに馴染めそうになかったことから、就職活動をする気持ちも起きなくて。会社で働く以外の暮らし方を模索する中で、不動産投資に出会いました。

自分一人では資金を貯めるまでに時間がかかると判断し、仲の良かった同級生を誘うことに。元手がないので、まずは2人の共通の趣味だった車やバイクのパーツを購入し、ヤフオクへ出品しました。その結果、3年間で2億円近い売り上げが立ち、それを元手に不動産投資を始めたんです」

ヤフオクとはヤフーが提供するネットオークションサービス。オークション形式のため、落札で値段が吊り上り、想像以上の利益になることもある。そのヤフオクで貯めた資金を手にした竹内さんが目をつけたのは、競売物件だった。

「中古や新築物件と比べ、安いのが魅力でした。最初に購入したのは、開始価格が140万円という競売物件。築21年、4DKの一軒家というスペックです。ほかに入札者が少なく、270万円で購入できました」 しかし、落札した部屋の中に足を踏み入れたとたん、2人の顔は曇った。

「隣の家と壁を共有しているタイプの一軒家だったのですが、壁が薄すぎて隣家の生活音が筒抜け。また、DKタイプなので居間が極端に小さく、くつろげるスペースがなかったんです。極め付けは洗濯機置き場が1階にも関わらず干場は3階という生活動線の悪さでした」

1軒目の物件。壁を隣家と共有しており、立て直しは不可能だった

1軒目の物件。壁を隣家と共有しており、立て直しは不可能だった

「失敗」の二文字が頭をよぎりそうになったものの、竹内さんらは自ら内装に手を加えた。古くなっていた床にホームセンターで購入したクッションフロアを入れた。DKの壁紙は業者に張替え依頼し、計6万円の簡単な修繕だったが、なんとその結果、購入から2ヵ月後に370万円で売れたという。

「購入した方は他の不動産投資家でした。自分ではこの物件を賃貸で回せる自信がなかったので、ほっとしました。売っておいて何ですが、建て替えもできないので購入した方は大変だったかもしれないです」

実はこの物件、売りに出す前に一度不動産屋に見てもらったという。そのときの不動産屋は「正直賃貸では難しい。破格な家賃設定にしない限り、借り手は見つからないと思う」とお手上げ状態だったそうだ。

最初の物件は2ヵ月というスピードで転売したが、普段は購入してすぐに販売することはないという。販売するのは「賃貸では利益を出せない」「買ってみたものの運営する自信がない」と思った物件だけだそうだ。現在、「不動産の売り時」と言われているが「転売向きでない物件が多いので、そもそも売ることはあまり視野に入れていない」と竹内さん。「基本的に賃貸して、運営の自信がなくなったときに売り出すつもり」だそうだ。

1軒目で成功をおさめた竹内さんは、現在までに200回以上の物件で入札を行った。その結果、20軒の物件を落札。落札できたのは1割未満だが「開始価格が安いと『高くなるだろうなあ』と思いながらも宝くじを買うような気持ちで入札する」とのこと。周囲の落札額に乗せられて高額で入札しないことも競売物件の購入では重要と言える。

また、何度も入札を繰り返しているうちに、「この物件は、激安な価格では落札できない」というカンが働くようになるそうだ。「競売での相場を覚えて、いい塩梅の金額で入札できるようになると無駄撃ちが減って効率が良くなる」と話してくれた。

元所有者がそのまま住み続ける物件 利回りは33.3%!

現在、竹内さんの家賃収入は月82万円。同級生と2人で運営しているので、折半しても41万円が入る計算となる。

これまで購入した中で最も利回りが良かったのは、5軒目に購入した競売物件だ。

「築25年、3LDKの一軒家という物件で、約252万円で落札しました。この物件は少し特殊で、元所有者にそのまま貸し出しているのです」

5軒目に購入した物件

利回りは33.3%! 5軒目に購入した物件

競売に出ていた物件を購入した竹内さん。通常、この地点で物件を所有していた元入居者は退去しなければいけないが、竹内さんは「このまま賃貸として住み続けないか」と持ちかけたという。

元所有者にとっても慣れ親しんだ家に住み続けられるなら願ってもない話。また、競売にかけるほどお金に困っていることから、引っ越し資金や新しい物件にかかる初期費用をねん出するのも大変だ。家賃設定額は7万円。「このプランを提案したところ、相手も『いいんですか!?』と驚いていましたね」。

竹内さん側としても、そのまま住み続けてもらえるなら修繕費が一切かからない上、新しい入居者を探す時間や手間もかからずに済む。

「正直、そのまま住んでもらえなかったら、外壁から内装まで手を加えなければならない物件だったんです。こちらもそのまま住んでもらう方がありがたかった」と振り返る。

ただし、メリットばかりではない。差押えが起きた入居者を住ませる場合、金銭面で多少のトラブルが起きることは覚悟した方がいいそうだ。同物件でも、一度家賃の滞納が起きている。しかし、「それも1、2回程度。そもそもこの入居者さんの人となりがしっかりしているので、ずるずると滞納を伸ばすようなタイプではないんです」と話す。

競売に出した人をそのまま住ませる場合は、どんな人なのかを見極める必要性がありそうだ。

もちろん、いい物件ばかりではない。大変だったのは15軒目に購入した物件だ。

「約319万円で購入した、築23年の4LDKの一軒家です。購入後気づいたのですが、家が地盤沈下で傾いていました。さすがに人が住めるような状態じゃなかったので、床が水平になるように修繕を加えることに。

一緒に事業をしている同級生のお父さんがたまたま大工だったので、相談してみると引き受けてもらえることになりました。身内なので金額をふっかけられることもなく、良心的な価格で修繕をしてもらえたので、助かりましたね」

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15軒目に購入した物件。工事前の様子

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地盤沈下で傾いていたため、水平になるよう工事を入れた

思わぬ出費だったが、修繕にかかった費用は床を水平に修正する工事費に10万円、曲がった排水の角度挑戦に数千円がかかっただけだったという。現在この物件は23.7%の利回りをキープしている。