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年があけてすぐにやってくる確定申告。通常、2月16日~3月15日に行うものだが、年をまたぐ前にやっておくべきことがあるのをご存知だろうか。

来年の確定申告を有利に進めるために年内にやっておきたい準備について、大家さん専門税理士・司法書士であり「大家さんのための超簡単!青色申告」(クリエイティブワークステーション出版)の著者である渡邊浩滋さんに話を聞いた。

納税額&税率を把握して賢く経費を使う

――年明けの確定申告で損をしないために、今年中に大家さんがやっておくべき準備を教えてください。

渡邊プロフィール

大家さん専門税理士の渡邊浩滋氏

まずは所得税のお話しから。今年1年で税金がどれくらいかかりそうか試算しましょう。試算することで、税金対策をすべきか、無理に税金対策をする必要がないかが分かります。

例えば、今年の所得が多くなってしまった場合。サラリーマン大家さんなどの兼業大家さんは普段の給与と合算での税率になるので、想定していたよりも所得が高くなり、結果的に高い税率になってしまう場合があります。その場合は設備のバリューアップや修繕を計画し、税金対策を取ることができます。

反対に、所得がそこまで多くなかった場合は無理に修繕をせず翌年に回した方がいいといいうことになります。

例として、毎年33%の税率だった大家のAさんがいるとします。Aさんは今年の収入が思っていたより多かった上、1年を通してほとんど経費がかかっておらず、試算したところ税率が40%になりました。

そうなった場合、もし設備投資を検討しているなら今年行った方がお得なのです。 仮にAさんが設備投資に100万円使ったら(全額経費になることを前提)、今年は税率が40%なので、今年使えば40万が税金から差し引かれます。もしその翌年、また33%の税率に戻ったとして、翌年に設備投資を行えば33万円しか税金が差し引かれません。計算してみて例年より税率が高くなりそうだったら、今年使うのがいいですよね。

※所得税の税率は所得の段階に応じて税率が5~40%(平成27年以降5~45%)が適用されます(超過累進税率)

しかし、12月の今から経費を使うのは大変です。そんなときは少額減価償却資産を検討してみるのも良いのではないでしょうか。 少額減価償却資産とは、青色申告者に限り、固定資産の取得価額が30万円未満のものを経費処理できるという制度。

例えば600万円の新車を買った場合、減価償却の耐用年数が6年となるため1年間で100万円の減価償却費となります。12月に購入すると1月分しか事業で使用していないとなるため、経費として入れられるのは約8万3千円(年間100万円÷12月)となり、かなり少なくなってしまいます。

しかし、30万円未満の固定資産を購入し、少額減価償却資産の制度を使えばその年の経費として年内に押しこめるのです。30万円未満ですので例えば ・防犯カメラ ・宅配ボックス ・エアコン ・仕事用パソコン なども価格によっては該当するのではないでしょうか。

しかも、1つあたり30万円未満であれば、総額300万円(年間)までなら全て少額減価償却資産にできるのです。

税率が高くなれば「貯蓄を経費として落とす」のも一つの手?

――税率が高くなってしまい、経費をもっと使いたい場合。賢い使い方はありますか?

むやみに使うのは良くないので、貯蓄を経費として落とすのはどうでしょうか。

まず、経営セーフティー共済(中小企業倒産防止共済制度)
対象は法人化している大家さんです。経営セーフティー共済は掛け金をかける共済金。積立型で解約するときに戻ってきます。この共済の月間積立上限は20万円。また、年間240万円をまとめて年払いで支払える上、それを経費として処理できるのです。積み立て上限は800万円まででそれ以上は払えないのですが、受け取りの時期は自分で選べます。解約するときは利益になってしまうので注意が必要ですが、おおきな修繕を行うときにそれをぶつけることもできます。

別の方法で、小規模企業共済というものもあります。個人事業主を対象にしているものなので、事業的規模(5棟10室以上)の大家さんか、法人の役員であれば入れます。なお、サラリーマン大家さんは入れません。この共済は個人事業主のための退職金制度。サラリーマン大家さんは会社の退職金があるので加入できないのです。ただしサラリーマン大家さんでも大家業を法人化していて、自分の会社の役員となっていれば可能です。

共済金の受け取り事由によっては退職金としてもらえるので、あまり課税されないのもポイントの一つ。これも掛金の1年間の前払いができ、全てを所得控除として処理できます。小規模企業共済の月間積立上限は7万円、年間上限84万円。12月になって加入しても、年払いが可能なので、最大84万円を控除にできるのです。

こちらも同じく積立ですが、受け取りの時期によってパーセンテージが違います。1年以上7年未満かけていれば80%が戻ってき、20年以上かけていると100%以上戻ってきます。節税分を考えると、結果的に100%以上の効果があります。また、業績が悪くなるとかけ止めすることも可能です。500円刻みで金額調整も可能なので、確実にお得と言えます。

消費税のことも年内に考えるべし!

―その他、年内にやっておくべきことを教えてください。

消費税の課税事業者に該当する方は、消費税のことも年内に考えましょう。

自分が課税事業者になるかどうかは、2年前の、消費税がかかる収入(課税売上)が1000万円を超えるかどうか。住宅は非課税なので、住宅の家賃がいくらあっても消費税の課税事業者になることはないのですが、事務所・店舗の家賃や駐車場の収入は課税売上です。その収入が1年間で1000万円を超えるかどうかがボーダーラインとなります。

また、物件を売却した場合も課税売上になる場合があります。売却した土地は非課税ですが、建物は課税売上になります。この場合、住宅用の物件であっても課税売上になるのです。 住宅用アパートを売った場合、建物の売却収入が1000万円を超えることはざらにあるはず。その場合、2年後に課税事業者になります。

そういう方は消費税を原則課税と簡易課税のどちらでやるのかを選択しなければいけません。なお、27年度分は26年の12月31日までに決めないといけません。どちらが良いかは人によって異なるので、あらかじめ自分がどちらを選択すべきかを調査し、お得な方を選択しておきましょう。

原則課税は、もらった消費税から支払った消費税を引き、その差額を納税するものです。

もう一方は簡易課税ですが、一般的に大家さんはこちらの方がお得とされています。簡易課税は、払った消費税は関係ないというもの。もらった消費税のうち50パーセント(※)を支払った消費税とみなして納税するというものです。
※個人の場合、平成28年より、不動産業は40%と改正されました。

例えば建物を売却し、そこでもらった消費税が100万円だった場合。もし今年、経費にかかった消費税が20万円だったら、原則課税なら80万円を払うことになります。これを簡易課税にすると、100万円の半分である50万円を支払った消費税とみなしてくれるのです。すると、支払いは50万円で済む。

なぜこんな不思議な制度があるかというと、売上がそこまでない場合(2年前の課税売上が5000万円未満)、細かい経費を一つずつ計算するのは事業主として大変だからという理由からです。かかった経費を全部計算するなんて細かくて面倒ですよね。その煩雑さから大家さんを救済するために、50パーセントを支払った消費税とみなすとしてくれるのです。

一般的な大家さんであれば、年間かかる消費税は少額であることが多いはず。なので、一般的に簡易課税の方がお得ではあります。

しかし気を付けないといけないのが、支払った消費税が意外に高かった場合。店舗の大きな設備投資や内装の大規模リニューアルを行った年は消費税の額が多くなっています。例えば消費税120万円払ったら、支払うどころか、受け取った100万円との消費税との差額20万円が還付されるんです。簡易課税にすると、かなり損ですよね。

ちなみに、27年度に店舗の大きな設備投資や内装の大規模リニューアルを行い消費税120万円を使うとなった場合、今年12月末までに原則課税か簡易課税かを決めないといけません。想定してなかったけど設備投資が必要になってしまった場合でも、一度決めてしまうと変えられません。

なお、変更手続きしなかった場合は自動的に前年に選んでいた課税方式になります。もし前年が簡易課税だと自動的に翌年も簡易課税になってしまうので、前年の課税方式を引き継ぐということを忘れず手続きを行ってくださいね。

プロフィール:渡邊浩滋(わたなべ こうじ)

税理士・司法書士 渡邊浩滋総合事務所
危機的状況にあった実家のアパート経営を引き継ぎ、建て直しに成功したアパートオーナーでもある。その経験を活かし大家さん専門の税理士・司法書士として活動。著書に『大家さんのための超簡単!青色申告』(クリエイティブワークステーション出版)『Q&A固定資産税は見直せる』(清文社)『行動する大家さんが本気で語る 選ばれる不動産屋さん選ばれない不動産屋さん』(清文社)などがある。