不測の事態で、資産価値がさがってしまう「事故物件」。広義では、売却理由が金融事故であった場合や、シロアリ、雨漏りなどの欠陥住宅を含めた言葉でもある。が、ここでは俗に言う「事故物件」、つまり過去に自殺や他殺、火災による死亡事故、建設中の死亡事故など、次に住む人が精神的苦痛を伴うと思われる経歴をもつ「心理的瑕疵物件」と同意義だと定義しよう。
縁起が悪い、何か気持ち悪いなどの理由であまり好んで住みたくはないと思われがちだが、様々な理由により「事故物件」と知っても賃貸契約を結んだり、引越しを考えなかったりする人も存在する。しかし、なぜそんな〝いわく付きの物件〟で暮らさなくてはならないのだろうか? 実際に現在事故物件で暮らしている2名に登場いただき、詳しい話しをうかがった。
22歳の女子大生の場合
事故物件に住み始めて1年の尾田美佳さん(仮名)。
彼女は家賃が安いことを理由に事故物件に住んでいるそうだ。
「それまで別のマンションに彼氏と一緒に住んでいたのですが、別れてしまい急遽家を探していました。前に住んでいた人が孤独死をしたと、内見の際に不動産屋さんが教えてくれました。気にならないわけではないけれど、家賃は3割近く安いし、なるべく早めに家を見つけたかったので、いいかなと」
下北沢駅から徒歩10分、世田谷区北沢の1K19平米のアパートで、家賃はなんと5万円だそう。同じ条件の部屋だと相場は7、8万円なので、確かに安い。とはいえ女性の一人暮らし。怖くはなかったのだろうか?
「もしお化けがでたら、引っ越そうとは思ってました。どちらにせよ就職先が決まっていて、春には引っ越す予定ですし、少しの間なら我慢できるかなと。実際に引っ越して最初の夜は、荷物の整理に忙しくて正直忘れていました。3日くらいたった夜に思い出して、ちょっと怖くなりました。それも1ヶ月たてば慣れましたね」
尾田さんいわく、事故物件でも霊が現れず、期間限定であれば問題ないとのこと。ただ、たまに遊びに来る友達や家族には、心配をかけるのも嫌なので内緒にしているそうだ。
36歳の男性フリーターの場合
新宿でバーテンダーをしている石田健介さん(仮名)は、住んだ当初は自分の家が事故物件だという事実をしらなかったそうだ。
「前の家が更新時期だったので、バイト先が近い西新宿に引っ越してきました。5年前から住んでいますが、自分の家が事故物件だと知ったのは2年近く経ってから。事故物件が掲載されているサイト『大島てる』で遊び半分で調べてみたら、発覚したんです。その時はまさか、と驚きましたね」
事故物件だということを不動産会社が伝えなかったことで訴えられる事例もある。しかし引っ越しは考えなかったのだろうか?
「すでに2年も住んでいて、何も起こらなかったですし、気にしないようにしています。事故物件になった理由も、明確には分からなくて。ぼくが引っ越してくるずっと前に人が亡くなったのだとは思いますが……。1K22平米で7万と、立地の割に家賃が安いのも、今思えばそのおかげなのかもしれません」
確かに、西新宿だと1Kで8万以上するのが相場であるので、少し安くなっているようだ。
「とはいえ、事前に教えてほしかったですけどね」。と石田さんは苦笑する。 ちなみに“事故”が起こったことを、その後の何人目の入居者まで伝えるかなどは、法律で明文化はされていない。
家賃が相場より安くなっていれば、何かしら理由があるはず。心理的瑕疵だけでなく、交通の便が悪い、大きい道路が近くてうるさいなど、様々だ。しかし、それは大衆に向けての理由であるので、借りて住む当人には全く問題がないことかもしれない。事故物件でも気にせずに住む人が一定数いるというのは確かのようだ。
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