不動産オーナーにとって「確定申告」は大きな関心ごとのひとつ。平成26年1月1日からすべての大家さんに記帳義務が課せられるようになったこともあり、不安に感じている人もいるかもしれない。ただ、ポイントをしっかり押さえておけば必要以上に構えることはない。スムーズに確定申告を行うにはどうしたらいいのか、大家さん専門税理士・司法書士の渡邊浩滋さんに話を聞いた。
帳簿をつける際のポイントは意外とシンプル
――確定申告を行う際のひとつのハードルが「帳簿をつける」ということ。記帳のコツを教えてください。

大家さん専門税理士の渡邊浩滋氏
ひとつの通帳で資金の出入りを一元管理できる体制にしておくことです。収入も経費も、「この通帳を見れば流れがすべてわかる」という状況にしておきます。通帳が帳簿代わりになりますので記帳がグンと楽になりますよ。流れが一目でわかるというのはとても大切なことです。
現在白色申告を行っている方は、これを機に青色申告にしてみてはいかがでしょうか。事業的規模(おおむね5棟10室以上)であれば、65万円の青色申告特別控除や青色事業専従者給与の利用ができるようになるため、税金面でも有利になります。
適用しようとする年の3月15日までに税務署へ届け出ることで変更することができます。平成27年度から適用しようとする場合には、平成27年3月16日までに届け出が必要です。
収入・経費項目の間違いや漏れに注意
――記帳を行う中で見落としがちな項目や注意しておきたいポイントを教えてください。
何が収入で何が経費なのか。しっかり分けて管理することが大切です。
たとえば「収入」。税務署がしっかりチェックしてくる項目のひとつなのですが、案外意識できておらず漏れやすいようです。家賃の滞納分は「未収金」として計上しないといけないのですが、12ヵ月分しっかり入金されているかどうかという確認ができていないケースが多々あります。
また、不動産の経費に関する誤りも多発しています。物件購入時の仲介手数料や固定資産税精算金は経費ではなく、土地や建物の資産に計上します。登録免許税や不動産所得税については、資産ではなく経費に計上します。法人の場合は資産計上するか経費とするか選ぶことができますが個人は経費計上しかできません。
さらに、礼金や更新料も漏れやすい傾向にあります。これらは満額計上した上で不動産会社の手数料などを経費として差し引く必要があるものです。年をまたぐものは特に注意して取り組みましょう。
セミナー参加費は? 打ち合わせ時の食事代は? どこまで経費に計上できるか?
――おそらく多くの方々が「この支出は経費としてみなされるのだろうか」という疑問を一度は持ったことがあると思うのですが、具体的な基準のようなものはあるのでしょうか?
不動産オーナーの活動経費として根拠があるものなら認められます。念のため、具体的な記録を残しておきましょう。セミナーに参加したのなら資料を保存しておく、食事会に参加したのなら誰とどんな趣旨の元で集まったのかメモしておく。これだけでもだいぶ違うと思いますよ。
ちなみに、税理士に管理を任せきりにしていると、本来経費に計上できる支出が計上されていなかったり、そもそも耐用年数などを勘違いされてしまったりすることもあります。自分自身でもある程度見極められるよう、最低限の知識を持っておくことをオススメします。
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