アパート経営が破綻する理由とは?
実際ローンが払えなくなるのは、一体、どんな人なのだろうか。
「最悪なケースでいうと、バブル時に買ってしまった例です。高く取れると想定した賃料が、バブル崩壊で価格が落ちて賃料も落ちます。
しかし高額な物件でローン返済が大きいですから、入って来る下げた家賃収入では返済がまかなえないのです。サラリーマン投資家の場合は、しばらくは自分の収入や貯金を切り崩しながら補填していきますが、いずれ尽きてしまう。結局はローンが返せなくて破綻します。これがバブル崩壊の残り物としてありました。
景気が悪くなったときの賃料収入のバランスが悪くなって破綻するケースはリーマンショック以降にも増えました」
サラリーマン投資家に限らず、破綻する人の8~9割を占めているのは「簡単に儲かる」と信じて、何も知識もなしに買う人たち。不動産セミナーに参加して何も考えず買ってしまう人。あとはカリスマ大家さんたちのセミナーに参加して「俺も買ったらカリスマ大家の仲間入りだ!」とリスクを勉強せずに、良いことだけを鵜呑みにしてしまう人。
相談者の共通項をあげれば、投資家や大家さんとして知識や意識を持っている人が非常に少ないということ。
「親の代から賃貸経営をしている地主さんも同様です。今は所有物件をただ貸していればよかった時代ではありません。人口が減少して競争が激しくなっていく中で、経営者として考えなければいけないのです。
カリスマ大家さんと呼ばれている方たちは、昔の大家さんと違って『店子さんはお客様!』と考えて、いろんなサービスを提供して、経営者として成り立っています。
今でも何も勉強しない昔ながらの地主型大家さんはいます。親からもらった財産で、そのままやっている……そういう人は取引業者も固定されており、すべてを丸投げしているケースが多く、破綻リスクが高いと思われます」
アパートローンが払えなかったらどうなるのか?
いよいよ、本題となる“ローンが払えなくなったらどうなるのか”を解説する。山本さんがいうには、借りる金融機関によって最終的な結末が変わる。
「まず払えなくなると金銭消費貸借契約書が白紙になります。つまり“期限の利益の喪失”をします。 長期借入することによって、月々の返済が少額で抑えられるという利益が借りた側にある。これが“期限の利益”です。 また金融機関は長く貸すことによって、長く金利が得られます。このようにお互いにマッチして、金消契約が成り立っています」
“期限の利益の喪失“は、借りた側に対して一括返済が求められる。公的金融機関と民間金融機関では、このタイミングが変わり、メガバンク・地銀は3ヶ月、信金・JAでは4ヶ月~半年がおおよその目安となる。
「物件を売却して、その代金で残債を一括返済できれば、物件を失うだけで済みます。もし高く売れれば100万円でも200万円でも手に残る可能性がありますが、これは破綻とはいえない。破綻というのは物件を売っても借金が残る状況です」
原則、残債を全額返済しなければ、抵当権は抹消できない。しかし、残っている残債よりも物件の価値が低ければ、抵当権者が認めた売却価格範囲内の返済で、抵当権を抹消できる売買の方法がある。これを“任意売却”という。
「つまり任意売却をするには、”期限の利益の喪失”をしないと身動きできないということ。 仮に延滞1ヶ月程度で売却を希望しても、その時点では残債務を全額返さないと抵当権抹消はできません。
これが、ローンの契約自体が無くなってしまえば、任意売却するしかない。金融機関としても、期限の利益を喪失した方が回収しやすくなるのです。 中には延滞2ヶ月くらいで苦しくて『売ろうと思っている』といえば、小さい声で『あと2ヶ月くらい延滞してください』と言ってくる気の利いた銀行員もいます」
そして、任意売却で売れなかった、もしくは任意売却を拒んで「売りたくない!」となると、最終的に抵当権者の権利である”競売”にかけられることになる。
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