猫付き物件の実態最終_20150213

賃貸マンションやシェアハウスなど物件に猫が付いてくるという「猫付物件」。猫の保護・殺処分0を目的としたNPO法人「東京キャットガーディアン」が企画・運営している。猫付マンションに興味がある大家と、猫を飼いたい入居希望者、猫救済を目的とした保護団体の三者による「飼い主のいない猫の保護ボランティア活動」として行政からも了承を得ている事業だ。

一体「猫付物件」にすることでどんなメリットがあるのか。「猫付物件」の実態について同団体の代表者・山本葉子さんに話を聞いた。

トラブル事例は? 大家にとってのメリット・デメリット

猫付き物件とは、住む物件に猫が付いてくるというもの。入居者は東京キャットガーディアンが所有する猫シェルターにいる猫たちの中から好きな猫を選び、猫と同居することができる。猫シェルターにいる猫はもともと野良猫だった猫などだそうだ。

ペット付き物件ということで、少なからずありそうなトラブル。大家が面倒な思いをすることなどはないのだろうか。

大家さん・賃貸人との苦労やトラブルは聞きません。大家さんは『マンション経営で社会貢献』、賃貸人さんは『猫と住むことで動物レスキュー』をして、それぞれにご満足頂いています」

猫付物件の本質はあくまでも“猫救済”。大家が自分の意思で申し込むため、「猫に物件を傷つけられる」など多少のデメリットも承知の上なのだろう。だから猫によるちょっとしたトラブルがあったとしても、かわいいと思えるのかもしれない。

気になるのが猫を飼った結果発生する修繕などの費用。

「前の住人の退去後『壁紙を張り替える』という一般的な方法であれば、通常以上の修繕費用はかかりません。猫の爪研ぎやフロアへの粗相などが懸念材料かと思いますが、爪とぎを使っており、トイレの失敗の少ない猫は、住宅にほとんど被害を及ぼしません。

ただし、こればかりは住人の飼い方によることも。そこで弊社では猫の相談全般を受けるコールセンター『ねこねこ110番』の運営を行っています。

『柱や壁での爪とぎ』『不妊去勢手術をしておらずスプレー行為が日常的に発生』『多頭飼育による部屋全体への匂いの染み付き』などの不適正な飼育がなされないよう、いい飼い主さんを増やすことが目的です。早期に兆候が分かれば、対応のしようがありますので」

また、入居希望者には適性判断として同団体による面接で審査が行われる。これにより、同団体の考えに賛同した良識のある入居希望者が選ばれるため、飼育放棄などの問題は一切ないそうだ。

「猫の飼育を了解して頂いている大家さんと協定を結んでいるので、苦労・デメリットはありません。賃貸を更新される入居者の方も多いそうで、長く住んでもらえるというメリットを大家さんから大きく評価して頂いています」

猫は環境の変化に弱いため、引っ越しをすることによってストレスを与えかねない。そのため、猫付物件に長く住み続ける入居者が多いそうだ。それにより、空室になることも少ない。これは大家にとって大きなメリットではないだろうか。また、やむなく引っ越しをしなければならなくなった際は、猫の引き取りを希望する入居者がほとんどだという。

どんな大家が申し込むのか

どんな物件を保有している大家が同団体と契約するのか。また、どのようにして猫付物件の大家を募るのだろうか。

「多いのは猫の飼育が出来るアパート、マンション、一戸建等をお持ちの大家さん。私どものホームページを見たり、勉強会に来たりして、ご縁が始まります。今までは特に募っておりませんでしたが、たくさんご連絡を頂きますのと、入居希望者様からのお問い合わせも絶えないので『しっぽ不動産』という“ペットウエルカム物件”のサイトを始めました」

随時勉強会も開催するほか、年中無休の相談窓口(電話)で、どんな小さなことも受け付けているそうだ。

猫付物件を始めるための条件とは

いざ猫付物件を始めようと思っても、その特殊な物件ゆえ、誰にでも始められるものではないのでは、という考えも頭に浮かぶ。広さや立地条件など、何かしらの条件をクリアし、猫を迎える下準備をしなければならないのだろうか。

猫付物件を始めるための条件などは一切ありません。たまに、完全大型犬仕様の物件などがありますが、一般的な物件でも一緒に暮らせます。大家さん側から物件にキャットタワーをつけるなどして猫仕様にリフォームされる場合もありますが、こちら側からそれを強制することは全くないです。長い目で資産価値を考えれば、通常仕様のほうが、勝手が良いですよね」

同団体と同じ志であれば、条件や資格、事前準備は必要ないという。あくまでも“猫救済”がモットーであることは、ここでも変わらない。

「ペット可物件」と「猫付物件」、一番の違いは?

相場の家賃と比較した家賃や敷金の額、入居者の特徴、システムなど、ペット可物件と比べて具体的にどう違うのか、次のように答えてくれた。

家賃や条件は通常のペット可物件と変わりません。猫付物件の猫は自治体の猫(市町村にいた猫)なので、それによる金銭授受や付加価値があってはならないのです」

例えば、敷金や礼金などは通常の物件と同じように1ヵ月程度。家賃も「猫付きだから」と増減させていないそうだ。

「入居希望者さんが『ペット可』としか表記のない物件を頼りに立地等の条件で絞り込み、実際に仲介会社に足を運んでも、『小型犬1頭まで』『猫は駄目』『飼育出来なくはないが要相談』などの実情を目の当たりにすることも。

私どもが聞き及ぶ限り、気持ちよく伴侶動物と住むことが未だに困難です。猫付きマンションをきっかけに私共にお問い合わせや取材が多く来るのは、こうした背景があると思います」

ペットを飼う際には「鳴き声などには気を付ける」など、同じマンションに住むほかの住人への配慮は欠かせない。その心配がないことが、「ペット可物件」と「猫付物件」の一番の違いと言えるだろう。

猫好きだが住環境により飼えない人は大勢いる。需給バランスがあり、かつ社会貢献にもなる猫付物件。猫にとっても、入居者にとっても、保護団体にとっても、そして大家にとっても幸せな形なのではないだろうか。猫付物件に住むと長期間入居してくれる人が多いという点からも、検討してみる価値はありそうだ。

 

取材協力:NPO法人東京キャットガーディアン
運営サイト『しっぽ不動産』http://www.shippo-fudosan.com

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