不動産を購入するのは、ある意味大きなイベントになる。多くの方は詳細な計画をし、物件の購入を行うだろう。
しかし世の中には、計画性が乏しいために不動産投資で失敗してしまったオーナーも少なくない。なかには、やっと購入した物件を売らざるを得なくなったオーナーも存在する。
都内の管理会社に取材し、「無計画だったために、物件を売らざるを得なくなったオーナー」の実例を集めた。
会社を辞めるという判断が早すぎたオーナー
以前から不動産投資に興味のあったSさん。40代を越えサラリーマンとしてそれなりの貯蓄が出来たときに、区分マンションを2部屋購入。東京郊外の物件で、価格はおおよそ1200万円と800万円。築年数はどちらも10年程度だった。投資用に2000万円ほど貯蓄しており、1200万円を現金で、残りをローンで購入した。
Sさんは不動産投資への準備を入念に行っていたため、その後の入居者募集も滞りなく進んだ。2部屋のうち1部屋は1LDKで30代の社会人が契約。もう一部屋は事務所として、あるベンチャー企業が借りた。
Sさんのことを知る管理会社によると、この時点で1ヶ月の家賃収入は40万円ほどになっていたという。不動産投資としては順調な滑り出しだったが、その後、Sさんの取った行動が「軽率だった」という。
「部屋を購入して半年ほどで、本業の会社をやめてしまったんです。『これからは不動産投資でやっていく』といっていましたね。確かにその時点では家賃収入だけで十分生活できましたから気持ちは分かります。でも、結果的には会社をやめるのが早すぎました……」
Sさんが会社をやめてすぐ、事務所として貸していたベンチャー企業がその部屋の契約を打ち切ることを決定。部屋に不満があるわけでなく、人員が減ったためにもう少し狭く賃料の安い別の事務所を探すのだという。
「Sさんもそのときは特に動揺することもなく『また新たな入居者を探せばいい』と言っていました。しかし、そこから半年以上入居者が決まらない事態に。ちょうどそのころ、近隣に新しくオフィスビルが出来たことも影響したようです。Sさんの収入はこちらの部屋が主でしたから、次第に苦しくなりました」
40万円の家賃収入の内、30万円ほどは事務所として貸していた部屋から生まれていた。そのため収入は激減し、Sさんは焦ってしまったという。
「結局Sさんは『事務所用の部屋はもう厳しい』と言って、その物件を手放してしまいました。というより、いったん売って仕切り直したかったんだと思います。売却金額は1000万円以下。単純な売却益を考えても、360万円の損失。不動産を本業にするのが早すぎたといえますね」
Sさんは結局、別の会社に入社し、今は業務の傍らで不動産投資を行っているという。現在所有しているのは最初に買った1部屋のみだ。
副業と本業では、不動産投資の進め方や目的も大きく異なってくる。会社を辞める判断は慎重を期した方が良いだろう。
想定と違う部屋を購入してしまったオーナー
すでに入居者がいる中古物件を「オーナーチェンジ」で購入する場合、部屋の中を見ることができないまま手続きが進む場合もある。30代から不動産投資を始めたIさんも、物件の部屋の中を見ないままオーナー物件を買った。当時の彼を知る管理会社社員が語る。
「1LDKの分譲マンションで、1000万円いかないくらいの物件だったらしいです。築20年ほどでしたが立地条件からしてお得でしたし、その物件の入居者はもう6年近く住んでいる“優良契約者”。そのため、あまり気にせず契約したようです」。Iさんはローンを組み、その物件のオーナーになったそうだ。
しかし、Iさんがオーナーになってすぐ、住んでいた方が30歳となり結婚。物件から退室してしまったという。そこでIさんは初めて部屋の中を見たところ、1番広い奥の部屋は和室だった。「部屋を買う際に仲介業者から『洋室』と聞いていたのですが、和室だったんです」
Iさんは仲介業者の話を疑わず、「洋室で立地もよく、この金額なら」と購入した。それにもかかわらず、そこは和室だった。実はその仲介業者もIさんの契約する1年前にこの物件に携わったばかりで、前担当から「洋室と聞いていた」のだという。
その後、1年ほど募集するがなかなか入居者が見つからず、Iさんは家賃を1万円ほど下げたがそれでも厳しかった。結局Iさんはその物件を、購入時のほぼ半額で売却。ローンを含め、借金200万円が残ったと話していました」
たとえ入居者がいても、出来る限り部屋の中を確認したり、真偽をチェックしたりという機会が必要だろう。中を見ずに契約して「聞いた話と違っていた」ケースは少なくないようだ。このケースでは仲介業者も把握できておらず、結果泣き寝入りとなってしまった。
親から引き継いだものの、自覚が欠如しているオーナー
親の持っていた不動産を、子が然るべきタイミングで譲り受けるケースも多い。子にとっては投資物件をもらえるので悪くない話だが、こういう場合こそ、オーナーの無計画なエピソードは生じやすい。ある管理会社が語る。
「親から譲り受けた場合、オーナーとしての自覚がないまま不動産経営を始めてしまう人がいます。1棟アパートを親から譲り受けたYさんは、当初管理会社との説明にも親同伴で、細かい話をしてもメモさえとりませんでした。すぐに“自覚がない”と分かりましたね」
Yさんの自覚のなさは、その後も随所に現れた。物件の敷金・礼金について「お客様がイヤといえば、敷金も礼金もゼロでいいし、相手の意思に任せます」といった。そして、ちょっとでも部屋に興味を持った人がいれば、家賃をどんどん下げて契約を結んだという。
「初めて一人暮らしをする学生が敷金・礼金ゼロで入ったり、誰でもいいからと契約するために素行の悪い入居者が増えてしまったり……。物件の消耗・汚れは激しくなり、価値は一気に低下しました。クリーニング代などを入居者に請求すればいいのですが、それも弱腰でやらず、私たちも『このままでは厳しい』と思い、管理業務を撤退させてもらうことにしました」
それまでは安定した家賃収入があったが、敷金・礼金をなくしたり家賃を下げたりしたため、物件から得られる収入は月60万円程度から40万円程度へ大きく減っていたという。
その後管理会社が聞いた話によると、Yさんは相続税の支払いを負担に感じたため、すぐ物件を売ってしまったそうだ。親から譲り受けるにも、計画性を持たないとたちまち失敗してしまう例だ。
大きな金額の動く不動産投資だが、それでも無計画に行ってしまうオーナーは少なくない。オーナーになるには、言わずもがな、緻密な準備と計画、そして覚悟が必須と言えるだろう。
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