新しい投資手法参入時期最終_03252015

最近、流行っており、一部で「雑食系不動産投資」などと言われている投資法をご存じだろうか。

スッチー大家さんこと、上原ちづるさんが実践されているコインパーキング投資や、楽待新聞でも先日ご紹介したトランクルーム・コンテナなどのストレージ投資(まだ記事を読んでいない方はコチラ >>300万円で始め、たった1年で初期費用を回収!? ストレージ投資は本当に儲かる?)など、住居系以外の不動産で行う新しい不動産投資を指す。

少額の投資で高利回りが期待できる“雑食系”には多くの注目が集まっているが、新しい投資には確実性がないのも事実。

これまでにあまり実績がない新しい投資にいち早く参入するのは得なのか、それとも損をする可能性が高いのだろうか。また、ベストな参入タイミングはいつなのだろうか。

ここでは雑食系のなかでも既にメジャーな存在といえる太陽光発電投資をケーススタディとして、実際のところ先行者利益はどうだったのか、また懸念したリスクは何だったのかを検証してみよう。

太陽光発電投資、先行組のきっかけは「自宅への導入」

そもそも太陽光発電投資とは、太陽光パネルを設置し、太陽からのエネルギーである太陽光で電気を発電。それを電力会社に買い取ってもらう事業投資である。

マイホームの屋根に設置して自宅をオール電化住宅にするケースから、アパート・マンションなどの賃貸不動産の屋根、さらには購入した土地に太陽光パネルを設置する野立ての太陽光発電事業まで、その規模は様々だ。

電力会社による電気の買取には、家庭やアパートで使った電気の残りを買取ってもらう「余剰買取制度」(10kw未満)と、すべての電気を売電する「全量買取制度」(10kw以上)の2種類がある。

そして、買取価格については、制度が施行された2010年当初は国による「プレミアム価格」が設定されていたが、その金額は年を追うごとに減少している。

また2012年の7月からは買取期間が保証された20年の全量買取がスタート。これにより太陽光発電投資ブームが巻き起こった。

それからどうなったかといえば、昨年の9月以降、北海道、東北、四国、九州、沖縄の電力会社5社が買取の新規契約を中断することを発表して、大きな騒ぎとなった。

そして現在は、条件付きで買取は再開されたものの、買取条件は悪くなるばかりで、今年からはさらに大きく買取価格が値下がる。

ここで、制度が施行された2012年当時に太陽光発電をスタートさせた不動産投資家の声を聞いてみよう。

「2010年、自宅をオール電化にして太陽光発電をはじめたら、思いのほか光熱費を節約でき、売電収入も入ってきたんです。設置容量は5.9kwで、買い取り価格は1kw時当たり48円ともっとも良いタイミングでした。毎月2万円弱の売電収入もあり、味を占めてアパートの屋根にも設置することにしました」

こう話すのはB.Sさん。

続いてM.Mさんは以下のように話してくれた。

「うちも太陽光発電を設置してオール電化住宅にしたのですが、日照時間も長く太陽光発電に向いている地域でして、業者のシミュレーションよりもずっと多くの利益がでました。個人的に使ってみて予想される数値より実際の数値が良いということが実感できました。余剰買取10年で融資を使っても十分プラスです!」

M.Mさんも太陽光発電は儲かると考え、所有アパート・マンションのすべてに設置した。2012年は余剰買取で45円と、当初に比べて価格は下がっているが、自治体による補助金も受けることができた時期だった。

プレミアム価格で儲かっただけではない
施工ミスによる被害も……

ここまで話を聞いて、実績が出てなかろうが業者の心当たりがなかろうが、やはり先行投資をするのが、もっとも得だと判断する方も多いかもしれない。

しかし、補助金を受けていたり、今では考えられない高額な売電収入を得ている先行投資家たちだが、実は「思っても見なかった被害」も受けているそうだ。

「たしかに当時は補助金も出ましたし売電価格も高くて有利でした。 でも、今よりもずっと設備導入費は高く、太陽光パネルも割高でしたよ。下手すれば倍くらい違うかもしれません」

というのは、前出のM.Mさん。

「国の狙いは補助金を呼び水にして、普及させ、施工単価を下げるというところにあったと思います。それだけ当初は普及しておらず、今ほど設置方法に選択肢がなかったのです。太陽光パネルの設置ミスによって雨漏りしたこともあります。今であれば考えられないことです」

幸い、保険で修理をまかなえたが、慣れない工事の不手際によるトラブルも多くあったそうだ。

また、2010年に太陽光発電投資をはじめたF.Mさんは、制度がはじまったばかりのころは業者も税理士も優遇税制の条件をよく把握していなかったという。

「そもそもは即時償却ができるから節税になると聞いて、興味を持ったのですが、個人の大家である私は該当していなかったのです。 当時はまだ情報が行きわたっておらず、営業マンも税理士も、税務署もはっきりしたことを理解していなかったのですね。問い合わせても明朗な答えがなくて、結果的にはまったく節税にならず当てが外れましたよ……」

このように先行して投資をはじめたからといって、すべてが順風満帆だったというわけではない。

数年前から太陽光投資ブームの終焉は言われていた

電力会社による新規契約の中断では、買取を当てにして、土地をすでに購入していたなど、なかには大きな損害を被った投資家も少なくない。

どうしてそうなったのかといえば、参入を積極的にうながすために、国による高額な買取価格の保証はもちろん、融資が比較的容易に受けられたということ、さらには北海道や九州にはまとまった安価な土地があることから、多くの企業や個人投資家が飛びついたからだ。

電力会社による説明会には、多くの事業者や個人投資家がつめかけ大きな問題となった。

当然、事業者保障や慰謝料を求める動きもあったが、買取は法律で義務付けられているものの、例外の規定も設けられていたのだ。

なんでも、電気の円滑な供給確保に支障が生ずるおそれがあれば受け入れを拒めるとあり、その際に損害を補償する義務は一切ないのだとか……。

「正直、電力会社や国に裏切られた気持ちでいっぱいです!」

こんな声も聞こえてくる。

実は既に2013年頃から、「太陽光発電のブームもあと1~2年」と囁かれており、くしくも悪い予測が的中した。

というのも制度施行の最初の3年間は、「プレミアム価格」が設定されることになっていたため、逆に3年後は「買取価格が下落する」ということが予想されていた。

つまり、はじめから期間限定の旨味だったのだ。

また、2015年3月、太陽光発電設備について、グリーン投資減税による即時償却(一括償却)が終了した。

太陽光発電設備を2015年4月~2016年3月までに取得した場合のみ、グリーン投資減税制度では30%特別償却のみが認めらるが、あとは普通に償却するしかない。つまり節税目的の設置には効果が得られなくなったのだ。

これによりブームは終焉したかに見えたが、関係者の声を集めると、今もなお、「10kw以下の太陽光発電はあり」という話が多い。

「というのも、昨年の秋に買取を中断した電力会社が軒並み、買取を再開しています。ただし、それは10kw未満ばかり。つまり自宅やアパート・マンションの屋上など小規模な太陽光発電であれば、新規で開始するのも可能です。

ポイントとしては、確かに買取価格は下がっているが、太陽光発電が普及したことにより、工事費用が昔よりかなり安くなってきているため、利回りは大きく変わらないと想定できるところです」

というのは、前出のS.Lさん。

5~6年前の工事費用と比較し、現在はその半分の工事費用をウリにする業者も出てきているという。

仮に買い取り価格が1kw時当たり30円以下になったとしても、工事費用はかつての半値ですから、計算上はまだまだ10%台の利回りが見込めます

対して暗雲が立ち込めているのは、10kw以上の発電だ。昨年秋の新規契約の中断以降は、以前のように簡単には行えなくなっている。

50kwなど、事業規模の太陽光発電投資で儲けているのは、2013年あたりまでに行っている投資家です。2012年に契約していれば42円が20年間保障されていますから。とはいえ、土地からの購入で1500万円から2000万円規模の投資で、年度末の駆け込み需要による工事の遅れもたびたび起こり、投資家としては完全に稼働するまでは不安は尽きないのも事実でしょう」

結局のところ自宅や小規模なマンションやアパートでの太陽光発電投資では、大きな収益は見込めないものの、手堅く稼いでいけるという見込みだ。

結局のところ、新しい投資への参入タイミングの見極め方は?

これらのことから、早いスタートでは、一番高い利益に期待できる反面、予定していた以上にコストがかかるリスク、きちんと投資がスタートできないリスク、なにより期待された収益が確保できないリスクがあることがわかる。

太陽光発電投資に関していえば、先行参入は高コストや施工ミスなどがそのリスクにあたる。収益性に関していえば、国による「プレミアム価格」が設定されていたこと、業者にもよるだろうが比較的厳しくシミュレーションされているケースが多かったようで、期待以上に収益を得られた投資家も多く、総じて良い結果を出している。

また、特筆すべきは、国をあげてのプロジェクトにも関わらず、電力会社による新規契約の中断があったこと。これは、どれだけ信用できると言われていても、「投資や事業に絶対がない」というのを知らしめるケースとなった。

そう考えれば、太陽光発電投資は制度がスタートしてから2年目から3年目までがベスト参入タイミングだったのではないかと推測できるが、それを一般の投資家が見抜くのは非常に難しい。

結局のところ、「自分で責任が追える範囲をしっかり理解すること」、そのうえで許容できるリスクを引き受けて、投資に参入するしかない

その結果が吉とでるか凶とでるかは、フタをあけてみないとわからない話ではあるが、太陽光発電投資のように「最初の3年はプレミアム価格」といった確実性のある部分をしっかり見抜き、先んじて動くことで、投資で勝ち抜くことができるのではないだろうか。

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