コラム上部現在、820万戸もの空き家が日本に存在すると問題視されているが、不動産投資家にとっては「物件が安く買えるチャンス」と考えることもできる。

4月27日付けの日経新聞の朝刊に、「中古住宅の診断を義務化」という見出しの記事が掲載された。中古住宅の売買を行う際、住宅診断の実施と、その結果の説明を仲介業者に義務づけるというものだ。
買主が安心して中古物件を購入できるという安心感を高める狙いがあるが、売主側にも売り損ねていた物件の販売の拡大が見込めるなどのメリットがあるとされている。

以前に楽待新聞で掲載した記事の通り、政府は税制改正によっても、放置された空き家を減らすための施策を検討しており、空き家の削減、中古住宅の流通などの動きはますます活発化していくと考えられる。
(参考:法改正で820万戸もの空き家が市場に放出!?投資家にとって千載一遇のチャンスとなるか?

すでに、築古物件、あるいはボロ物件と言われる物件を格安で購入、その物件を低価格でリフォーム(再生)して貸し出す。そんなスタイルの不動産投資を実践する投資家も増えている。

そこで今回は、東京まで通勤可能な首都圏エリアで、180万円や240万円という破格の安値で戸建てを手に入れ、利回り43%などの高利回りを実現させている投資家、中 薫道さんの投資術をご紹介したい。

以前はサラリーマンとして、ITコンサルタントをしていた中さんの不動産投資歴は20年以上、主に木造で築20年を越している築古物件を好んで購入し、その後リフォーム、リノベーションを実施している。インターネットを利用して、公売や競売、競売の中でも「特別売却」といわれるものを中心に掘り出し物件を見つけ出すのが特徴的なスタイルだ。

中さんのように、空き家(≒ボロ戸建て)を、格安で購入してリフォームすれば、超高利回りの投資物件として再生できる可能性がある。

ただし、世間一般で“ボロ物件”といわれている物件や、格安で売られている物件を購入することには一定のリスクがあり、そもそも買った後、どの程度の費用をかけてリフォームをすれば貸し出せる物件になるのかを推測することは容易ではない。

「格安な物件をどうやって購入するのか」、「築古の物件で、費用を抑えてリフォームするにはどうしたらよいのか」そんな気になる疑問を、中さんの事例を通して解決したい。

実録! 首都圏でも180万円で一戸建てが買える

中さんは、これまでに8戸の空き家(戸建て)を再生させているが、戸建てのほかに、アパート3棟、区分マンション4戸を所有する専業大家である。

「古い物件でも、手を入れてメンテナンスすれば、価値が上がり、立派に世の中の役に立ちます。」(中さん)

中さんが見つけた格安物件はなんと、埼玉県にある180万円の物件。注目いただきたいのはその表面利回り。実に43%だ。首都圏で、ここまで高利回りの物件をどうして購入することができたのか、購入に至る過程について詳細を聞いた。

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中さんが、180万円で購入した戸建て

物件価格

180万円

エリア

埼玉県富士見市

築年数

36年

広さ

50平米

利回り 表面

 43%

駅徒歩

10分

中さんが見つけた戸建ては、競売の中でも「特別売却」の物件だった。競売のなかでも、「特別売却」とは、誰からも買いたいと申出がなかった場合にのみ行われ、先着順で購入できる仕組みだ。一番手で申し込めば、競売スタート時の金額で購入できる。

デメリットは、通常の競売物件同様、購入後にしか物件の中に入ることができない点と現金一括払いで購入しなければならない点で、玄関を開けてみないことには、家の中がどうなっているかがわからないのはリスクの一つだ。

中さんが買った180万円の戸建て、なぜ誰も買わなかったのかというと、「トイレが汲み取り式であることや狭小であることがその原因」と中さんは予測。

それでも購入を決意したのは、次の3つの理由からだ。

① 東京まで通勤1時間以内で通えるため、賃貸ニーズが高い
② 土地14坪、建物50平米、築35年、再建可という条件の割に、180万円は割安
③ ボロボロだが、それゆえに“大家力”を養うには最適

180万円の戸建ては問題だらけ……が、リノベ後はここまで蘇った!

「白い外壁に真っ黒なカビがビッシリと生えていて、ここまで家は汚くなるのかと思いました。」(中さん)

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外壁に黒いカビ汚れがビッシリ生えている

外観がそこまでの状態だった物件、恐る恐る中に足を踏み入れると、誰もいないと思っていた2階からドタバタと言う音が聞こえ、何匹、何十匹ものネズミがいたそうだ。また、屋根裏には鳥まで住み着いていた。極めつけは“くみ取り式”のトイレ。猛烈な悪臭を放っていた……。

これらの状態を自力で解決しなくてはならなかったが、ラッキーなことに、水道工事が始まり、ドカドカという大きな音がすると、ネズミと鳥は自然といなくなった。そのため、駆除費用はかからずに済んだ。

もし駆除をプロに頼んだ場合、ネズミの駆除費用は、10万円ほど、鳥の駆除は、3万~10万円ほど(鳥の種類や駆除にかかる日数などによって金額が変わる)かかる可能性があり、それだけで20万円程度の出費もあり得た。

上記以外にも、壁紙ははがれ、床はブカブカ。戸袋(雨戸を収納しておくためのスペース)と窓枠が腐食しているなど様々な問題が見つかった

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壁紙がはがれ、床がブカブカになっていた室内の様子

その結果、状態を元通りにするだけの「リフォーム」では手に負えず、大規模修繕、「リノベーション」が必要になると判断し、工事は顔なじみの地元の大工さんに依頼したそうだが、なぜ中さんはリフォーム会社ではなく大工さんに業務を依頼したのか?

答えは明確で、リフォーム会社に発注するよりも費用が抑えられるからだ。これがリフォーム費用を抑えるための大きなポイントの一つだ。何度か物件のリフォームやリノベーションを行うと、顔なじみの大工さんができる。

中さんは、壁はこの人、水回りはこの人、と個別に発注し、自身で現場監督のような役割をしているそうだ。これは、「分離発注」といわれるもの。リフォーム業者に一括でお願いするのではなく、分野別に切り離して依頼することで費用を抑えることができる。上記物件の場合は大工さんにほとんどの工事を依頼したが、水道工事が必要な場合などはそれぞれの専門家に依頼を行う。

工事の納期や交渉など、やりとりをする先が増えるので難易度が多少高くはなるが、それ故、コストを抑えられるのだ。 初心者の場合、まずは、電話帳を見て物件の最寄りの業者を探して電話をし、交渉できる業者を探すのも手だと教えてくれた。

180万円の戸建ての主なリノベーション箇所とかかった費用は以下の通り。

① 汲み取りトイレを水洗トイレに&本下水への接続工事……40万円
② 窓枠交換、床フローリング上貼り(今あるものに重ね貼り)……60万円
③ 塗装……40万円
④ その他の雑工事……10万円

合計150万円

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汲み取りトイレを水洗にするなど、大がかりなの工事の様子

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リフォーム後の戸建て。カビが生えていた外壁を塗り替え、清潔感溢れる白色に

もともと200万円程だったリノベーションの見積もりを、自らが現場監督のように毎日現場に立ち会い、できることは協力するなどして150万円に抑えた。これによって表面利回りは修繕費用を考慮しても24%になった。

次は、240万円の物件を“公売”で発見!
購入価格の2倍の値段で売れるお宝物件に……

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公売で購入した240万円の一戸建て(リフォーム前)

物件価格

240万円

エリア

埼玉県東松山市

築年数

36年

広さ

105平米

利回り 表面

 41%

駅徒歩

20分

中さんが次に見つけたのが、埼玉県にあった240万円の、豪邸ともいえる立派な邸宅だ。今度は、「公売」で見つけた。

「公売」とは、国税を滞納したことにより、国税局や税務署が差し押さえている不動産を入札などの方法で売却すること。公売は 自治体のサイトなどを利用して、インターネットで検索でき、最も高額で入札した人に売却される決まりになっている。誰でも参加できるが、滞納者及び公売への参加を制限されている人は参加することはできない。

入札会場へ出向くと、入札希望者は中さん一人だった。その結果、土地35坪、建物105平米という広さ、築25年で再建築可能な戸建てを、希望額の240万円で購入できた。こちらも先ほど紹介した180万円の物件と同じく、必要最低限のリノベーションを実施した。リノベーションの際に、中さんがこだわったのが外壁のカラーだ。

人が住みたくなるような清潔感のある色の外壁にすることがポイント。具体的には、オレンジや黄色、淡い水色やグリーンが好評です。」(中さん)

外壁の塗装は数十万円で済むためそれほどお金はかからないが、外壁の印象を変えることで、入居者が決まりやすくなるという。

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外壁の色を変え、爽やかな印象に(リフォーム後)

実は中さんは、この物件を3カ月後に、購入金額の2倍の価格で売却した。つまり、本来であればまだまだ価値のある物件が、多少見た目が悪いことなどを理由に見向きもされなくなっている現状があるということだ。

「空き家を再生することで、世の中の空き家に対するマイナスイメージを変えたい。もし、古いアパートや戸建てを壊そうとしているなら、その前に一度、リノベーションをしたらどうなるかを考えてみてください。」(中さん)

中さんは、不動産投資歴20数年というベテランだが、実は成功談ばかりではない。かつての失敗についても話してくれた。

「バブルの終わり頃にはじめて収益不動産を購入しましたが、その物件はずっと値下がりしてきました。購入額の半値以下まで下がったこともあります。スキルもなく始めた失敗投資が、今でもトラウマになっています。」

以来、不動産投資で失敗しないための基準やルールを決め、それを守ることで過去の失敗を忘れず、自分を律しているそうだ。

モットーは土地値より安く物件を買うこと。土地値以下で購入できれば売るときに、土地値で売れ、大きく損をすることはない。だから割高な物件は購入しないという。その他、物件を選ぶときに重視しているのは、「都内まで通勤できる」首都圏エリアであることで、確実に賃貸ニーズがあるからというのがその理由だ。

また、外壁の色を思い切って変更し、第一印象を変えること、室内では壁や床を清潔感ある新しいものに刷新するなど、自分流のルールを定めて実践している。

物件価格が高騰していると言われる昨今だが、中さんのように競売や公売などを駆使すれば格安で物件を購入することができる。ただし、大半は修繕部分が多い難あり物件のため、分離発注などで費用を抑えてリフォームすることが、空き家だったボロ物件を高利回りの投資物件として運用するための条件になる。

820万戸存在すると言われている空き家の中にも、やり方次第でお金を生んでくれる、隠れた“お宝物件”が潜んでいるかもしれない。

また、現在は戸建を中心に進んでいる中古物件の流通促進が、アパートやマンションにも波及したり、築古物件への融資条件が緩和されるなど、不動産投資市場で、中古物件の流通が活発化されるためのさらなる取り組みに期待したい。