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長期休暇の際、家族サービスはもちろん、日ごろ忙しくてなかなか行えない物件調査にも出かけたいところ。

ここで気になるのは経費。物件調査旅行はどこまで経費として認められるのだろうか?

今回は物件調査のための旅行と経費について、不動産投資の税務に詳しい税理士の工藤あゆみ先生にお話を伺った。 

物件調査の旅行については法律で決まっている!?

長期休暇を利用して、家族との国内旅行や海外旅行の計画を立てている人も多いだろう。また連休は普段働いているサラリーマンには、なかなかできない物件調査を行えるチャンスでもある。

ここで気になるのは、「家族旅行と物件調査を兼ねた場合、経費として計上できるのか?」ということ。

経費には概ね、交通費や宿泊費などが含まれる可能性があるが、家族旅行と物件調査旅行を併せて行った場合はどうだろうか? どんなケースであれば可能なのか? 事例を基に工藤先生に解説いただいた。

「税法には、『海外渡航費の所得税基本通達』というものがあり、法令をどのように解釈したら良いのかルールが決まっています。この通達の内容は海外渡航費についてですが、国内の旅費についても同様に考えます。国内旅費には通達が無いので、準ずる考え方をするしかないということです」

では実際に、どういったケースが経費として認められ、どういったケースが認められないだろうか。

ケース1:妻と2人で名古屋と福岡2泊3日の国内旅行
(青色事業専従者である配偶者を同伴する物件調査旅行の場合)

東京都に住むAさんは都内に区分マンションを3戸、北関東に親から引き継いだ木造アパート1棟、戸建を2戸所有。現在は札幌・仙台・名古屋・福岡といった主要都市を中心に1億から2億円程度の中古RCマンションを探している。

長期休暇の際は名古屋と福岡の物件を奥様と一緒に調査に行く予定だ。日程は、1日目は新幹線を利用して名古屋へ。物件を2件ほど見て周辺不動産業者へのヒアリングを行ってから、その日は名古屋に宿泊、翌日に飛行機で福岡へ移動する。

そこでも2件ほど見学して、同じように周辺仲介業者へのヒアリングを行う2泊3日の行程となる。この場合は交通費・宿泊費などの旅費が経費として認められるのだろうか?

税理士の回答

このケースは経費として認められます。
不動産業者へのヒアリングの際には、担当者の名刺をもらっておいてください。

ケース2:英語に堪能な妻とフィリピンのセブ島で、コンドミニアムの購入検討
(青色事業専従者で無い配偶者を同伴する物件調査旅行の場合)

関西在住の公務員のBさんは国内の不動産だけでなく、海外の不動産にも興味を持っている。ここ数カ月、フィリピン投資・アメリカ投資・ハワイ投資など海外投資のセミナーを受けて、日本からもアクセスもよく観光するにもちょうどいいフィリピンのセブ島のコンドミニアムの購入検討をしている。

長期休暇の際はフィリピンまで出向いて現地の物件をいくつか見て検討する予定だ。なお、Bさんの奥様は外資系に勤めるバリバリのキャリアウーマン。英語が堪能なことにくわえて、交渉事にも強く、現地では通訳を務めることになっている。この場合、夫婦の交通費・宿泊費などの旅費は、経費となるのか?

税理士の回答

Bさんに関しては、経費として認めれます。
奥様に関しては、通訳を行う場合は認められますが、通訳を行わない場合は認められません。

ケース3:北陸への帰省を兼ねた物件調査を家族で行った
(配偶者・子が同伴する物件調査旅行の場合)

サラリーマン大家のCさんは神奈川県に住み都内の某大手メーカーに勤めているが、石川県のほぼ中央に位置する金沢市の出身だ。北陸新幹線を使って、小学生2人の子どもと奥様、4人家族で帰省する予定。

Cさんは地縁を活かして北陸で物件を増やしている。すでに3棟まで買い進めているが、長期休暇を使って購入検討中の物件の調査を行う。宿泊先は実家で両親の車を借りてドライブがてら、所有物件の確認と新たに購入予定の物件を家族でまわることになっている。

この場合、家族の北陸新幹線の交通費、借りた車のガソリン代など物件調査にかかった費用は経費となるのだろうか?

税理士の回答

実家に宿泊していても物件視察を行っているということで、本人の旅費は認められますが、子供の旅費は認められません。

奥様については、青色事業専従者給与をもらっている人であれば認められます。

ケース4:札幌市内2泊、登別温泉2泊と北海道旅行の途中で家族と合流した
(物件調査旅行とレジャーを兼ねた場合)

Dさんは北海道の札幌に物件を所有している千葉在住のサラリーマン大家。長期休暇は所有物件の見回りと仲介業者と修繕についての打合せ、それから新規購入を検討している物件に、リフォーム業者を伴って調査を行う予定となっている。

現地の管理会社やリフォーム業者との打ち合わせのため、2泊ほど札幌市内に宿泊後、家族と合流して登別温泉へ向かう予定だ。

温泉旅館まではレンタカーを借りて向かい、2泊する。この場合は、家族の旅費は経費計上できないにしても、Dさん分の旅費交通費はすべて経費として計上できるのだろうか?

税理士の回答

合理的な日数等で旅費を案分します。温泉宿泊等のあきらかな観光旅行、観光のために使うレンタカーの費用は認められません。

経費が認められる基本前提は、○○○○○であること!

なお、今回のケースステディの前提条件として「事業的規模の賃貸経営をしている個人の場合」とする。というのも個人で、事業的規模でもない賃貸経営の場合、物件視察となる旅費は原則として経費と認められないからだ。

とはいえ「原則」というのは、厳密にNGという意味でなくて、あくまで基本の原則という曖昧な側面もある。

この事業的規模についてより詳しく聞いてみた。

「物件調査旅行を経費計上するためには、まず事業的規模の賃貸経営であることが基本となります。そもそも所得税において『事業』と『業務』の使い分けは、はっきりと線引きがなされています。

例えば、青色申告控除は『事業的規模』ならば65万円、『業務的規模』ならば10万円となっています。その他にも事業的規模ならOK、業務的規模ならNGとされる規定も存在します。

事業的規模とは、いわゆる『5棟10室基準』という形式基準に基づいて判断されます。

貸家の場合には、次の戸建てならば1戸につき2室換算、共同住宅ならば1棟の貸付部屋数の合計が10室以上であれば形式判断での事業的規模に該当します」

つまり6室あるアパートと、戸建て2戸を賃貸している場合では、6室(アパート)+4室(戸建)=10室換算となり、事業的規模となるわけだ。

事業的規模に達している場合においても、どこまでが経費になるのかは、同行した家族の年齢、どのような立場で出向いたかなど、ケースバイケースという部分が多く、うまく条件に当てはまれば、交通費や宿泊費などの旅費を全額経費計上することも夢ではない。税務の専門家にしっかり相談をして判断したいところだ。

参考:海外渡航費の所得税基本通達
https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/tsutatsu/kihon/shotoku/05/08.htm

工藤あゆみ先生プロフィール

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平成4年、税理士試験合格。同年、KPMG国際税務部門にて外資金融機関の税務に携わる。その後IT関連企業のIPOに税務マネージャとして参加。平成11年に開業独立。

不動産投資、相続税対策・事業承継対策、国際税務(外国人の申告、国内法人の海外出店・取引等)をメインに活動中。現在は業務の傍ら、税理士受験校にて相続税講師、大家さん向けの税務セミナーの講師もおこなっている。

HP:くどう会計事務所
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