内本さん最終04282015

不動産投資家にとって収益を脅かすものとして“リフォーム費用”があげられる。

リフォーム費用を安く抑えるための手法として、「相見積もりをとる」「分離発注をする」などがあるが、実際には「無理な交渉をしてリフォーム業者と険悪になった……」「時間がなくて割高なリフォームになってしまった……」など、思い通りにコストカットできないケースも多く聞く。

そこで今回はリフォーム費用を本当に安くするコツ、それもDIYのように手間がかからない、かつ特別なテクニックもいらない再現性の高い方法を、楽待コラムニストの内本智子さんにアドバイスいただいた。

内本さんは、総投資額4億5000万円、年間家賃収入5400万円の不動産投資家だ。リフォーム費用を最大限に抑え、リフォーム後の利回りでも12%を誇るプロである。

具体的には、

○千葉県我孫子市(約8000万円・利回り17%)の物件
⇒リフォーム費用約600万円(リフォーム後の利回り16%)

○松戸市(1億9000万円・利回り10%)の物件
⇒リフォーム費用約600万円(リフォーム後の利回り9%半ば)

いずれも、原状回復工事だけでなく壊れている箇所の修繕や交換、清掃などを実施し、低コストで物件のバリューアップに成功されている。

知っておきたいリフォーム工事の基本

本題に入る前に、まだ収益物件を購入していない方へ向けて、リフォーム工事についての基本を解説する。アパート・マンション経営で必要なリフォームには以下の3種類がある。

① 原状回復工事
② バリューアップ工事
③ 建物のメンテナンス工事

① 原状回復工事とは、入居者が退去した後に部屋を修繕して元の状態にする工事のこと。退去がでるたびに行う必要がある。費用はワンルームであれば数万円~、ファミリータイプになれば数十万円かかる場合もある。

② バリューアップ工事とは、空室をリフォームしてすぐ住める状態にしておくだけでなく、共有部を塗装する、駐輪場を整備する、防犯カメラを設置するなど物件の価値をあげて、家賃の下落を防いだり、入居率を高めるために行う、原状回復工事+αの工事のこと。

行う内容によって費用がかわり、ちょっとした設備の変更や追加では数万円(モニターインターホンへの交換など)、フルリノベーションとなれば百万円単位の工事費用がかかる。

③ 建物のメンテナンス工事とは、その名の通り、建物を維持するために行う工事で、屋上防水、外壁塗装、エレベーター点検修理などがある。メンテナンス工事は総じて木造が安く、RC造になると金額が高くなる。とくに規模が大きいRCマンションの場合、何百万円という工事費用も珍しくない。

これらは、木造や鉄骨・RCなどの「構造」だけでなく、一棟・区分問わず必要となる。

ただし区分の場合、管理組合による大規模修繕計画が立てられていることが多く、修繕積立金の名目で月々費用を積み立てているため、建物全体のメンテナンスについては修繕積立金でまかなうことができる(室内の設備交換、原状回復についてはその都度費用がかかる)。

「昔ながらの地主大家さんや、オーナーが遠方に住んでいて目を配れていない場合は、建物のメンテナンスをほとんど行ってないこともあります。そのような物件は築年数が浅くても、見た目がボロボロです。

私はそのようなメンテナンスを怠った物件、またバリューアップ工事どころか原状回復工事すらやっていない放置物件を安く購入して手を入れ、満室で運営するという手法を実践してきました」

そう話すのは、5棟81室を所有する不動産投資家の内本智子さん。

大規模な一棟物件を、スピードを持って買い進めていく投資スタイルの内本さんだが、建物のメンテナンスを怠った物件や、空室の多い物件(=バリューアップ工事が必要な物件)など、あえて手間やコストがかかる物件を割安で購入しているのも大きな特徴だ。