地方の高利回りの商業ビルにも魅力を感じるが……
先ほどは、都心のビルの話でしたが、一方で地方には数千万円で購入できる手ごろなビルもあり、しかも高利回りです。
例えば、新潟や岐阜などで利回り30%の高利回りの物件を見かけることがあります。手堅く考えて、入居率が50%でも、利回りは18~16%になり、手残りで10%ほどになります。そういうやり方も面白い気がします。
ただし、そのような高利回り物件は人口減少地域である場合が多いです。物件が近くにあればどうにかできますが、遠方だと管理会社や客付会社に頼るしかありません。
「従来の所有者ならそこまでできないだろう!」というくらい劇的に大改造して満室にするのはおもしろいと思います。
全て空室であれば、一気にリフォームしやすいですし、ご自身が現場監督を行って直接職人さんを雇います。
1~2カ月は入り浸る意気込みが必要ですが、実際に成功された人もいますから、可能性はありますよ。あとは腹を括ってやれるかでしょうね。
それにはコンセプトが明確で尖っていないといけませんよね。今は全空なり2~3割しか入居がない物件が、急に7割に入るとは想像し難い。もっと明確にキャラをつけなければ。それができれば可能性もあるのでしょうか?
そうですね。秋田でやっている方もいますよ。
秋田は最も人口が減少している地域ですよ?
その地でやり続けています。彼自身が若いセンスのある人です。
たとえば、横浜にあるようなオシャレな部屋を、そのままそっくり秋田に持っていくのです。そして短期間で一気に仕上げてしまう。どうやってお客さんを連れてくるのか僕も知りたくらいで、1カ月もすると満室になったみたいですよ。
地方といっても駅に近いとか? それとも力業で連れてくるのでしょうか?
全く需要のないところへ建っているのではなく、もともとニーズのあるエリアです。
建築理由が相続対策で経営センスに疎くて、そのまま放置されているような物件であれば再生もできる。もともと悪くないエリアなので息を吹き込む感じでしょうね。
住居ではなく、事務所や駅前のテナントならどうでしょう? 全空に近い状態で4000~5000万円の物件が売りに出されています。
それは悩みますね(笑)
地元であれば「がんばろう!」と力も入りますが、私は埼玉北部のテナントで苦労した経験があり、地方は難しいイメージが拭いきれない。それで今は東京でばかり買っています。
地方では郊外型の巨大ショッピングモールがどんどん建っています。その集客力は目を見張るばかりですが、お客さんを持っていかれて疲弊している駅前商店街がたくさんありますよね。そういうエリアの見極めが大切です。
都心であればテナント系、事務所系にも需要はありますが、地方だとシャッター街が普通にありますから、その土地をよく知らないと手を出しにくいですね。
ずらっとシャッターが閉まっていて、そこだけぽつんと綺麗なお店をオープンしたところで果たして人が来るのか?
住居であれば戸建ても含めて何かやりようがある。そこに住む人は必ずいるわけだから、「競合に対して自分がどう差別化を図れるか?」を考えていくことができます。
具体的な話をしますと、宇都宮の駅前に4000万円台で1割しか入っていない事務所ビルがありました。全て埋めると利回り40%にもなるため、都心に比べて非常に魅力に思えます。
僕の知人には事務所ビルを得意とする人もいます。
全空に近いビルを仕入れ、まだお住まいの入居者へご挨拶してから看板を替えたり入り口を直したり、費用を抑える為にファサードに手を入れるだけです。彼の戦略は決まっているんです。
勝ちパターンがあるのですね?
それにのっとってやっています。関西ですが人口動態はよい方でした。しかし商業ビルとなると難しいですね。明確なお答えができなくて申し訳ありません。
いえいえ、都心はいろいろアイディアも出ますが、どうも地方だと浮かばない。せっかく今は融資金利が低くてチャンスなのに……と思いつつ手が出しにくい現状です。
あとは福田さんの築き上げられてきた経験則や第六感も貴重です。
素直にご自身の声に従うのもいい。うまく運営されているからこそ、より慎重になっていただきたいですね。
沖縄など、遠方の人口増加地域での不動産投資は?
具体的に調べているわけではないのですが、思いきって沖縄など遠方の地域でも、人口が増加している地域を選んでの投資はいかがでしょうか。
距離は関係ありませんよ。僕自身はアメリカにいながら日本の首都圏の物件を、電話とメールだけで運営しています。必ずしも住まいが近くになくても問題ありません。
管理会社をうまく使われているのですね?
管理会社やガス会社、リフォーム業者と顔合わせも済ませ、一通りやってきた土台があるからです。
逆に、アメリカの物件は2012年から投資をして、2014年に渡米するまで人に貸していました。そのときは日本にいながら遠隔でアメリカの管理会社を利用して運営してきました。「国が変わっても基本は同じなんだ!」と実感します。本当に便利な時代ですよね。
皆さんが遠方で投資を始める際に問題となるのは、まず管理会社さんとの精神的な壁、それと融資の壁でしょう。
ただし、融資は全国的に展開している金融機関、もしくは地方にも支店のある地銀を積極的に当たっていけば可能性が開けるはず。もちろん公的な機関もあります。
そういう意味で、やれない理由はない。あとは人口増加の要因を明確に見極めたいですね。
沖縄は出生率が高いですよね。
気候が暖かく安心して子育てができる環境もありますね。
あとはサステナビリティ(持続可能性)や需給バランス、それは地元の業者さんへ電話インタビューすることからスタートします。
わざわざ旅費をかけなくても電話で情報収集ができます。その際は失礼のないよう丁寧に、細かく聞きだします。
どんなエリアなのか? 建物の構造は? 学区や治安も気になりますね。
同じ質問を投げかけても、聞き方によって返ってくる答えは様々ですから丁寧に行いましょう。
なるほど。リサーチを丁寧に行うのですね。勉強になります。
アメリカの不動産投資で節税できる?
石原さんにはアメリカの投資についてもお聞きしたいと思っていました。アメリカの不動産投資では、短期で減価償却できて節税になるそうですが?
日本の居住者には日本の税法が適用されます。日本に住んでいる人がアメリカに物件を所有した場合、日本の税法によって古い物件が短期で落とせるため一気に節税となります。
アメリカ不動産の特長として、一般的には建物が8割、土地2割といわれており(都心部を除く)、購入額の8割を4年間で落とせることになります。そして市場特性として古くても価値を上げて売却益を狙える可能性があります。
このように多額の減価償却と資産価値向上が目指せるから、日本のお金持ちにとって「スーパー減価償却」と注目されているようですね。僕はこちらに住んでいるので関係ないのですが(苦笑)
今はアメリカの居住者になって初めての確定申告の最中です。
日本でも払っているのに税率が違うから、「一体いくらになるのかな? これは経費にならないの?」と頭を悩ませながらやっています。
こちらでは驚くことにギャンブルが経費になるんですよ。それを知らなかったので宝くじのハズレ券を捨ててしまいました。
ギャンブルが経費とはどういう発想でしょう。福利厚生かな?
なんでしょうね? とにかく、この1年はがむしゃらでした。レシートを引っ張り出して泣きながら仕分けしている最中です。
日本で納税しているのに、さらに払うのは厳しいですね。
とはいえ、人生を謳歌するという点では不動産一辺倒でなく、色々と充実しています。
これまでに学んだ常識も衝撃的に違いますし。日本である程度の基盤を築くと、この年齢にもなれば否定されることもないじゃないですか。でもこちらではマイノリティーとして戦っており、とても刺激的です。僕は楽しむように取り組んでいけたら……と思っています。
前向きが一番いいですね。私もそのように取り組んでいきたいです。
しんどい部分もありますが、どうにかやっています。福田さんもぜひお仕事でこちらに来られたらコラボレーションなどいかがでしょう!?(笑)
嬉しいですね。その時は、ぜひ良いご縁に結びつけばと願っています!
今日はありがとうございました!!
■対談を終えて…石原氏よりメッセージ
脱サラに成功した元百貨店勤務の福田さん。37歳でネット通販会社を興して、現在は11年目の会社を経営する傍ら、5年前にスタートさせた不動産事業部も順調といいます。
活況に見えて実は厳しいネット業界。将来への不安から不動産を目指した経緯は、大いに共感しました。異端児的な要素に惹かれるという福田さん、新しい試みなど尽きない話題で沢山の学びと楽しい時間を頂戴しました。
これまでの利益をコツコツと不動産に換えてきたのは、社員や家族を守るためという胆大心小の精神には頭が下がります。売値1億2000万円だった区分の銀行閉鎖店舗も、直接交渉でなんと3500万円まで下げた逸話にはびっくりしましたが、そんな才気溢れる彼だからこそ、「不動産の神様が微笑んで下さったのかも」とのお話にも大いにうなずけます。
そろそろ1棟ビルへの再デビューを果たしたい福田さん、抜群の事業センスでご計画を実現させてください。今後のさらなるご発展をお祈り申し上げます!
この連載について
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41
世帯年収500万円で、2000万円の貯蓄を実現した堅実夫婦のお悩みとは?
2015.6.27
40
期待利回り30%、数千万で買える地方のビルはあり? 脱サラ兼業大家さんの悩み
2015.5.25
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