こんにちは。銀座第一法律事務所、弁護士の鷲尾です。
私はこれまで、アパートやマンションを貸している大家さんや、土地を貸している地主さん、賃貸保証会社などから、賃貸事業をめぐるトラブルの相談を数多く受けてきました。弁護士になって20年あまり、受けた相談は400件を超えます。
不動産投資というと、大家さんだけでなく、不動産業者、管理会社、入居者など、様々な人が介入するため、その分トラブルも多くなるのも当然でしょう。
ここでは、大家さんが巻き込まれやすい具体的なトラブルを事例に、どのように対処したら良いのか? 弁護士の立場で法律的観点から回答いたします。
今回は、「瑕疵担保免責」に関するご相談です。

築15年の木造アパートを個人の売主から購入しました。2カ月後、その物件にシロアリの被害があったことが発覚しました。瑕疵担保免責で購入してしまったのですが、その場合、損害賠償を請求することはできませんでしょうか?
不動産業者に確認したところ、瑕疵があることを知っている印象でした。ただし、それを証明する術はありません……。
【状況】
・シロアリの被害により、1000万円の修繕費がかかりそう
・工事が半年かかるため、家賃で5万円×2室×半年=60万円の損失
「瑕疵担保責任」とは?
ご相談者は、瑕疵担保責任免責という条件で中古のアパートを購入したということです。
損害賠償請求が可能かはのちほど詳しく説明しますが、その前に、瑕疵担保責任、瑕疵担保責任免責ということの意味をご説明します。
「瑕疵」とは、売買の目的物が通常有すべき品質、性能を欠いていることをいいます。売買の目的物に「隠れた瑕疵」があるときは、買主は、売主に対し、損害賠償や契約の解除を請求することができます。これを瑕疵担保責任といい、民法570条に規定があります。
では、「隠れた」瑕疵とは何かというと、買主が一般に要求される程度の注意をもってしても発見することのできないことをいうとするのが判例です。
2ヶ月後に発見されたシロアリ被害は「隠れた瑕疵」にあたるか?
ご相談のケースは、アパートを購入して2か月後にシロアリ被害が発覚したということですから、買主は契約当時にはシロアリ被害について知らず、発見することもできなかったといえます。
ただし、シロアリ被害が発見されれば常に「隠れた瑕疵」が認められるというわけではありません。
築12年の木造建物のケースで、「シロアリによる侵食の跡があったとしても、それが当該建物の土台、柱等の躯体部分にあるのではなく、又は、その程度が軽微にとどまるときは、必ずしもこれをもって当該建物の瑕疵ということができない場合がある」として、軽微なシロアリ被害は「瑕疵」に当らないとした判例があります(東京地裁平成20年6月4日判決)。
ご相談のケースでは、1000万円という高額な修繕費用がかかりそうというのですから、シロアリ被害が相当進んでいる様子がうかがわれますので、アパートとして通常有すべき品質を備えたものとはいえず、「隠れた瑕疵」にあたるといえるでしょう。
この連載について
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