不安は続く・・・

 わたしは疲れきっていた。たった15分の時間が、まるで数時間のようにも感じ、ヘトヘトに疲れていた。前所有者から鍵を受け取り、階段を下りながら、その足ですぐ斜め前にある落札した物件へと向かった。

 「なんであんなにあっさり鍵を渡してくれたんだろか・・・」

 「すでに子分を占有させていて、そこから何かを要求してくるのでは・・・」

 「もしかして部屋はすごい状態になっているのでは・・・」

 あまりにもあっさりとした鍵の受け渡しだっただけに、逆にどんどん不安がよぎる。以前読んだ本の中には、法的には縛れないような、精神的なダメージを負わす嫌がらせもあるという。スプレーで部屋中落書きをされるような嫌がらせ、部屋に大量の残置物があったり。。。

 

いったい部屋はどうなっているのだろうか?

 入札前にチェックした通り、全部で7部屋あるうちの2部屋が空室だった。なぜか、建物に正面向かって左側が101(1階)、102(2階)、103(3階)となっている。右側が201(1階)、202(2階)、203(3階)、205(4階)だ。縁起が良くないということだろうか、204号室は無かった。

 建物は相変わらず古く、鉄部はいたるところが錆びている。階段を1つ上がり、空室の102号室に辿り着いた。大量にある鍵の束から、102号室の鍵を見つけ、鍵穴に入れた。「ガチャ」高い音を立てて、鍵が開いた。

1F階段

恐る恐る部屋を開けてみると・・・

 そこに広がっていたのは、わたしの不安は何だったんだろうというほどの、はるくかに綺麗な部屋だった。またまた拍子抜けしてしまった。同伴してくれた代行業者も「広くて綺麗ですので埋りそうですね」と言ってくれた。

 競売三点セット(「物件明細書」「現地調査報告書」「評価書」)に入っていた部屋の写真は、暗くてよくわからなかったのだ。この日は天気が良く、部屋はとても綺麗に見えた。

 続いて3階の部屋に行ってみる。ところどころ柱がシロアリに食われた後があったり、ふすまが破れていたり、床にちらしが散乱していたりするが、こちらも綺麗だった。一番奥の窓を開けると、海が見えるオーシャンビューの素敵な部屋だ。

キッチン1

キッチン2

6畳

 バスルーム

トイレ

 部屋を一通りチェックすると、お礼を言って代行業者とは別れ、日立駅のそばにあるイトーヨーカドーにあるレストランで妻と蕎麦を食べ、午後は管理会社探しをすることにした。やっと落ち着くことができた。午前中にあったできごとが頭の中を駆け巡る。

 お昼を食べ終わって少し休んだ後、わたしたちは事前にピックアップしてあった日立駅前の不動産屋に行ってみる。緑色のマークが特徴の大手の不動産会社だ。担当者の男性が明るい笑顔でやってきて用件を聞いてきたので、さっそく経緯を話し管理をお願いしてみた。

 不動産屋さん「オーナーさん、ごめんなさい。この物件は管理できないと上司に言われまして・・・」

 ななころ「えぇ〜、なぜなんですか?例の物件だからですか?」

 不動産屋さん「はい。。。」

 こんな調子で、5件ほどまわってすべて断られてしまった。オーナーが変わったのだからと思ったのだが、入居者に関係者が住んでいたり、元のオーナーが向いに住んでいるということで、トラブルを警戒しているようだ。

 わたしと妻は、すっかり意気消沈してしまった。現地調査で地元の不動産屋さんに聞いてさえおけば、この情報はつかめていたはずなのに。「あぁ〜、なぜこんな物件に手を出してしまったんだろか!?」

 この後、さらなる困難が待ち受けていた・・・。

(つづく)

※注意

この記事は、私の実際の不動産投資体験をもとにしていますが、多少アレンジした「フィクション」として楽しんで頂けると幸いです。

 

━━<編集後記>━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 

  当時はほんとうに苦難の連続で、毎日毎晩のように「なんでこんな物件を入札してしまったんだろう・・・」と悩んでばかりいました。仕事も手につかなくなり、この物件のことばかり考えていました。妻に聞くと、寝言を言ったり、夜にうなされていたこともあったようです。

 不動産ど素人のわたしには、かなり背伸びした物件だったのです。毎日悩んで悩んで悩んでいました。全てがわたしにとって未知の領域であり、そこには、自信も確信もありませんでした。

 しかし、今にして思うのは、その未知の領域に挑戦したからこそ、自分の器を飛躍的に広げることができました。現状を打破しようと必死だったからこそ、大きく成長できたのだと考えています。

 そして、わずか5年という短期間で、当時もらっていた給与をはるかにしのぐキャッシュフローを手に入れることができるようになり、サラリーマンを卒業することができたのだと思います。短期間で大きく成長するコツは、「背伸びする」です。