こんにちは。税理士兼大家の鵜之沢巧です。
区分マンション投資等の売り文句でよく言われる「節税になるから」という言葉。これは主に高給取りのサラリーマンをターゲットとして言われることが多いです。
ではこの場合は本当に節税になるのでしょうか?
税理士の視点から解説していきます。
節税になる仕組み
不動産投資で節税になるとはどういうことでしょうか?
個人の所得税の計算においては、所得区分が給与所得、不動産所得、事業所得、etc…といくつかにわかれています。
サラリーマンの給与は当然ながら給与所得、不動産投資を行えば、不動産所得が発生することになります。
所得税の計算においては、この給与所得と不動産所得を合算した金額に対して税率を掛けて所得税額を計算します。
ということは、不動産所得が赤字になれば、その赤字部分を給与所得と合算して、給与から天引きされている所得税の還付を受けられるのです。
極端なことを言えば、給与所得が2,000万の方がいて、不動産所得の赤字も2,000万あれば、毎月天引きされていた所得税が全額返ってくるのです。
ここで注意しなければいけないのは、「赤字」にならなければ節税にならないということです。
つまり、不動産投資で儲けてはいけないのです!
ただ、この赤字は税務上の赤字。
個人的には赤字には2種類あると思っています。
本当の赤字と見せかけの赤字
一つ目は本当の赤字です。
単純に家賃収入よりも経費が多いだけ。
損をしているのでその分税金は少なくなりますが、税金の還付を考慮しても、損をしてお金が少なくなったという事実は変わりません。
正直この状態ならば、不動産投資なんてやめてしまった方がいいです。
二つ目は見せかけの赤字です。
これは減価償却を使って行います。
例えば法定耐用年数(22年)越えの築古木造の物件を購入すると、建物部分は4年間で減価償却していきます。
この場合は建物比率にもよりますが、減価償却費が大きくなるので、不動産所得が赤字となる可能性があります。
そうなると給与から天引きされている所得税の還付を受けられます。
この減価償却は、キャッシュアウトを伴わない経費です。
つまり、税務上は赤字ですが、キャッシュフローはプラス、所得税の還付も受けられ、手元のお金は確実に増えているのです。
但し、今回紹介した築古木造は4年間で減価償却しますので、5年目以降は減価償却はゼロとなります。
今まで減価償却のおかげで赤字になっていたのですが、その減価償却がなくなるので今度は黒字となり、税金が発生しますのでご注意下さい。
本当の赤字に陥っている人が多い
あなたは何のために不動産投資をしていますか?
まさか損をするためという人はいないでしょう。
しかし、仕事柄お客様の確定申告書をよく見ますが、この本当の赤字に陥っている人が意外と多いです。
空室期間が偶然長引いたとか、大規模修繕があった等の理由ではありません。
突発的な事故もなく、空室もないのに赤字なのです。
本人にこのことを指摘してみても、節税になっているから得しているんでしょ?という答えが返ってきました。
所得が高い人は税金のことに目が行きがちですが、そもそも本当に儲かるのかどうか?を投資の第一基準とすべきです。
儲からない投資をして税金の還付を受けるということは本末転倒です。
節税になるからと不動産投資を勧められている方は、それが本当の赤字によるものなのか見せかけの赤字によるものなのかをよく確認して下さい。
その他不動産投資における節税にはいくつか落とし穴があります。
いずれコラムでご紹介させて頂きます。
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