こんにちは。税理士兼大家の鵜之沢巧です。
皆さん、債務償還年数という指標をご存知でしょうか?
特に法人化してプロパー融資を受けていく際には、非常に重要な指標となります。
債務償還年数とは?
ざっくり言うと現在のキャッシュフローで借入金を完済するまでにどのくらいの年数がかかるか?という指標です。
計算は以下のように求めます。
有利子負債/(経常利益+減価償却費)
※厳密には分子は(有利子負債-正常運転資金)となりますが、不動産投資の場合は正常運転資金はほぼ発生しないので省いています。
有利子負債とは読んで字のごとく利息が発生している負債です。
従って、通常利息を発生させないことが多い代表者や役員からの借入は、含めなくてよいということになります。
不動産投資の場合は、通常は銀行からの融資の残債の金額と思っておけば概ね間違いないと思います。
経常利益+減価償却費は簡易キャッシュフロー(借入の元金返済を除く)です。
減価償却費はキャッシュアウトのない経費ですので、これを経常利益に足し戻すことにより、今期の事業から生まれたキャッシュフローの金額を計算しています。
但し、通常のキャッシュフローの計算では、ここから更にキャッシュアウトはあるが費用とならない元金返済を差し引きますが、債務償還年数という指標上は元金返済は無視します。
実はこの債務償還年数は銀行によって計算式が若干異なります。
お付き合いのある銀行に聞いてみても、分子の部分を「有利子負債-現預金」としたり、分母の部分を「経常利益+減価償却費-法人税等」としたりと色々あります。
ただ、基本的な考え方は同じですので、ある一つの指標を決めて、今期よりも来期はもっと指標が良くなるように経営していくという姿勢が大事です。
一般的には10年以内が望ましいとされているようですが、不動産賃貸業は借入に依存する事業ですので、20年以内、できれば15年以内を目指したいところです。
債務償還年数の指標を良くするには?
ここでもう一度、債務償還年数の計算を見てみます。
有利子負債/(経常利益+減価償却費)
指標を良くするためには、
1)有利子負債を小さくする
2)経常利益+減価償却費を大きくする
のいずれかであることがご理解頂けると思います。
1)有利子負債を小さくする、という観点から言うと、繰上返済がまず思いつきます。
しかし、当然ながら繰上返済をすると手元のキャッシュは少なくなりますので、債務償還年数だけで考えると問題ないですが、その他の指標ではマイナスの影響がある恐れがあります。
その他、借入を元金均等返済で借りれば、元利均等よりは返済が早く進みます。
最初のうちは毎月の返済額は元利均等より多くなり、キャッシュフローは悪くなるのが難点です。
ただ、その分元金を返していることになり、時間が経つにつれその効果を実感できます。
2)経常利益+減価償却費を大きくする、の方が多くの対応の余地が考えられます。
単純に利益を出せばいい、と言えばそれまでなのですが、その利益の出し方によっても評価は変わってきます。
この話は長くなってしまうので、次回のコラムにしたいと思います。
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