こんにちは。税理士兼大家の鵜之沢巧です。

今回は個人で不動産を所有している場合の確定申告で、土地の借入利息についてです。

土地の借入利息は費用計上できない!?

ご存知の方も多いとは思いますが、不動産所得が赤字の場合、支払った借入利息のうち土地に係る部分は費用計上できません

厳密に言えば細かい計算はありますが、いくつかケース分けしてざっくり考えてみましょう。
前提として建物と土地の比率が50:50の物件を全額借入で購入し、不動産所得の赤字が100万とします。

 

ケース1:支払利息が80万の場合
支払利息のうち土地に係る金額
 80万×50%=40万
土地に係る利息控除後の不動産所得
 100万-40万=60万

不動産所得の赤字100万のうち、土地に係る利息は40万で、この金額は経費計上できないので、最終的な不動産所得の赤字は60万に圧縮されてしまいました。

つまり経費計上できない40万円分、税金の還付等が少なくなります

 

ケース2:支払利息が200万の場合
支払利息のうち土地に係る金額
 200万×50%=100万
土地に係る利息控除後の不動産所得
 100万-100万=0

今度は赤字と同じ金額の土地に係る利息がありましたので、最終的な不動産所得は0となりました。

 

ケース3:支払利息が300万の場合
支払利息のうち土地に係る金額
 300万×50%=150万
土地に係る利息控除後の不動産所得
 100万-100万=0

今度は不動産所得の赤字額以上の土地に係る利息がありました。
ただ、土地に係る利息が経費計上できないのは、不動産所得が赤字の時のみです

今回のケースでは土地に係る利息100万を控除した時点で、不動産所得は赤字を脱していますので、残りの50万は問題なく費用計上していいことになります。

投資初年度や減価償却による節税を考えている場合は要注意

投資初年度は初期費用があるのでどうしても赤字になりがちです。

また、ワンルームマンションを購入し、建物価格の一部を附属設備として減価償却を多く計上している場合や、築古木造を購入している場合も赤字となる可能性が高いでしょう。

支払利息を費用計上できないとなると非常にもったいないですし、キャッシュフローにも悪影響です。

私が今まで見た悪い例では、家賃収入の半分くらいの支払利息を払っているのに、支払利息の7割前後が経費計上できていないことがありました。

つまり1,000万の家賃収入があったとしたら、支払利息は500万、但しこのうち経費計上できない金額が350万あるということです。

高所得者のサラリーマンならば所得税・住民税合わせて約50%なので、350万×50%=175万の税金の還付が受けられなかったということになります。

不動産業者がシミュレーションを出してくれることがありますが、この点が考慮されていないことが多いので気を付けましょう
(実務的に考慮してシミュレーション作成するのは中々難しいということもありますが…)

私自身、今年に個人で購入した築古木造アパートでこの問題が発生しそうなので、どのように避けようか考えているところです。

なお、法人の場合は赤字だろうと黒字だろうと、土地に係る利息を問題なく経費計上できます。