こんにちは。税理士兼大家の鵜之沢巧です。

「融資のコツその2 節税対策と融資対策」では、融資のためには利益を出し、純資産を厚くするということをお伝え致しました。

でもそもそも物件を購入した際の初期費用や大規模修繕で赤字になりました、という方もいらっしゃるかと思います。
本日はそういった方向けのコラムです。

物件購入時の初期費用による赤字

初期費用が原因で赤字となっている場合は、決算書上でうまく主張した方がいいでしょう。

初期費用は、金額が大きいものでいうと、所有権移転等の登記の際の登録免許税、不動産取得税等が該当します。
(仲介手数料は会計上は不動産の取得価格に加えることになりますのでここでは省きます)

これらは通常は、決算書上で「租税公課」として表示します。
しかし、「租税公課」には毎年の固都税の支払いも含まれます。

初期費用は言うまでもなく、最初の1回のみ発生する費用です。
これを「租税公課」で処理してしまうと、毎年経常的に発生する金額と今年のみ突発的に発生した金額の区別が決算書からできなくなります。

そして、赤字が初期費用による赤字ではなく、経常的な赤字と判断されてしまうと、融資を受けるのは難しくなってしまいます。

私たちが主張すべきは、「今期は確かに赤字だけれども、これは初期費用が〇〇万あるからであり、この初期費用を抜いた実態の損益は〇〇万の黒字です。」ということになります。

不動産に対し多少でも理解のある銀行員ならば、租税公課のうち初期費用はどのくらいですか?と聞いてきてくれます。

または、決算書を提示した際に自分で説明するという方もいらっしゃるでしょう。

ただ、最初に明確に決算書上で示しておいた方がお互い楽ですし、銀行員側としても多少なりともやりやすくなるかと思います。

そのため、物件購入時の初期費用は租税公課とは別の勘定科目で、初期費用とわかるように表示した方がいいです

この場合の勘定科目ですが、科目の表示は基本的に自由に決めていいので、例えばシンプルに「登録免許税」や「不動産取得税」で表示してもいいです。
物件取得時の初期費用だということがわかればいいのです。

大規模修繕による赤字

こちらも基本的な考え方は同じで、今年は毎年発生しているものとは違う突発的な修繕が発生したということを決算書上でわかるようにすれば良いということになります。

科目は単純に「大規模修繕費」でもいいでしょう。
損益計算書に大規模修繕費があれば、銀行としてはその内容を聞いてくるでしょうから、そこで説明をし、赤字の内容を理解してもらうということになります。

もしくは、その大規模修繕の内容によっては、建物として資産計上し、減価償却をしていくという方法でもいいです。

これですと、減価償却による費用化ですので、大規模修繕を実施した年度に全額費用計上できません。
但し、建物の資産価値が向上したことを主張でき、納税額は発生してしまうかもしれませんが、純資産は増えますので、融資上は有利となる可能性があります。

その他、自然災害等の被害にあった場合は、保険会社からの保険金と共に営業外損益や特別損益に計上することで、毎年発生する費用ではないということを主張することも考えられます。

 

このように決算書上の表示を少し変えるだけで、見栄えが良くなり、銀行への説明がしやすくなります。