こんにちは。税理士兼大家の鵜之沢巧です。

昨日に引き続き債務償還年数についてです。

まずは昨日のおさらい

債務償還年数とは、現在のキャッシュフローで借入金を完済するまでに何年かかるか?という指標で以下の計算式で求めます。

債務償還年数=有利子負債/(経常利益+減価償却費)

この指標を良くするためには、

1)有利子負債を小さくする
2)経常利益+減価償却費を大きくする

1)有利子負債を小さくするための一番手っ取り早い方法は繰上返済をするということですが、そもそもあまりやりたがる人はいないでしょう。

2)経常利益+減価償却費を大きくするためのコツは減価償却費にあります。
減価償却費は費用ですので、計上すると当然ながら経常利益は少なくなります

但し、債務償還年数の指標上は、減価償却費を足し戻して計算しますので、減価償却費が増える分には問題がないです。

費用でも資産でもどちらでもいい

以外に思うかもしれませんが、会計・税務の世界では費用でも資産でもどちらでも処理ができるという項目がいくつかあります。

例えば不動産投資では大規模修繕がこれにあたります。

大規模修繕が費用となるか資産となるかは、税法により定められており、一定の要件を満たせば修繕費として費用計上「できる」、とされています。
(中には明確に修繕費としての処理が定められているものもあります)

これは「できる」、ということなので、費用計上しても資産計上してもどちらでもいいということです。

資産計上した場合は、その後の減価償却により定められた耐用年数にわたって費用となります。

修繕費として処理すれば、債務償還年数上はマイナスの影響となりますが、資産計上して減価償却費で処理すれば、債務償還年数に影響を与えません。

 

例えば、以下を前提とします。

・有利子負債(総借入) 1億
・経常利益      150万
・減価償却費     350万

このまま債務償還年数を計算すると…
1億/(150万+350万)=20年

 

一方で経常利益は大規模修繕費用300万を費用計上した後の金額だったとします。

これを資産計上してみると、今まで費用計上していた300万がなくなり、経常利益が150万+300万=450万となります。

計算すると…
1億/(450万+350万)=12.5年

債務償還年数が7.5年も短くなりました。

 

これどういうことだかわかりますか?
この会社の借入限度額が債務償還年数で20年だとすると、前者はもう借入はできないということになります。

一方で後者はあと7.5年分の借入余力があることになります。

この計算式で7.5年分というと…
(経常利益+減価償却費)×7.5年=(450万+350万)×7.5年=6,000万
の余力があることになります。

もちろん実際には他の指標等も考慮しながら借入の審査を進めていくことになりますので、この通りにうまくはいかないでしょう。

ただ、このように一つ一つの指標をクリアすることによって、より多くの借入ができるようになるということも事実です。

なお、この方法の難点として納税額は増えてしまうので注意して下さい。

とはいえ、今期の納税額は増えてしまいますが、来期以降も減価償却により費用計上できますので、来期以降の納税額は減らす効果があります。
(トータルで計上できる費用の金額に変わりはありません)

 

大規模修繕はあくまで一例で、その他にも費用でも資産でもどちらでも処理できる項目はあります。

こういった項目をコントロールすることにより、優良な決算書を作成し、融資をより良い条件でより多く引き出せるようにしましょう。