こんにちは。税理士兼大家の鵜之沢巧です。
自己資本比率について今回で最後となります。
すぐにできる自己資本比率の改善
法人の場合は役員から借入があるケースが多いと思います。
実は貸借対照表上でこの役員からの借入金の表示を変えるだけで、 自己資本比率が改善する可能性があります。
なぜならば、役員借入金は自己資本に含めて考えてくれる金融機関がいくつかあるためです。
金融検査マニュアルの中小企業融資編においても、役員借入金を自己資本とみなしてOKという旨の文言があります。
であるならば、しっかりと決算書において役員借入金があることを明記しておいた方がいいです。
表示を変えただけで自己資本比率が倍に
役員からの借入金が500万ある前提で、ケース分けして考えてみます。
【ケース1】
500万を短期借入金として表示している場合
この場合の自己資本比率は…
純資産÷(負債+純資産)×100=500万÷(1億+500万)×100=4.76%
【ケース2】
500万を役員借入金として表示している場合
役員借入金を自己資本とみなすと、純資産は1,000万、負債の金額は9,500万となります。
この場合の自己資本比率は…
純資産÷(負債+純資産)×100=1,000万÷(9,500+1,000万)×100=9.52%
自己資本比率が倍になりました。
このように科目表示を少し変えてわかりやすくするだけで、自己資本比率が改善します。
さらに今回は流動負債から固定負債に振替をすることにより、流動比率(流動資産と流動負債の比率、短期的な支払い能力を示す)も改善しています。
銀行の担当者の立場からすると…
優秀な銀行員ならば、短期借入金の内容を精査して、役員からの借入金を自発的に自己資本とみなしてくれる可能性があります。
しかし、世の中優秀な人ばかりではないですし、機械的に判断されてしまうというケースも多いように感じます。
また、銀行員もノルマがあるでしょうから、ぱっと見で融資不可な決算書に対して、時間をかけて分析などしないでしょう。
仮に優秀な銀行員が担当してくれたとして、優秀な人は忙しいので、最初からわかりやすい資料を提出した方がいいという意味合いもあります。
そしてわかりやすい資料を提出してくれる人の案件は、前向きに取り組んでくれる可能性が高くなるでしょう。
なお、役員借入金の明確な返済計画を定めており、その計画に基づき返済をしている場合や、金利を設定している場合は自己資本とみなしてもらえないこともありますのでご注意下さい。
最後に通常の税理士は、税金の計算をするのが仕事だと思っているので、ここまで配慮して決算書を作成しているというケースは少ないです。
一度自分の会社の決算書で役員からの借入金はどのように表示されているかをチェックしてみるといいと思います。
本日も最後までお読み頂きありがとうございました!
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