最近建築現場に居ると以前の現場とは違う違和感を覚えます。

違和感という表現が適切であるのかわかりませんが、

確実に現場で働く作業員(職人)の年齢が高齢化しています。

高齢者の職人は非常に経験値が高く、良い仕事をする人も大勢居ます。

しかし、建築現場という環境は危険性が高い職場であり、

過酷な環境でもあります。

 

建築現場には労働安全衛生法という法律が適用されます。

この法律は元来労働基準法の一部であったものを独立させたものです。

ここでは高齢者という言葉を使うことがありますが、

高齢者の定義が一般的ではないのです。

一般的には高齢者というと65歳以上をイメージするのではないでしょうか。

しかし労働安全衛生法では55歳以上を高齢者と定義しています。

55歳で高齢者扱いをされてしまうと実際には建築現場は成り立ちません。

 

なにも、高齢者だからと言って、

建築現場で働いてはいけないと言っている訳ではありません。

しかし、一部の大手ゼネコンでは55歳以上は高所作業をしてはいけないとか、

指示者なら良いが、作業はしてはいけないなどというところもあるのです。

ここまで制限されてしまうと本当に現場は人手不足となるのです。

 

前置きが長くなりましたが、

現場における職人の高齢化は不動産投資においてどのような影響があるのか。

一番懸念されることは建築費の高騰です。

現在でも首都圏の建築費は異常な価格となっています。

これは東京オリンピックや東日本大震災復興の影響もあるのですが、

建築熟練職人の高齢化も影響しています。

 

熟練職人は仕事が速いのですが、無理はできません。

長時間休憩なしというわけには行きませんし、

休暇も多めに取らなければ体がもちません。

そして建築現場は基本的に空調がありません。

夏の酷暑、冬の厳寒環境では若者の様な体力はありませんので、

どうしても仕事のペースは低くなるのが当たり前です。

 

これから先まだまだ高齢化は進んでいきます。

そして徐々に団塊世代と呼ばれる年代の引退が進みます。

結果、建築職人の減少につながり、建築価格は更に上がるのかもしれません。

通説では東京オリンピック時が建築価格のピークであり、

オリンピック後は建築価格も落ち着くとの見解が多いですが、

私は建築価格が上がることはあっても、

下がるのは難しいのではないかと思います。

なぜならば高齢者は引退し、若者の建築業者は少ないからです。

この辺はあらためて触れてみたいと思っています。

 

戸田 匠