ようやく今年(昨年度分)の確定申告が終わりました。

去年は所有している区分マンションにて立て続けに退去が発生したため、ある程度想定はしていたもののやはり不動産収益がかなり落ち込んでしまいました。

入居率を信用することの危険性

物件を購入する際、販売会社や賃貸管理会社は物件のポテンシャルを強調するために平均入居率をアピールします。

それは確かに一つの大切な指数ではありますが、ここには大きな落とし穴があります。

シンプルな数字を使い少し具体的に計算してみたいと思います。

ちなみに実際には以下の数字の他に月々の修繕積立費や仲介手数料などが必要になりますが、計算を分かりやすくするために今回は省略します。

仮に一ヶ月辺りの賃料が10万円で年間の想定収入が120万円(10万円✕12ヶ月分)の区分マンションがあった場合、平均入居率が95%であれば、114万円程の家賃収入が得られる計算になりますが、現実的にはそうではありません。

95%の空室率と聞くとほぼ満室経営でありかなり驚異的な印象を持つかもしれませんが、単純計算でも2年間で1ヶ月程は空室が出る計算になります。

仮に去年一年間で1ヶ月の空率が発生した場合は以下のような家賃収入になります。

・年間家賃収入=月々の家賃✕入居月数

具体的な数字で計算すると年間家賃収入はこのようになります。

・10万円✕11ヶ月分=110万円

ですが実際に手元に残るお金は空室が出ると以下のようなお金が掛かります。

・退去後の部屋の修繕費用
・入居者獲得のための仲介手数料

修繕費用は大体一ヶ月辺りの賃料と同じと考えると10万円です。

仲介手数料は時期やその他の諸事情により変動しますが平均すると家賃の2ヶ月程になります。実際には仲介会社に支払う仲介手数料が2ヶ月分だったとしても入居者から一ヶ月分の礼金を頂きその資金と相殺することでおよそ1ヶ月分と考えることができます。
※今度も同様に礼金を得られとは限りません。

これらを踏まえて上記の計算を行うと以下のような収益になります。

・年間家賃収益=月々の家賃✕入居月数ー修繕費用ー仲介手数料

具体的な数字で計算すると年間家賃収益このようになります。

・10万円✕11ヶ月分ー10万円ー10万円=90万円

家賃収入では110万円の収入が期待できますが、年間の家賃収益として考えると90万円になってしまいます。

90万円ということは9ヶ月分の家賃収益になってしまいました。

不動産の経営には修繕費用や仲介手数料などさまざまな経費が必要になることは
ある程度認識されている方が多いと思いますが、実際に計算してみるとその金額は想像以上だと思います。

入居率と収益性の関連性はほとんど無い

平均入居率が高いと何となく収益性が高いような気がしますが、そんなことはありません。

入居率・空室率には3種類の考え方がある

 

それは入居率と言う言葉の定義によって変わります。

実は空室率を表す指数には主に以下の3つがあります。

1.瞬間空室率
2.稼働平均空室率
3.収入室率

 

瞬間空室率

 

瞬間空室率とはあるタイミングでの空室の数によって算出される空室率です。

仮にあるタイミング(例えば4月1日)で1棟20部屋の物件のうち、一室だけが空室だったとします。

瞬間空室率を利用した入居率は95%になります。

・空室率(5%)=空室部屋数(1部屋)÷総戸数(20部屋)
・入居率(95%)=100%ー空室率(5%)

 

稼働平均空室率

 

稼働平均空室率は1年間の空室率です。

先程の計算結果のように1年間(365日)のうち一ヶ月(31日間)空室が発生した場合は以下のような計算になります。

※少数第一位を四捨五入しています。

・空室率(8.5%)=空室期間(31日)÷365日
・入居率(91.5%)=100%ー空室率(8.5%)

 

収入空室率

 

収入空室率とは年間の実際の家賃収入をもとに年間の空室率を算出する方法です。

先程の計算のように想定される年間総収入が120万円(10万円✕12ヶ月分)で実際の収入が110万円(10万円✕11ヶ月分)の場合は以下のような計算になります。

※少数第一位を四捨五入しています。

・空室率(8.3%)=未収入賃料(10万円)÷想定年間総収入(120万)
・入居率(91.7%)=100%ー空室率(8.3%)

 

平均入居率による物件評価には限界がある

 

これらの計算方法のうち販売会社がアピールする平均入居率には一般的に最も入居率が高くなる傾向のある瞬間空室率が採用されています。勿論、年間を通して最も入居率が高い時期の瞬間的な情報です。仮に繁忙期直後の4月頃では比較的高い入居率が期待できますが、ある程度退去者が出てしまった時期に計算すると一気に入居率は小さくなります。

稼働平均空室率や収入空室率を採用することでかなり精度の高い物件評価を行えますが、それでも以外な落とし穴があったりします。

実は去年の僕のケースがそうだったのですが、仮にある部屋の入居者が3月31日付けで退去したとします。ただしそれは契約上3月31日まで入居していて、実際には3月10日頃に退去されました。

一般的に3月末に退去予定の場合、不動産仲介会社および物件所有者の家主には2月中に退去の連絡が入るため、不動産仲介会社としては(家主の依頼のもと)すぐに次の入居希望者を探し始めます。

その結果、幸運にも3月20日からの入居希望者と契約を結ぶことになりました。退去後の修繕工事も急ピッチで対応頂き、無事予定通りに入居頂くことができてタイミング的にもとても恵まれていたケースです。

その結果、今まで住んでいて下さった入居者の退去日と新しく住んでくださる入居者の入居日は以下のようになります。

・現入居者の退去日:3月31日
・新入居者の入居日:3月20日

つまり契約の上では空室は1日も発生しておらず、むしろ重複契約(家賃の二重取り)により総収入の面ではプラスになります。

結果的に稼働平均空室率や収入空室率から入居率を算出すると100%を超える訳です。

ただしこれでもやはり以下の費用は必要になります。当然のことです。

・退去後の部屋の修繕費用
・入居者獲得のための仲介手数料

その結果、入居率や総収入金額は100%(以上)なのにも関わらず各種経費を含めた年間収益は想定よりも減少してしまうことになってしまいました。

平均入居率よりも平均入居期間を意識する

そう考えると、比較的空室率が低いと言われる小規模なワンルームマンションの場合、収益に影響を与えるのは空室期間に家賃を得られない損失分(未収入賃料)では無く、一度空室(退去)が発生するごとに必要となる部屋の修繕費用と入居者付けをするための仲介手数料です。

言い換えると空室期間では無く空室が発生してしまった回数の多さが賃貸収益を圧迫します。

一人暮らしの学生や若い社会人のをターゲットとする都心のワンルームマンションでは平均入居期間が短い傾向にある上に、またそのインパクトもかなり大きいです。

※勿論、空室期間が長期化すると話は変わります。

今回のケースはやや例外的なケースではありますが、ここから学べることは入居率が高いからと言って退去の回数が必ずしも低くなるとは限らないということです。

仮に平均入居率(稼働平均空室率や収入空室率)が高い水準でも何度も退去が続いてしまうと収益はどんどん無くなってしまいます。

平均入居期間を物件のポテンシャルの一つとして重要視し過ぎるのは日々自分の力で入居期間を伸ばす努力をされている自主管理の家主からしたら他力本願な印象を持たれるかもしれません。

ですが、やはり賃貸管理を仲介会社にお任せしている兼業家主からしたらかなり大きなポイントになります。

勿論、物件選びの基準には書類上の数字だけでの評価はできません。

実際に物件を視察したり契約書などだけでは分からないさまざまな事柄を考慮する必要があります。

ただ空室率や利回りのような表面上の数値を見る上でも平均入居期間の長さはある程度考慮し判断したいと思いました。