―まずは妻の理解と協力を得るために―

 サラリーマンが不動産投資(事業)を始めるうえで、配偶者(妻)の理解と協力が必須であることは言うまでもありません。配偶者(妻)には大きな借金の連帯保証人になってもらわなければならないからです。

 私の場合、妻の反対はありませんでしたが、賛成もしてくれませんでした。このことは意外に大きな問題です。

 1年余りの勉強期間を経て、2011年、55歳の私は中古アパートに的を絞り、いよいよ具体的な購入物件探しを始めようと妻に打ち明けました。そのとき、妻の答えは次のようなものでした。

「よくわからないけど、子育ても一段落したし、お父さんがアパート経営したいのならいいよ。」

 それまで私が不動産投資に関する本や雑誌を読み漁り、各種セミナーや果ては通信教育まで受けていたことなどを薄々知っていたはずの妻は、真面目で気が小さく、慎重なうえにも慎重な私が意を決してそう言うのならたぶん間違いはないのだろうと思い、賛成してくれたのでしょうか。

 いいえ、どうやらそういうことでもないようでした。話を交わすうちに、不動産投資はおろか連帯保証人の意味もよく分かっていない様子で、よくよく質すと、妻はただ黙認しただけなのでした。あなたがしたいのならどうぞご自由に。連帯保証人にはなっても、私は何もわからないし、何もできませんから、と。

 専業主婦たる妻の感覚では、夫婦だから財布も一緒、ずっと以前からお互いに連帯保証人のようなものだったわけで、いまさら連帯保証人にといわれても何のことだかわからない。先の返答は、とにかくめんどうなことには関わりたくない、という意味合いでした。

 これはまずい。反対されるよりやっかいかもしれません。もし万一失敗したら、妻は何もわからないまま、関わりたくもなかったのに、夫とともに莫大な借金の責めを負うことになってしまうのです。

 ―不動産投資は何のため?―

 こうした妻の態度に、私は一体何のために不動産投資をしたいのだろう、とあらためて考えさせられました。資産形成年金の足しに、と思って始めようとしたことには間違いありません。資産形成とはいずれ妻や子供たちにもなにがしかの財産というものを残してあげたいから。

 でも、果たして、それだけでしょうか?私の場合、どうもそれだけではないようです。地方公務員として30余年、真面目に勤め上げてきたつもりですが、何か満たされないものがありました。それなりに本業で頑張ってきたつもりではありましたが、私にはもっと違う世界で自己実現を図りたい、大げさに言えば、そういう気持ちがあるのも事実でした。わがままといえばわがままな話です。おそらく妻は、そういう野心を敏感に察知したのだと思います。私自身も気づかなかったのですが、なにか冒険をしてみたい、そんな子供じみた夢を密かに描いていたのかもしれません。

 何とかして妻の理解と協力を得なければ、私自身も危ない投資家になってしまうかもしれない。

 ―楽しくなければ意味がない―

 反省した私は、実際に物件探しをする中でなるべく妻と一緒に行動することを思い立ちました。インターネットや情報誌、新聞などからめぼしい物件を選ぶ仕事は私がやるとして、実際に物件を見て回るときには必ず妻にも同行してもらうことにする。そうすることで妻の理解も徐々に深まり、やがて積極的に協力してもらえるようになるだろうと考えたわけです。

 ただし、不動産投資になんの興味も関心もない妻に中古アパートを見に行こうといっても、ついて来るはずがありません。何とかして妻にも楽しんでもらおう、いやできれば夫婦そろって楽しくやれる方法はないものか。そこで一計を案じました。

 大抵の中年女性は温泉、グルメが好きです。ご多分に漏れず、妻も食べ歩きと立ち寄り湯、スーパー銭湯が大好きときており、私もそれにサウナが付いていれば大満足です。こうして物件探索は温泉巡りと食べ歩きがセットになりました。

 この3点セットは今でも私達夫婦の定番となっていますが、おかげで妻の物件を見る目が肥えてきたことは間違いありません。もっとも、お腹回りもずいぶん肥えましたが。