<はじめに>

 ミニ隠居です、私のコラムをお開きいただき、誠にありがとうございます。

 今回は、管理会社や家賃保証会社などが発表する「空室率」について、問題提起したいと思います。

 今回は、私にとって珍しく、かなり挑発的なコラムですが、あくまでも私個人の裏付け取材のない見解です。反論もあるはずですので、むしろ是非ともコメントいただけたらと、思います。

<空室率の何が問題?>

 私は、「不動産投資の理想は、スタートする前からリスクの大部分を予測できる状態。」と信じています。予測を困難にしている原因のうち、大きな1つが空室率の怪しさと思っています。

 総務省が5年毎に行う国勢調査では、日本の空家はもとより貸家(アパート、貸マンションなど含む)の空き状況(空室)が公開されます。これは極めて信頼度の高いデータです。最近のデータは2015年度の調査であり、空家は日本全体で20%くらい、アパートなどの空室は、少し多くて30%くらいです。

 ところが、賃貸の管理会社や、サブリース会社、大手の住宅建築会社などの管理物件の空室率は、どこも横並びに10%未満です。

「当社は入居付けが弱くて、恥ずかしながら空室10%超・・・」

なんて会社は見たことがありません。ここに問題がありそうです。

 この総務省データとのミスマッチは、どこから来るのでしょうか?

<ある不動産情報会社の場合>

 あるグローバル企業は、系列に不動産情報会社(T社とします。)を持っています。T社は、珍しいことに、また鋭いことに、このミスマッチに気づき、独自の分析レポートを発表しています。NETで公開されており、誰でも見れます。レポートは、首都圏を対象としており、空室率のミスマッチの理由を

「管理会社やサブリース会社の管理しないような、無管理物件(廃墟物件みたいなイメージ)が首都圏に多数、存在するため。」

としています。T社の良心と勇気は、称えるべきでしょう。T社の顧客である不動産会社や建築会社などにとって都合の悪い分析、「好調に見える首都圏でも新築注意」とも読めるレポートですから。

 しかし、世界最大の都市であり、人口増加中の都市でもあり、日本で最も賃貸経営が順調とも言われる首都圏で、20%超の廃墟物件が存在するのでしょうか?5軒に1軒以上が廃墟? ・・・私の見解は、ちょっと違います。

<私の見解は?>

 総務省のデータ(空室は首都圏でも30%超)も正しく、管理会社やサブリース会社などのデータ(空室率5%程度)も正しいとすれば、なるほど廃墟物件が20%くらいは存在する以外、説明がつきません。

 しかし、私の見解はこうです。

総務省のデータと、管理会社などのデータは、そもそも基準が違う。」

どうゆうことでしょう?

<基準が違うとは?>

 総務省のデータでは、部屋に住人が居ない状態(別荘やセカンドハウスなど除く)を問答無用で空室とします。しかし、管理会社などのデータは、各社の独自基準で、空室とカウントします。空室率を小さくするテクニックを駆使します。例えば・・

・空室となってリフォーム中は、空室とカウントしない。(ひどい場合は、「入居者様のリクエストで壁紙を選ぶ。」ため、入居直前までリフォーム待ちノーカウントとするかも。)

・空室となって1ヶ月間や、入居申込があって引っ越すまではカウントしない。フリーレントで家賃が発生しない期間も、空室とカウントしない。

・新築物件の場合、最初の入居までを準備期間として、空室としない。

・家賃保証で支払い家賃8.3万(年間100万)の部屋があり、実際の家賃が月10万で10ヶ月だけ入居した場合(つまり収入100万)を、空室0とする。有利になる金額基準。

・成績の良いある支社の空室率を、広い地域全体の空室率とする。

・1年で最も空室の少ない日のデータを空室とする。

・そもそも詳細データをとらず、裁量的な空室率を発表する。(あるかも?)

 空室とカウントすべき共通の基準が無いから、自由なんですね。

 なお、空室をカウントする自社基準を明確にしている会社もありますが、善良かつ、実力のある会社と言えましょう。こういう会社を選びたいですね。

<ならば実際の空室率は・・・これは、想像ですが。>

 私は首都圏であっても多少の廃墟物件があり、それらを除いた首都圏の空室率は、10~15%ではないかと思います。首都圏の好立地なアパートを見て回ると、不動産会社の募集看板が全く無いことに驚きます。うらやましい事に、すぐに入居が決まるから不要なんですね。さて、募集をシュミレーションします・・

 独身入居者の多い首都圏、平均の入居期間は3年前後でしょうか?ここでは、入居期間27ヶ月毎に入替わるとします。退去から1ヶ月でリフォームし、それから募集して1ヶ月で入居申込が入り、翌1ヶ月で引越・入居のパターンで、空室率3ヶ月、10%(3ヶ月÷30ヶ月=10%)になります。私は好調な首都圏では、実質の募集期間が1~3ヶ月程度で申込が入る状況と想像します。体感的には満室経営継続ではないでしょうか?

 今のままでも首都圏は、問題ありません。しかし、地方はそうはいきません。本当は30%超える空室がある地区の営業トークが、以下になるかもしれません。これが、この会社の本当の空室率ならいいのですが・・・。

「我社の建てたアパートの実績は、この空室アパートの多い地区でも、空室率は、2%です。ご提示の(採算ギリギリの)予算で建築しても大丈夫ですよ-。」 

<各々の会社の空室率が実態より少ない表示であれば?>

 例えば、銀行の融資の可否判断が変わってしまいます。本来なら買えない物件が、買えてしまうかもしれません。市場が悪化して新築すべきでない地区に、空室だらけのアパートが新築され続けるかもしれません。購入すべきでない物件を、買ってしまうかもしれません。そして収益が悪化して、サブリースの条件が引下げられ、大家さんが破綻するかも知れません。

 各々の会社が管理する空室率を、比較可能な状態にする事は、日本の賃貸市場を健全にするためにも、空家問題を解決するためにも、銀行の不適切融資を制御するためのも、・・・あらゆるためにも極めて重要です。総務省でも国土交通省でも財務省でもいいです。空室を定義する明確な基準を定めて下さい。

・・・・・できたら違反表示の場合の罰則付きで。できたら国会で法律として。

当社の空室率:75.3%(法規定)但し98.6%(参考自社基準)とかね。

<追記>

 よく稼働率98%なんて管理会社の広告をよく見ます。退去してリフォームに2週間かかって、1週間で申し込みが入って、2週間後には新規入居なんて理想的なパターンを全ての管理物件で実現して、(かつ49ヶ月毎の入れ替わりで)やっと98%※です。あるカリスマ大家の物件だけのデータならばありえますが、フツーの大家さんの物件を数千戸も管理している会社でこれは・・・算定が(総務省方式の単純計算とは)違うと考えるべきでは?

 そもそもアパートの場合、地域の空室率10%くらいはあってくれないと、入居希望者の探す物件が枯渇状態的になり、市場が困ってしまうそうです。

 市場にとって最適な状態は、決して満室だらけの状態ではありません。

<ところで>

 ・・・・最近の私は、

「募集物件を市場に出し続ける事で、入居希望者のお役に立ってる。」

と満室でない言い訳をして自分を慰めています。・・・これはイケませんね。