私は20年近く経営コンサルタントや投資ファンドで会社員を続けた後に独立し、コンサルタントをしながら、事業承継問題を抱えた小規模企業を複数社買収し、運営しております。

 会社員生活において所得は少し多いほどでしたが転職回数も多く、10人にも満たないできたばかりの会社にいた時期もあれば、リーマンショックでの株式投資の大損のおかげで貯金はほとんどなかったので、ローンの審査は厳しいものでした。

 独立を考え始めた頃に色々と模索して出した結論は、日々の生活費を不動産収入でまかなって、そのうえに本業による収入を上乗せする形にしようといったことでした。

 

生活の安定とはほど遠いが、満足のいく不動産投資

 

 結果から言ってしまえば、そう考えて以降に取得した不動産については、収入から返済を引いたキャッシュインはピーク時で月30万円、いまは月10万円ほどですので全然目的は達成していません。それでも、色々な(変わった…)人や物件との出会いを通じ、「本業に(精神的にも金銭的にも)集中するのが最も効率が良い」「不動産収入は少額でも、自分がやりたいと思った仕事に集中できて、収入がゼロにはならない安心感はそれなりにある」という結論に至ったうえでのことですので、笑い話にはすれど、後悔はありません。

 私はビジネス系のメディアで連載をしていますが、この連載ではズブの素人から始めた不動産取引を通じて出会った人や物件とのエピソードや失敗談など、恥ずかしい部分も含めて紹介したいと思います。かつての私のように不動産収入をベースにして会社員を辞めようかなあ……と漠然と思っている会社員の参考材料になれればと思います。

無知と焦りで大失敗した最初の不動産取引

 

 最初の不動産取引は、不動産投資を始める10年以上前の、リーマンショックの前でした。相続していたワンルームの区分マンション1部屋の売却です。

 当時は転職したばかりで仕事も忙しく結婚することが決まったばかりで慌ただしかったのにも関わらず、なぜか初めて管理組合の総会に参加しました。家庭を持つこともあるし、世間を知ろうと思い立ったと記憶しています。

 当時は不動産は投資として買うものという概念もあまりなく、行ってみてびっくりしました。まさに欲望の塊といった顔をしたおじ様が管理組合を牛耳り、大声でまくしたてる外国人女性同士で口喧嘩したり、90歳というおじいさんが耳が聞こえないと言って大声で脈絡のないことを言ったりと、魑魅魍魎といった空気が蔓延していました。そこに普通のサラリーマンのような新顔が現れたものですから、お前が理事長になれと迫られました……「あ、ごめんなさい。私世間知らずなんで、相続したばかり(実際は5年以上)なので…」と適当にふにゃふにゃ言って逃げて帰ってきました。

 「あの仲間(?)になってはいけない」と次の週末にさっそく地場の不動産屋に駆け込みました。「そこの**というマンションの1部屋ですが、売りたいです」と。

 すると、「あ、ごめんなさい。扱えません」と二つ返事で言われてしまいました。

 

怖そうな人たちだけでなく、ホントの怖い人たちの登場で冷静さを失う

 

 「え??」と困惑していると、「知らないんですか? 2か月前に発砲殺人あったじゃないですか。別の部屋でしょうけど。だからうちでは扱えないんです」と言い放たれてしまいました。もう、当時20代の私はパニックです。「会社の仕事が忙しいんだから、こんなことに振り回されてはいけないんだ」と、勝手に追い込まれてしまいました。

 不動産屋を出たその足で、そのまま大手不動産仲介会社に駆け込みます。そこでは物件概要を伝えただけで、「あ、たぶんいけますよ」という返事でした。「え? 同じマンションの他の部屋ですが、殺人があったんですよ?」と素直に言うと、「構いません」という返事です。「ありがとうとございます!」と即答し、翌日にはもう売却を決めていました。

 今思えば、それは売れますよね。築古とはいえターミナル駅から徒歩5分、月6万円の家賃で空室になったことがほとんどない物件で、売却価格は400万円でしたので。(ちなみに父親がバブル期に買った時は2700万円…)

 不思議なものでコンサルタントや経営者としていつも他人には偉そうにあれやこれやと事実をベースに冷静に議論していながら、自分自身については衝撃的な光景や情報に刺激され、感情的に動きまくってしまったものでした。自分で買った物件ではなかったということもあったのでしょう。魑魅魍魎と関わってはいけないという思いがあったものの、特に毎日接するわけでもないのに。

 若気の至りとして反省材料にしています。